イギリス、30歳未満にはアストラゼネカ製ワクチンを制限へ 血栓の報告受け

ニック・トリグル保健担当編集委員

Clinical Pharmacist Ellie Morton prepares to administer the Oxford AstraZeneca COVID-19 Vaccine at the community vaccination centre at Kingston University's Penrhyn Road campus on March 12, 2021

画像提供, Getty Images

イギリス政府は今後、30歳未満の成人への新型ウイルスのワクチン接種では、英オックスフォード大学/アストラゼネカ製以外のワクチンを使用する方針だ。このワクチンと、まれに起きる血栓症の関係が示されたため。

英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、2月末までに同ワクチンの接種者79人に血栓が起こり、うち19人が亡くなっていたことを明らかにしていた。

ワクチンが血栓の原因となったことを示すものではないとしているものの、関連性は確実さを増しているという。

MHRAの調査では以下のことが明らかになった。

  • 2000万回分のワクチンが接種され、79人に血栓が発生し、うち19人が亡くなった。100万人に4人に血栓が起こり、100万人に1人が亡くなっている計算だ
  • 血栓が発生した人の3分の2が女性だった
  • 亡くなった人は年齢18~79歳で、3人が30歳未満だった
  • 全てのケースが1回目のワクチン接種後に起こっているが、まだ2回目を受けている人が少ないことから、この点については結論が導き出せていない

欧州連合(EU)の欧州医薬品庁(EMA)は7日、アストラゼネカ製ワクチンの非常にまれな副作用として血栓を記載すべきだと述べた。一方で、利益がリスクを上回っているとした。欧州ではいくつかの国で、ワクチンの使用を一部の年齢に制限している。

世界保健機関(WHO)は、同ワクチンと血栓の関係は「信ぴょう性がある」が確定はしていないと述べた。また、全世界ですでに2億人がこのワクチンを受けている状況で、血栓がおきるのは「非常に珍しい」ことだと話している。

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イギリスのマット・ハンコック保健相は、国内での調査の結果、オックスフォード大学/アストラゼネカ製ワクチンは「安全かつ効果的で、成人の大半について利益がリスクを上回ること」が明らかになったと説明した。

ボリス・ジョンソン首相は、アストラゼネカ製ワクチンは「すでに何千もの命を救っている」と話し、新しい助言によってあらゆる年齢の市民が「引き続き、ワクチンに全幅の信頼を置ける」ようになったと述べた。

最大野党・労働党のキア・スターマー党首も、「医師や科学者を信じよう」と呼びかけ、自身も2回目のアストラゼネカ製ワクチンの接種を心待ちにしていると話した。

アストラゼネカは、MHRAとEMAの調査により、ワクチンの利益が「なおリスクを大きく上回っている」ことが再確認できたと語った。

イギリスでは7日、新たに2763人の新規感染と、45人の死亡が報告された。

一方、イースター(復活祭)の週末後ということもあってワクチン接種は伸びず、この日は8万5227人が1回目を、18万6793人が2回目を接種した。

若年層ほど「利益とリスクが均衡する」

MHRAのジューン・レイン長官は、アストラゼネカ製ワクチンの副作用は「非常にまれ」で、ワクチンと血栓に直接の因果関係があるのかを特定するにはさらなる調査が必要だと話した。

「大半の人々にとってなお、利益の方が既知のリスクを大きく上回っている」

一方で、若年層になるほど、利益とリスクが「均衡していく」と述べた。

その上で、「公衆の安全が最優先事項だ」と語った。

レイン氏によると、ワクチンと血栓の関係性は「信ぴょう性がある」という。

この調査結果を受け、イギリス政府のワクチン諮問委員会は、18~29歳の若年層については可能であればアストラゼネカ製以外のワクチン接種を推奨することにした。

同委員会のリム・ウェイ・シェン教授は、今回の措置は「深刻な安全上の懸念があるからというよりは、細心の注意を払うためだ」と述べた。

画像説明,

アストラゼネカ製ワクチンのしくみ

MHRAの医薬品委員会(CHM)で委員長を務めるムニル・ピルモハメド教授は、ワクチンのリスクを測るには、COVID-19にも血栓のリスクがあることや、COVID-19そのもののリスクも考慮すべきだと指摘した。

ピルモハメド教授によると、新型ウイルス患者の7.8%が肺に血栓を、11.2%が深部静脈血栓症(DVT)を起こすという。

MHRAは、1回目にアストラゼネカ製ワクチンを受けた人は、2回目も同じワクチンを打つべきだとしている。一方、1回目の接種後に血栓が生じた人はその後、ワクチンを受けるべきではないと述べた。

また、妊娠中の女性や、血液疾患で血栓のリスクがある人は、ワクチンを打つ前に利益とリスクについて医師と相談するよう求めた。

ワクチンを接種してから4日たっても頭痛や目のかすみ、混乱を経験したり、不自然なあざや息切れ、胸の痛みがある人は、医療機関に相談するよう呼びかけている。

イングランド副医務主任のジョナサン・ヴァン=タム教授は、アストラゼネカ製ワクチンをめぐる動きは「軌道修正」だと説明。医薬品の方針が変わることは普通だと話した。

ヴァン=タム教授はまた、米ファイザーや米モデルナ製ワクチンが予定通り輸入されれば、今回の変更によるイギリスのワクチン接種事業への影響は「ゼロか、無視できる程度」にとどまると話した。政府は7月末までに全成人へのワクチン接種を終える目標を掲げている。

<分析>100万人に1人の死亡リスク、心配すべき?

リスクの全くない治療法やワクチンは存在しない。問題は、利益がリスクを上回っているかどうかだ。

7日に発表された調査報告では今一度、アストラゼネカ製ワクチンの利益が確認された。血栓症になる可能性があるとしても、まだ確証は出ていない。

このワクチンを接種して死亡するリスクは非常に小さい。100万人に1人の割合だ。

これに比べて新型コロナウイルスに感染した場合、75歳以上の8人に1人が、40歳代の1000人に1人が亡くなるリスクがある。

COVID-19での死亡リスクが低い30歳以下となると、こうした差はそれほどはっきりしない。しかしアストラゼネカ製ワクチンの利益はなお、リスクを上回る。

とはいえ、他のワクチンの方が安全性が高いかもしれない。

心配になる人もいるかもしれないが、実際のリスクは、普段は全く考えないほど低いものだ。

たとえば、車で400キロ走った場合、100万人に1人が交通事故で死亡するリスクがある。だが車に乗るときにこれを気にする人はどれだけいるだろうか?