イギリス、入国制限を一部緩和 英ワクチン事業での接種完了で隔離免除も

画像提供, Reuters
イギリスでは新型コロナウイルスのベータ株への懸念が薄れ、フランスから入国する際に隔離に入らなくて済むようになった。写真はマスク姿でパリのエッフェル塔近くのトロカデロ広場を歩く人たち
イギリス政府は8日午前4時から、新型コロナウイルス対策の渡航制限を変更した。同国の新型ウイルスワクチン接種プログラムに基づいて接種を完了した人は、フランスからの入国時に隔離措置が免除されることとなった。
イギリス政府は渡航制限をグループ分けしており、今回フランスを含む12カ国について制限が引き下げられた。
フランスは「黄色(アンバー)プラス」リスト国から、制限がひとつ軽い「黄色」に変更され、他の欧州連合(EU)加盟国と同じ扱いになった。
イギリスは今月2日から、アメリカとEUの正式接種事業でワクチンの接種を終えた人、あるいは子供について、イギリス入国時の隔離を不要にした(入国後のPCR検査は必要)。当初フランスはEU加盟国ながら、ベータ株の懸念から例外扱いとなっていた。
フランスはイギリスで最も人気のある旅行先の1つ。しかし複数の旅行代理店は、制限緩和のタイミングは「今夏の状況を救うには遅すぎた」としている。
英仏間のフェリーを運航する仏ブリタニー・フェリーズによると、英政府による渡航制限変更の発表を受け、予約が「急増」した。
それでも、乗客の数は通常の4分の1程度の見込みだと、クリストフ・マチュー最高経営責任者(CEO)は述べた。
「現実的に考えて、旅行シーズンの苦しい状況を補うには、何万件もの予約が必要だ」
一方で、制限引き上げとなったメキシコに渡航中の人は、ホテルでの隔離措置を避けるため、急いで帰国せざるを得なくなった。
日本は引き続き「黄色」リストに含まれており、イギリス政府のワクチン接種事業か米・EU認定のワクチン接種事業で、接種を完了していなければ、出発前後のウイルス検査と入国後に10日間の隔離が必要。
渡航制限リストの変更は次の通り――。
- 「黄色」から「緑色」へ引き下げ:オーストリア、ドイツ、スロヴェニア、スロヴァキア、ラトヴィア、ルーマニア、ノルウェー
- 「黄色プラス」から「黄色」へ引き下げ:フランス
- 「赤色」から「黄色」へ引き下げ:インド、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦
- 「黄色」から「赤色」へ引き上げ:ジョージア、メキシコ、仏領レユニオン島、仏領マヨット島
8月午前4時以降、入国時の隔離措置を免除される(ワクチン未接種者を含む)「緑色(グリーン)」リストに含まれる国と地域は29から36へと増えた。
ただし、各国が入国者について独自のルールを設けていることから、イギリスの「緑色」リストに含まれていても実際にイギリスへ渡航できるとは限らない。
また、帰国前と帰国後にウイルス検査を受けなければならないルールにも変更はない。
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「今夏の状況を救うには遅すぎる」
ある旅行代理店は、旅行者は引き続きウイルス検査が求められることから、多くのイギリス人が海外旅行の予約を控えていると指摘。今回の制限緩和はわずかな変化しかもたらさないとした。
「今夏の状況を救うにはあまりに遅すぎる」と、英旅行代理店「Advantage Travel Partnership」のジュリア・ロ・ブエ=サイードCEOは述べた。
多くの人はすでに休暇の計画を立てており、予約の増加は「ほとんどない」という。
「大半の企業の売り上げが80%落ち込んでいることを考えると、その不足分を補うには膨大な数の予約が必要だ」
「赤色」リストの国からイギリスに入国できるのは、イギリス市民、アイルランド市民、イギリス在住者のみに限定され、ホテルで10日間隔離しなければならない。費用は大人1人あたり1750ポンド(約26万円)。
「場当たり的」と批判も
英政府はイングランドに関する渡航制限リストを設定しており、イングランド以外の地域はそれぞれ独自のリストを設けている。スコットランドと北アイルランドは、イングランドと同じ変更を加える方針だと認めた。
一方でウェールズは、英政府は「場当たり的に」渡航制限を決めていると批判。今回の変更にならうかどうかは検討するとし、「依然として感染リスクがあることから、必要不可欠な海外渡航を除くすべての渡航を控えるよう、引き続き推奨していく」と付け加えた。