ミャンマーの軍総司令官がテレビ演説、クーデターを擁護 抗議デモ続く中

People show the three-finger salute as they rally in a protest against the military coup, 8 February

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ミャンマー各地でクーデターに抗議するデモが続いている

ミャンマー軍トップのミンアウンフライン総司令官は8日、軍事クーデター後初めてテレビ演説を行い、クーデターの正当性を訴えた。一方、国内各地ではクーデターに抗議する市民のデモが相次いでいる。

ミンアウンフライン司令官は、アウンサンスーチー国家顧問(75)率いる与党・国民民主連盟(NLD)が得票率80%以上で大勝した昨年11月の総選挙は不公平なものだったと主張した。

国軍はミャンマーの一部地域で外出や集会を禁止する措置を取っている。

8日には3日目となる大規模な抗議デモのほか、各地でストライキが行われた。

抗議デモに参加した匿名希望の医師はBBCの取材に対し、「きょうは医師やエンジニア、教師といった公務員が、一致団結していることを示しました。私たちの目的は一つ、独裁政権を追い落とすことです」と述べた。

ミンアウンフライン総司令官の演説は反対派の怒りをあおった。ソーシャルメディアでは、総司令官の映るテレビに向かって鍋を叩いて抗議する動画が拡散された。

国軍は今月1日にクーデターで実権を掌握し、1年間の非常事態を宣言した。アウンサンスーチー氏やウィンミン大統領など与党幹部は自宅に軟禁されている。

米国務省は8日、アウンサンスーチー氏との面会を試みたが拒否されたと発表した。アメリカはミャンマー国民の集会や平和的な抗議の権利を支持すると述べている。

オーストラリア人でアウンサンスーチー氏の経済顧問を務めるショーン・ターネル氏も拘束されている。ターネル氏の家族は8日にフェイスブックに声明を掲載し、同氏の即時解放を求めた。

ミンアウンフライン総司令官の演説

ミンアウンフライン総司令官の演説は、クーデターの理由説明が主な内容で、抗議する市民への威圧は少なかった。

総司令官は、選挙管理委員会は有権者名簿の不審点を調査せず、公正な選挙活動も阻止していたと批判した。

選管は、不正疑惑を支持する証拠はないとしている。

緑色の軍服に身を包んだミンアウンフライン総司令官は、あらためて総選挙を行うことと、勝者に政権を移譲することを約束。その際には新たな「改革された」選管が総選挙を監視すると述べた。

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ミンアウンフライン総司令官の写真を掲げて抗議する市民

また、今回の軍事政権は、2011年まで49年にわたって権力を握ってきた軍事政権とは異なると発言。軍事政権はかつて1988年と2007年に起きた反政府デモを、暴力的に制圧した。

ミンアウンフライン司令官は「本当の規律に基づいた民主主義」を実現すると述べたが、ソーシャルメディア上ではこれに対する反発の声も上がった。

総司令官は市民に対して、「自分自身の感情ではなく、本当の事実にのっとって行動してほしい」と話した。

一方で、抗議デモを直接威圧するような発言はせず、法の上に立つ者は誰もいないと述べるに留まった。

しかし最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーでは取り締まりが強化されており、午後8時から翌午前4時までの外出禁止令や、5人以上の集会を禁じる措置が導入されている。

また国営テレビでは、「法にのっとり(中略)国の安定や公共の安全、法治主義を妨害し破壊する犯罪には実力行使する」と警告が流れた。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのフィル・ロバートソン・アジア副局長は、「民主主義と法治主義を踏みにじったクーデター軍事政権が、平和的に抗議している人々に『法的措置』をとると主張するなど馬鹿げている」と指摘した。

抗議デモの状況は?

BBCビルマ語によると、首都ネピドーにはストライキのため大勢が集結したほか、マンダレーやヤンゴンでも多くの人が抗議に集まった。抗議には教師や弁護士、銀行員、公務員なども参加していた。

インターネット上でも、仕事に行かないよう呼びかける声が上がっていた。

これまでにけが人が出たとの報告が数件出ているが、暴力へは発展していない。しかしネピドーでは市民を解散させるために放水銃が使用された。

放水の様子を撮影していたチョーザヤルウーさんはBBCの取材で、放水車2台が「事前の警告なしに」、「平和的な」抗議参加者に放水したと話した。

BBCのニェインチャンアイ記者は、仏僧や、ミャンマーでは少数派のムスリム、有名サッカー選手、俳優、ミュージシャンなどもクーデター反対デモに参加していると説明。デモは向こう数日でさらに組織化されるだろうと述べた。

<解説> ジョナサン・ヘッド東南アジア特派員

ミャンマーの国営テレビで放映された、軍に背くものには実力行使するという警告は、クーデターを起こした軍からの最初のけん制だった。

前回の反軍事政権デモが起きた2007年には、軍の投入2日前に同様の警告が放映された。当時、兵士は抗議参加者に実弾を撃ち、数十人が亡くなった。

ソーシャルメディアも携帯電話もない、インターネットがほとんど普及していない時代の話だ。軍は通信会社にソーシャルメディアへの接続を遮断するよう命令しているものの、今回のデモはフェイスブックで生配信されている。

国軍はその意志を貫くため、さらに不興を買い、兵器を使用するのだろうか?

先行きへの兆しは明るくない。実権を掌握した軍高官らはどうやら、アウンサンスーチー氏の追放は正しい判断だったと信じているようだ。今日の演説でも、民主主義を脅かしているのはクーデターを起こした軍ではなく、抗議している「規律を欠いた」人々だと警告したくらいだ。