コロンビアで反政府デモ、死者も多数 背景に何が?

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抗議の対象は年金や保健、教育システムなどにもおよんでいるほか、治安部隊による過剰な暴力行為にも非難の声が上がっている
南米コロンビアで、2週間にわたって反政府デモが続いている。首都ボゴタでは、デモ参加者が複数の警察施設を襲撃した。
クラウディア・ロペス市長は暴力行為は「受け入れられない」と述べ、コロンビア国軍に警備支援を依頼した。
これまでに、警官1人を含む少なくとも24人が一連の抗議で亡くなっている。国連は治安部隊に対し、銃火器の使用を控えるよう訴えている。
コロンビアのオンブズマンによると、少なくとも11人の死亡に警察が絡んでいる。また、これまでに警察との衝突で800人以上が負傷したほか、80人以上が行方不明になっているという。
ボゴタ市によると、スペイン語でCAIと呼ばれる警察施設25カ所が襲撃された。CAIは、緊急出動用に街中に設置されている、1~2部屋ほどの交番を指す。
ロペス市長は、警官15人が中にいたCAIに火がつけられたが、死人は出なかったと話した。また、警官が銃撃されたりナイフで襲われたりしたケースもあると述べた。
5日には、ボゴタ市内で夜間に起きた暴動で、市民30人と警官16人が負傷した。また、南部カリでは最大規模の暴動が起きた。
人々はなぜ抗議している?
デモは4月28日、政府が経済危機脱却のために打ち出した税制改革に反対する形で起こった。

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デモは4月28日、政府が経済危機脱却のために打ち出した税制改革に反対する形で起こった
デモ行進はコロンビア最大の労働組合が組織したが、貧困に陥ることを懸念した中流階級の人々も参加した。コロンビアでは人口の半分近くが貧困状態にあり、その格差は新型コロナウイルスのパンデミックによって加速している。
政府の税制改革案は、所得税の対象となる給与の下限を毎月260万ペソ(約7万5000円)に引き下げるというもの。また、さまざまな控除を撤廃し、法人税も引き上げるとしている。
イヴァン・ドゥケ大統領は2日、この改革案を取り下げると発表したが、抗議の波が収まることはなかった。抗議の対象は年金や保健、教育システムなどにもおよんでいるほか、治安部隊による過剰な暴力行為にも非難の声が上がっている。
カリでは何が起きた?
コロンビア第3の都市カリでは、抗議活動が始まって以来、最大の暴力行為が報告されている。道路は封鎖され、多くの警察施設や公共施設、個人所有の建物などが襲撃を受けている。また、警察を支援するため軍隊が派遣されている。
国連の人権高等弁務官事務所は4日、前日に「警察が抗議参加者に発砲した」として、カリでの暴力行為に「深い懸念」を示した。
現地コミュニティーのリーダーを務めるヴィン・レイエスさんはBBCムンドの取材で、デモの最中に「覆面警官と兵士が半自動小銃やライフルを発砲した」と説明。「デモには母親や子供もいた」と話した。

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コロンビア第3の都市カリでは、抗議活動が始まって以来、最大の暴力行為が報告されている
一方で専門家からは、カリでの緊張には別の要因があるとの声もある。この地域は長年、民間武装組織や麻薬密輸業者による紛争に巻き込まれており、コロンビア国内でも特に暴力の多い街だという。また、この地域に武器が多いことを指摘する専門家もいる。
人権専門家のカセリン・アギレさんは、「暴力縮小を求める市民団体もあるが、家の中から発砲する市民グループもある。街に流れ込む武器のせいで人々の用心深さに拍車がかかっている」と話した。
政府の見解は?
コロンビア政府は、左翼の反政府組織が暴力を起こしていると非難している。また、反政府組織「民族解放軍(ELN)」のメンバーに付きまとわれていると述べた。ELNは、2017年に武装解除したコロンビア革命軍(FARC)の分派で、政府との和平に合意していない。
ディエゴ・モラノ国防相は、「一連の暴力は組織的で、犯罪組織の指導と資金援助を受けている」と述べた。
警察も、窃盗や放火といった「犯罪要素」を防ごうとした警官が襲撃されるケースが多いと話している。
こうした中でドゥケ大統領は、政府は国全体と対話する用意があると発言。「市民の声を聞き、解決策を築いていく場所」を創設すると発表した。
コロンビアの反政府運動で死者が出るのは今回が初めてではない。昨年9月には、ボゴタ市で警官にテイザー銃を向けられた男性が死亡した事件への抗議で、7人が殺害されている。