【東京五輪】 ベラルーシ女子陸上選手、帰国拒否 ポーランドが人道ビザ発行

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ベラルーシ帰国を拒否したティマノフスカヤ選手は都内のポーランド大使館に入った(2日午後)

東京オリンピックに出場した東欧ベラルーシの女子陸上選手が1日、代表チームの運営について不満を公言した後、コーチらに強制帰国させられそうになり、帰国を拒否した問題で、2日午後には選手は都内のポーランド大使館に入った。ポーランド政府は同日、選手に人道査証(ビザ)を発行した。

ポーランドのマルチン・プシダチ外務次官は、ベラルーシのクリスティナ・ティマノフスカヤ選手(24)が東京でポーランド外交官たちと直接やりとりをしており、ポーランド政府は選手が「スポーツ選手としてのキャリアを続けられるよう必要なことはなんでもする」用意があると話した。

同選手の夫はすでに、ウクライナの首都キーウ(キエフ)へ脱出している。AFP通信に対して、「近い将来」ポーランドで妻と再会したいと話した。

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ポーランド大使館の敷地内に入ったティマノフスカヤ選手(2日、都内)

これに先立ち、ベラルーシ・スポーツ連帯基金(BSSF)はBBCに対して、ティマノフスカヤ選手はポーランドへの亡命を希望していると話していた。

BSSFは、ベラルーシのルカシェンコ政権に抗議するなど政治的意見などを理由に刑務所に収監されたり、不利な扱いを受けたりしているスポーツ選手を支援するため、昨年設立された団体。

ティマノフスカヤ選手は1日、自分が代表チームの運営のずさんさについてインスタグラムで発言したことを理由にチーム幹部に強制帰国させられそうになったとして、帰国を拒否。空港警察に保護を求め、出国便に搭乗しなかった。その後、欧州の他の国への亡命を希望しているとされ、チェコとポーランドが、査証(ビザ)を交付するなどして保護する用意があると申し出た。

大会関係者は2日、ティマノフスカヤ選手が羽田空港近くのホテルで夜を過ごし、日本当局に保護されていると話した。

国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報担当は2日の記者会見で、ティマノフスカヤ選手は日本当局が保護しており、国連の難民機関など複数の機関が連絡をとっていると話した。

アダムス広報担当はさらに、IOCとしてベラルーシ国内オリンピック委員会(NOC)に詳しい報告を書面で提出するよう求めたと述べた。IOCと日本当局は協議を続ける方針という。

ベラルーシでは昨年8月、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が6選を決めたことに、多くの国民が不正だと強く反発し、国内で大規模な抗議が起きた。IOCは今年3月、NOCに対して、抗議デモに参加したアスリートたちを保護しなかったことを理由に、大統領の長男の会長就任などを認めないなど、処分を科している。

ベラルーシの代表チームは、ティマノフスカヤ選手の出場を取り消したのは精神状態が理由だとしている。

ベラルーシでは1994年から続くルカシェンコ政権が、反体制派を厳しく取り締まっている。

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ルカシェンコ大統領の6選に反発した全国的なデモには、多くのアスリートも参加した。その後、代表選手になれるだけの技量をもつ優秀な選手たちが、訓練費用を絶たれ、代表チームから外され、拘束される事態になった。

今年5月には政権に批判的なジャーナリストが乗る旅客機がベラルーシに強制着陸させられ、ジャーナリストは拘束された。

いきなり部屋に

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ティマノフスカヤ選手は出国便への搭乗を拒否し、警察に保護を求めた(1日夜、東京・羽田空港)

ティマノフスカヤ選手は、2日の女子200メートル走に出場する予定だった。

しかし、ロイター通信に対して、代表チームのコーチたちが1日に自分の部屋にやってきて、1時間で荷造りをするよう指示し、自分を空港に連れてきたのだと話した。

「私はベラルーシには帰らない」と、同選手はロイター通信に話した。

同選手は1日夜、羽田空港に着くと、搭乗予約のあったトルコ・イスタンブール行きの便に乗らずに済むよう、空港警察に保護を求めたという。

日本の警官に囲まれた選手は「大丈夫だと思う、警察と一緒にいる」と話していた。選手はその後、羽田空港を管轄する警視庁の東京空港署に保護された。

ティマノフスカヤ選手はその後、国際オリンピック委員会(IOC)の介入を要求。BSSFがメッセージアプリ「テレグラム」に持つチャンネルに投稿した動画で、「彼らは私の同意なく私を日本から連れ出そうとしている。この件についてIOCに関与してもらいたい」と訴えた。

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【東京五輪】 「IOCの介入を求めます」 帰国拒否のベラルーシ選手の訴え

ティマノフスカヤ選手の要求に対しIOCは日本時間1日夜、同選手について報道を見たと短い声明を発表。ベラルーシ・オリンピック委員会に確認を取っていることを明らかにした。IOCはさらにその後、選手と会話をしたところ「安全だと思うと話していた」と述べていた。

BSSFのアナトル・コタウ氏は日本時間2日早朝、BBCに対して、選手は今は「安全」で警察の保護下にあると話した。

これに先立ち選手は、「ベラルーシのための欧州ラジオ(ERB)」に、帰国するのが怖いと話していた。

「いかにずさんか」

ティマノフスカヤ選手は7月末、インスタグラムに動画を投稿。一部の選手に出場資格がないことが分かり、5日に予定される400メートルリレーに出場するよう急きょ指示されたのだと話していた。

この動画が掲載された後、ベラルーシの国営メディアはティマノフスカヤ選手を批判。国営テレビONTは、選手に「チーム精神」が欠けていると非難した。

ティマノフスカヤ選手はロイター通信に、「チームのコーチたちがいかにずさんかインスタグラムで話した」せいで、チームから外されたのだと話した。

一方、ベラルーシ・オリンピック委員会は、ティマノフスカヤ選手をチームから外したのは「感情や精神の状態」が理由だと発表。200メートル走と400メートルリレーの出場は取り消すと説明していた。

欧州に亡命希望

ティマノウスカヤ選手は帰国を拒否して間もなく、欧州のいずれかの国へ亡命したいと周囲に話していた。

ただし、BSSFのコタウ氏はティマノフスカヤ選手がベラルーシに残る家族を心配しているとBBCに述べていた。

「ベラルーシの家族への報復を恐れている。今の彼女はそれを一番心配している」

選手が空港にいる様子を詳しく伝えたベラルーシの反体制派メディア「ネフタ」のタデウシュ・ギチャン記者はツイッターで、「ベラルーシ代表チームの管理体制を彼女が7月30日に批判すると、独裁政権側のメディアは『お前は国の恥だ』という中傷キャンペーンを開始した。今となってはベラルーシに帰国するのが怖いと(ティマノフスカヤ選手は)話しているが、チーム関係者が無理やり彼女を東京の空港へ連れて行った」とツイートしていた

記者は、「大事なのは、ティマノフスカヤ選手が独裁政権の批判を特にしていないという点だ。単に、ベラルーシ・チームの関係者が書類手続きを誤って、何の訓練もしていない競技に彼女を登録してしまったと不満を口にしただけだ。それなのに独裁体制の国営メディアは彼女を国家の敵に仕立てあげた」と書いている。