毒盛られたロシア野党指導者が退院 「完全な回復可能」と医師

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ナワリヌイ氏はシャリテ病院で撮影した写真を公開した。やせ細って見えるが、自力で立っている
毒物による重篤症状が出て治療を受けていたロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が22日、入院先のドイツ・ベルリンの病院を退院した。病院が23日に明らかにした。
ベルリンのシャリテ病院は23日、ナワリヌイ氏の容体が十分回復したため、急性期医療を終了したと発表した。
ナワリヌイ氏は自力で立つ自身の写真をソーシャルメディアに投稿。医師たちが完全に回復できるチャンスを与えてくれたと書いた。
ナワリヌイ氏の広報担当者は23日、「治療がまだ終わっていないので」同氏はドイツにとどまると述べた。そして、「それでも医師たちは完全に回復できると考えている」と付け加えた。
同氏の支持者らは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の指示で毒が盛られたと主張している。一方、ロシア政府は関与を否定している。
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ナワリヌイ氏は8月20日、ロシア・シベリア地方を飛び立った旅客機内で体調が悪化。その後の検査で、神経剤ノビチョクが使われたとの結果が出ている。
当初はロシアの病院に運び込まれたが、ドイツのシャリテ病院に移送された。
「完全に回復できる」
シャリテ病院の声明によると、ナワリヌイ氏は24日間の集中治療を含む32日間を同病院で過ごした。
「患者(ナワリヌイ氏)の経過や現在の容体を踏まえ、治療を担当する医師たちは完全な回復が可能だと考えている。しかし、重度の中毒による長期的な影響の可能性について、判断するには時期尚早だ」
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ナワリヌイ氏がインスタグラムに投稿した画像
退院後間もなく、ナワリヌイ氏は自身のインスタグラムにリハビリ計画についてつづった。
「さらなる回復には入院治療ではなく、普通の生活が必要だ」、「歩いたり、家族と一緒に過ごしたり。日常生活に没頭することが」とナワリヌイ氏は書いた。
「私の計画はシンプルだ。毎日、理学療法士のもとへ通うことだ」
「リハビリ施設に行くこともあるかもしれない。片足で立ったり、再び完全に指を動かしたりできるように。身体のバランスを維持しなければならない」
ナワリヌイ氏は、治療をしてくれたシャリテ病院の医師たちに感謝を表明した。
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シャリテ病院で撮影されたナワリヌイ氏と妻ユリア氏の写真
ナワリヌイ氏は22日にインスタグラムで、自分で毒を盛ったとする説を一蹴した。これは、プーチン大統領が言い出したとされる。
仏紙ル・モンドはエマニュエル・マクロン仏大統領とプーチン氏の14日の電話会談の内容を報じた。それによると、プーチン氏は「アレクセイ・ナワリヌイについて軽蔑を込め、過去に病気を自演したことのある、インターネット上のトラブルメーカーにすぎない」と述べたという。
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昏睡(こんすい)状態となったナワリヌイ氏は8月22日朝、ロシア・オムスクの空港からドイツへ移送された。写真はベルリンのシャリテ病院に到着した時のもの
同病院は14日、ナワリヌイ氏が人工呼吸器を外しベッドから起き上がれるようになるまでに回復しつつあると明かした。
ドイツ政府は当時、ナワリヌイ氏にノビチョクが使われたとする同国の検査結果について、フランスとスウェーデンの研究機関もその正しさを認めたと発表した。
一方、ロシア政府はナワリヌイ氏の体内から毒物の痕跡は見つからなかったと主張している。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は23日に声明で、ナワリヌイ氏はモスクワに「いつでも」、「自由に」戻ることができると述べた。また、同氏の「1日も早い回復」を願うとした。
ホテルの部屋にノビチョク
ナワリヌイ氏は先月20日、ロシア国内を旅客機で移動中に体調を崩した。同氏の支持者らは当初、出発地トムスク空港のカフェで飲んだお茶に何かが混ぜられていた可能性を指摘していた。
しかし今月18日になって、事件前に宿泊していたホテルの客室から神経剤の入ったペットボトルが見つかったと発表した。
その後の検査で神経剤ノビチョクが検出されると、欧州連合(EU)はロシア政府による「透明性のある」調査を求めた。EUは声明で、「責任を負う者に裁きを受けさせなければならない」と主張した。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は毒物の使用は「とんでもないこと」だと非難した。