ドイツ、アストラゼネカ製ワクチンを制限 60歳以上だけに

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ドイツ政府は30日、英オックスフォード大・アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンについて、60歳未満への投与を制限すると発表した。まれに血栓が生じる恐れがあるため。
ドイツの医薬品当局の調べでは、270万人にアストラゼネカ製ワクチンを投与したところ、31人に血栓が生じた。その大半が、若年から中年にかけての女性だったという。
アストラゼネカ製ワクチンをめぐっては、血栓リスクがあるとして、ドイツを含む欧州連合(EU)主要国が使用を一時中断。その後、欧州医薬品(EMA)とイギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が副作用のリスクよりも効果の方が高いと判断し、各国が使用を再開していた。
アストラゼネカはデータの分析を続けており、「これらの血小板の減少によるごくまれな血栓が、人口数百万人の中で自然発生するよりも頻繁に発生するかどうか」を調査していると述べた。
「我々は今後もドイツ当局と協力し、疑問を解決していく」
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ドイツのイエンス・シュパーン保健相と16州の首相は30日に緊急会合を開き、60歳未満にはアストラゼネカ製ワクチンを原則、投与しないことを決めた。
DPA通信が入手した資料によると、60歳未満でも同ワクチンを受けることは可能だが、「医師の指導の下、個別のリスク分析と説明があった後」だけに限られるという。
ドイツ予防接種常設委員会(STIKO)はこれに先立ち、「STIKOは複数の審査と外部専門家の助言の下、まれだが非常に深刻な血栓症の副作用があるとのデータに基づき、アストラゼネカ製ワクチンは60歳以上のみに推奨されることを賛成多数で決定した」と助言していた。
また、すでに同ワクチンを1回打っている60歳未満の人々については、2回目をどうするかの助言を4月末までに出すとしている。
アンゲラ・メルケル独首相は、ドイツで使用される医薬品については、その安全性にいかなる疑問もあってはならないと述べた。
一方で現在66歳のメルケル首相は、自分が接種する場合はアストラゼネカ製でも構わないと話している。
ドイツはEMAが同ワクチンの「安全性と効果」を確認した後、使用を再開しているが、調査も継続している。
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現在66歳のメルケル首相は、自分が接種する場合はアストラゼネカ製でも構わないと話している
アストラゼネカ製ワクチンは、米ファイザー・独ビオンテック製に続いて、西側諸国で最も多く使われている。また、途上国にも対価を要求しない形で供給される予定。
EUでは供給遅延などでワクチン接種が遅れており、ドイツを含む各国で流行の第3波が懸念されている。
イタリアでは30日、マリオ・ドラギ首相夫妻(共に73)がアストラゼネカ製ワクチンを接種し、ワクチンへの信頼をアピールした。
一方、フランスはすでにアストラゼネカ製ワクチンの使用を55歳以上に限定している。
29日には、カナダも55歳未満への同ワクチンの使用を制限したとCBCが報じた。カナダではこれまでに30万回分が使用されたが、国内での血栓の報告はない。
イギリスでは1100万人が同ワクチンを接種した中で、5件の脳静脈洞血栓症(CSVT)が報告されている。うち1人は死亡した。
イギリスの政府報道官は、「アストラゼネカ製ワクチンは安全で効果が高く、すでに大勢の命を救っている。イギリスの規制当局が述べたように、ワクチン接種の知らせが来たら受けてほしい」と述べた。
「すでに3000万人以上が1回目のワクチンを接種しており、4月15日までに50歳以上の全員に、7月末までには成人全員に行き渡る予定だ」