英政府、女性の安全確保に緊急対策発表 帰宅中の女性死亡受け

A woman walks alone along a street at night

画像提供, Getty Images

英政府は15日、イングランドで女性の安全確保を強化するための緊急対策を発表した。パブやクラブなどに私服警官を配備するほか、街灯や防犯カメラを増設するなどの施策が含まれる。ロンドン南部で帰宅中に行方が分からなくなり、遺体となって発見された会社員サラ・エヴァラードさん(33)の事件を受けてのもの。

首相官邸が緊急対策として発表した施策には、イングランド各地で街灯・照明を増やして歩道などを明るくし、防犯カメラを増設するため、2500万ポンド(約38億円)を追加支出するほか、パブやクラブに私服警官を配備する試験的な取り組みが盛り込まれる。

エヴァラードさんは今月3日夜、英ロンドン南部クラパムで帰宅途中に行方が分からなくなった。

その後、12日にロンドン警視庁の現職警官ウェイン・カズンズ容疑者(48)が誘拐と殺人の疑いで訴追された。訴追に先立ち警察は10日、英南東部ケント州の森林で人の遺体を発見したと発表。12日には遺体の身元をエヴァラードさんだと確認したと明らかにした後、カズンズ警官を訴追したと発表し、氏名も公表した。

首相官邸は15日夜、犯罪・司法タスクフォースの会合を開催。この後に官邸は、「安全な道」基金の予算を4500万ポンドに倍増させ、各地の街灯や防犯カメラの増設すると約束した。

私服警官はクラブやバー、夜間に人気の場所などに配備され、女性を追い回したり脅かすような行動をとる不審者がいれば、制服警官に連絡する。

タスクフォースを主催したボリス・ジョンソン英首相は、街なかをパトロールする警官の数を増やし、女性への暴力の量刑を増やす「画期的な法案」を政府は用意していると述べた。

「究極的に、女性や少女への暴力を駆逐して、刑事司法制度の全てが従来より効果的に女性や少女を守るようにしなくてはならない」と、首相は話した。

一方、最大野党・労働党のニック・トマス=シモンズ影の内相は、政府の対策は「まったく不十分」だと批判し、女性へのいやがらせや家庭内殺人に対する量刑の強化、強姦被害者の支援拡大など「直ちに行動」するよう求めた。

<関連記事>

「構造的変化」

「Reclaim These Streets(この街の道を取り戻そう)」というスローガンで集まり、エヴァラードさんの死に抗議しているグループの広報担当は、政府による追加支出は歓迎するものの、それだけでは極めて重要な社会の構造的変化は実現できないと話した。

「政府と警察、そして刑事司法体系がその構造レベルからミソジニー(女性嫌悪)と人種差別に対処するまで、女性は何も信用できない」

クラブやバーに配置される私服警官は、ヴィクトリア・アトキンス内務政務官(予防措置担当)の管轄になる。

アトキンス内務政務官は、政府は企業や警察と協力し、ロックダウンが終わった後に各種店舗が営業再開となった暁には、「女性が確実に街なかで安全だと感じられるようにする」と話した。

プリティ・パテル内相は、強姦など性犯罪で有罪となった人物の刑期が短くなるなど、イギリスで問題視されている事例がこの法案によってなくなるだろうと指摘。また、家庭内暴力対策法案が4月末までに女王の裁可を得る見通しで、「この忌まわしい犯罪に対して一丸となった対応が、これで一変する」と語った。

画像提供, PA Media

画像説明,

ロンドン警視庁の本部前で抗議する人たち(15日夜)

13日には、クラパムの公園「クラパム・コモン」を初め、各地でエヴァラードさんの追悼集会が開かれた。イギリスは現在、パンデミック対策として多人数の集会は原則禁止されていることもあり、警官隊が参加者の一部を強制排除したため、警察は強く非難されている。

15日には、ロンドン中心部にも数百人が集まり、相次ぐ女性への暴力に抗議した。

パテル内相は追悼集会を開かないよう警告していたが、クラパム・コモンでの警察対応について、第三者委員会による調査を指示した。

この騒動では、新型ウイルス対策に違反した罪で3人、救急隊員に暴力を振るった疑いで1人が逮捕されている。またロンドン警視庁によると、2人が罰金命令を受けた。

こうした中、イギリス議会では15日から、デモ集会を警備する際の警察権限を拡大する法案が議論されている。

労働党は、この法案は「女性に安全を感じてもらう助けには全くならない」と批判。表現の自由に「不適切な」制御がかかると指摘している。