「性行為同意アプリ」導入案に批判殺到 オーストラリア州警察

A woman is bathed in pink light as she looks at her phone in her hand

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オーストラリア・ニューサウスウェールズ州警察は18日、アプリを使って性行為の同意をデジタル記録する案を公表した。州民からは悪用される恐れがあるなどと多くの批判の声が上がっている。

ニューサウスウェールズ州警察のミック・フラー長官は、性行為の同意をデジタル記録できるアプリについて、テクノロジーを使って「積極的な同意表明」を確立するものだと述べた。

長官によると、この案はニューサウスウェールズ州政府と共同で考え出したもの。

しかし多くの州民は、短絡的な提案で、悪用される恐れがあると批判している。また、州による監視に利用されるのではないかとの懸念も上がっている。

オーストラリアではここ数週間、女性に対する性的暴行や虐待、ハラスメントをめぐる国民的議論が再燃しており、15日には全国各地で大規模な抗議デモが行われた

性的暴行の被害者の役に立つ?

ニューサウスウェールズ州警察は、性行為において明確な同意を求めることを、一般的な行為にすることを目指すものだと説明。

フラー長官は、「息子や兄弟がいる人は、あまりに難易度が高いと思うかもしれないが、このアプリは(中略)みんなを守ってくれるものだ」と、豪ナイン・ネットワークに述べた。

また、性的暴行事件の裁判では、明確な同意を証明する必要性が常に問題になっているとし、アプリの記録が被害者にとってより望ましい判決を得るのに役立つかもしれないとした。

長官によると、昨年、ニューサウスウェールズ州の警察に報告された1万5000件近い性的暴行事件のうち、訴追されたのは10%未満だったという。

「積極的に同意の有無を表明する必要がある。今の時代にそれを実現するにはどうしたらいいのか? テクノロジーが1つの選択肢だ」と、長官はシドニーの新聞「デイリー・テレグラフ」に述べた。

「同意アプリ」に批判の声

しかし、女性の権利擁護派は、このアプリが実際に使用された場合に多くの問題が生じる恐れがあると指摘している。例えば、本人の気が変わっても同意の記録によってそれが否定されたり、同意が偽造されたりする可能性があると主張する。

家庭内暴力(DV)問題を扱う「Women's Safety NSW」の代表は、「虐待者は簡単に、被害者にアプリの使用を強要できる」とツイートした。

女性議員からも、被害者のための性的暴行に関する法律の改正や、意識向上の取り組みに比べて、アプリを使った対策は不十分だとの批判が上がった。

「我々は同意に関する法律の改正や、全人的な教育を必要としている。男性たちが自分には何でも思い通りに行動する権利があると思うのをやめさせる必要がある。(中略)アプリは必要ではない!!」と、緑の党のジェニー・レオン議員はツイートした。

明確な同意のない性行為を違法とする法律が成立したデンマークでは今年初め、同様のアプリがリリースされたが、国民や報道機関から広く非難された。

オーストラリアではここ数週間、議会や学校、職場を中心とした性的暴行疑惑が次々と公になっている。

ニューサウスウェールズ州では、女子学生たちが性行為の同意に関する学校カリキュラムの更新を求めるキャンペーンを展開している。

何千人もの若い女性が学生時代に性的暴行を受けたと明かしている。その多くは、何がレイプにあたるのか確信が持てなかったとしている。