タリバン、アフガニスタンの主要都市を攻撃

Afghan troops in Herat

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アフガニスタン政府軍と反政府組織タリバンの戦闘が、同国南部と西部の主要都市周辺で激化している。タリバンはすでにヘラート、ラシュガル・ガー、カンダハールの一部に侵入しており、これらの都市の奪取を試みている。

国際駐留軍のほとんどが9月までにアフガニスタンから撤退すると発表されて以降、タリバンは農村地域を中心に急速に勢力を拡大してきた。

アフガニスタンが人道危機に陥る危険性や、政府軍がどれくらい持ち堪えられるのかという懸念が広がる中、こうした都市の行く末は大きな鍵をにぎっている。

イスラム原理主義のタリバンはすでに、アフガニスタン国土の半分を掌握しているとみられている。その中には、イランやパキスタンへの重要な国境検問施設も含まれている。

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ラシュガル・ガーでは7月31日、市長公邸からわずか数百メートルのところまでタリバン兵が迫ったものの、夜までに政府軍に押し戻されたと報じられている。

ここ数日の戦闘で、市長公邸にタリバンが迫ったのは2度目。政府軍司令官は、30日にタリバン側に多数の犠牲を出したと述べている。

カンダハールのグル・アフマド・カミン議員はBBCの取材に対し、同市がタリバンの手に落ちるリスクは非常に高く、すでに数万人が家を追われ、人道危機が迫っていると語った。

同議員によると、カンダハールの状況は時間をオウごとに悪化しており、市内での戦闘は過去20年で最悪のものだという。

また、タリバンはカンダハールを暫定首都にし、主要な足がかりにする計画だと説明。カンダハールが占領されれば、周囲の5~6州もタリバンの勢力下に入るだろうと述べた。

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カンダハールではすでに数千人の市民が家を追われている

タリバンが街を複数の方角から攻めており、もし市内に完全に入り込まれても、政府軍は市民の多い中で重火器を使えない状況にあるという。

ヘラートでも戦闘が激化しており、タリバンの戦闘員が南方からしないに攻め入っていると地元トロ・ニュースが伝えている。戦闘は少なくとも5カ所で発生している。

一方、政府軍はアメリカ軍の空爆支援を受け、ヘラートの一部地域と空港を奪還している。

空港近くの国連施設では、警備員1人が殺された。国連は、タリバンによる犯行だと説明している。

また、市内のいくつかの場所は安全で、武装して抗戦する市民もいるという。

「イスラム首長国の復興」

欧州連合(EU)のアフガニスタン特別大使を務めるトマス・ニクラッソン氏は、同国での戦闘はコンゴも悪化するだろうと話した。

ニクラッソン氏は、現在のタリバンは「かつてのイスラム首長国の(中略)復興」を目指そうとしているようだと懸念を表明した。

イギリスの元陸軍最高司令官、デイヴィッド・リチャーズ大将は、国際駐留軍の撤退が、アフガニスタン政府軍の士気を削ぐ可能性があると警告。そうなればタリバンが勢力を回復し、新たな国際テロの脅威になり得ると指摘した。

人道支援団体も、タリバンの攻勢が続けば今後数カ月のうちに、食料や水、公共サービスの不足や、難民キャンプでの密集など、深刻な危機につながりかねないと危惧(きぐ)している。

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アフガニスタンの勢力図(2021年7月29日時点) 赤色がタリバン、青色が政府軍、黄色が戦闘続行中の地域

アメリカ軍と北大西洋条約機構(NATO)軍は2001年9月の米同時多発テロの直後にアフガンに侵攻し、タリバンは政権を失った。

タリバンは、国際テロ組織「アルカイダ」創設者の故オサマ・ビンラディン容疑者など、同時多発テロ事件の関係者をかくまっていた。

しかし、国際駐留軍の存在や、アフガニスタン政府軍への何十億ドルもの支援や訓練が続いたにも関わらず、タリバンは再び勢力を取り戻している。

2020年2月にドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの和平合意を結び、駐留軍の撤退を約束した。

現職のジョー・バイデン政権は、9月までの完全撤退を予定している。