米共和党に亀裂、脅迫受ける議員も トランプ氏弾劾訴追で

Nancy Pelosi

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ドナルド・トランプ大統領の弾劾訴追の可決を宣言する野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長(13日)

米議会下院の与党・共和党に深い亀裂が生じている。ドナルド・トランプ米大統領の弾劾訴追をめぐり、同党議員10人が13日、野党・民主党が出した訴追決議案に賛成したことで、党内に波紋が広がっている。

トランプ氏に不利な投票をした下院議員らは、脅迫を受けており、警備を強化したと話している。

賛成票を投じた1人、下院共和党ナンバー3のリズ・チェイニー議員(ワイオミング州)は、党の指導的地位から即刻降りるよう、トランプ氏を支持する保守派議員らから求められているという。同議員は、共和党のジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の娘。

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チェイニー氏は13日、「私はどこにも行かない。これは良心に基づく投票だ」と記者団に述べた。

「さまざまな意見がある。しかし、私たちの国は南北戦争以降で前例のない、憲法の危機に直面している」

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議会下院で民主党の同僚議員と話すチェイニー下院議員(右、13日)

ピーター・マイヤー議員(ミシガン州)は14日、弾劾訴追に賛成した彼と数人の同僚議員らが防弾ベストを購入したと、米MSNBCの番組で説明。暴力的な脅迫を受けており、日常生活の通常の動きを変更せざるを得ない状況に置かれていると述べた。

そのうえで、「こうした状況に至ったのは残念だが、誰かが私たちを殺そうとしていると考えられる」、「分断と憎悪がかつてない水準に達している前例のない状況では、すべての可能性を考慮しなければならない」と話した。

連邦捜査局(FBI)は、ジョー・バイデン氏の大統領就任式が開かれる20日にかけ、全50州の州都と首都ワシントンで武装デモが開かれる可能性があると警告している。

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トランプ氏、2度弾劾される初の米大統領に 下院可決の瞬間

決議案の投票では

下院は13日、トランプ氏が連邦議会議事堂の襲撃事件で反乱を扇動したとして、同氏の弾劾訴追を求める決議案について採決。賛成232票、反対197票で可決した。下院は野党・民主党が多数派となっている。

トランプ氏は2度にわたって弾劾訴追された初の米大統領となった。

採決にあたり、共和党議員の多くはトランプ氏の言動を擁護しなかった。その代わり、今回の弾劾は慣例となっている聴聞会が開かれていないと批判。国の結束のため、弾劾訴追は断念するよう民主党側に求めた。

共和党のケヴィン・マカーシー下院院内総務は、「これほど短期間で大統領を弾劾するのは間違いだ」と主張。「大統領に間違いがなかったと言っているわけではない。大統領は暴徒らによる水曜日(6日)の議会襲撃の責任を負う」と述べた。

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バイデン氏の大統領就任式が20日に開かれるのを前に、会場となる連邦議会周辺では警備が強化されている

トランプ氏の嫌疑

弾劾訴追決議の内容は政治的なもので、刑事的なものではない。トランプ氏について、今月6日のホワイトハウス前の集会で、議事堂に乱入するよう扇動したとしている。

トランプ氏は集会で支持者に向かい、「平和的かつ愛国的に」各自の意見を届けようと訴えかけた。ただ同時に、大統領選が盗まれたと虚偽の主張をし、支持者らに「死にものぐるいで戦う」よう呼びかけた。

こうした発言があった後、トランプ氏の支持者らは議事堂に乱入。場内では憲法で定められた大統領選の結果認定作業が進行中だったが、これを中断させた。議員らは避難を余儀なくされ、議事堂は封鎖された。

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米連邦議会襲撃 参加者たちが撮影した内部の様子

弾劾訴追決議はトランプ氏について、「大統領選挙の結果は不正で認めるべきではないとの誤った主張を繰り返した」としている。

また、「群衆に向かって意図的に声明を出し、議事堂における法を無視した行動をそそのかし、予見可能だった事態を招いた」と非難。彼の言動によって暴力が引き起こされ、人命が失われたとしている。

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今後どうなる?

弾劾訴追の決議は上院に送られる。上院は弾劾裁判を開き、大統領の罪の有無を判断する。ただ、トランプ氏の任期中に弾劾裁判が開かれる予定はない。

共和党のマコネル上院院内総務は声明で、「規則や手続き、大統領の弾劾裁判に関する上院の前例を考慮すれば、バイデン次期大統領が来週就任する前に、公正で真剣な裁判が完結する可能性はない」とした。

トランプ氏が有罪となるには、上院議員の3分の2の多数票が必要だ。定数100議席の上院は20日以降、与野党がちょうど50議席ずつを分け合うことになるため、共和党議員の少なくとも17人が民主党議員に同調しなければ有罪評決には至らない。

米紙ニューヨーク・タイムズは12日、共和党上院議員の最大20人が、トランプ氏を有罪とする票を投じる可能性があると報じた。マコネル上院院内総務は共和党同僚議員らに宛てた書簡で、まだ態度を決めていないとした。

仮にトランプ氏が上院で有罪とされた場合、議員らはトランプ氏が再び公職に立候補することを禁止するための採決を開くことができる。トランプ氏はすでに、2024年大統領選への立候補の意向を示している。

トランプ氏は2019年、ウクライナ疑惑に絡んで最初の弾劾訴追を受けた上院では無罪とされた。

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