アフガニスタンについてみんな間違えた=英軍トップ

イギリス国防参謀長陸軍大将のサー・ニック・カーター
イギリス国防参謀長陸軍大将のサー・ニック・カーターは5日、武装勢力タリバンがアフガニスタンを制圧したそのスピードを「みんな間違えた」とBBCに話した。
カーター参謀長はBBC番組「アンドリュー・マー・ショー」に出演し、「(タリバン進攻の)ペースに我々は意表を突かれた。タリバンが何をしようとしているのか、完全には気づいていなかったと思う」と述べた。
軍情報が間違っていたのかとの質問には、「(アフガン政府は)来年までもたないというのが、大方の評価だったし、それは結果的に正しかった」と説明した。
さらに、政府は複数の情報源から情報を得ていると答え、「純粋に軍情報だけではない、もっと幅広い話だ」と述べた。「この国では、内閣官房の中に合同情報委員会がある。その委員会が、国防省や外務省や省庁間機関や情報部や、公開情報を集めて検討している」。
駐留米軍をはじめとする連合軍の大部分が7月はじめまでに撤退すると、タリバンは国内を次々と制圧し、8月15日に首都カブールを掌握した。進撃の速度を各国政府が読み違えたのではないかと、批判が出ている。
この電光石火の進撃について国際社会はなぜ間違えたのかと番組で質問されると、参謀長は「率直に答えるなら、みんな間違えたのだと思う」と答えた。「タリバン自身でさえ、事態があれほど素早く変わると予測していなかった」。
「アフガニスタン政府があれほどもろく、政府軍の指揮についてあれほどもろいとは、誰も予想していなかったと思う」と、カーター氏はさらに述べた。
イギリスのドミニク・ラーブ外相は1日に英下院外交委員会で、アフガニスタン情勢について政府の情報合同委員会は「首都カブールが年内に陥落する可能性は低い」という見解で一致していたと報告した。
タリバンは、新政権の構成を近日中に発表するとしている。
国際社会の影響を
カーター参謀長は、タリバンがどのような形でアフガニスタンを統治するのかまだ分からないものの、かつて1996年から2001年にかけてアフガニスタンを支配していた当時のような抑圧的な政府にはならない可能性もあると述べた。
「現状を見る限り、良い状態とは言えないが、様子を見よう。変わるかもしれない」と参謀長は言い、「アフガンの人たちが変わったこと、前とは少し違う統治を国民が求めていることを知らないほど、(タリバンが)ばかだとは思わない」と述べた。
5日にはタリバンが中部ゴール州で、妊娠中の女性警官を殺害したと報道された。タリバンはこれを否定している。
カーター参謀長は、タリバンに以前とは違う統治をするよう国際社会が働きかけて促す必要があると強調した。「現代国家を効果的に運営するには、(タリバンは)助けを必要とするはずだ。行儀よくすれば、助けを得られるかもしれない」。
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テロ再燃の危険は
現在、アフガニスタン国内で唯一タリバンが制圧できていない北東部パンジシール州では、「アフガニスタンの反タリバン国家抵抗戦線」(NRF)との戦闘が続いている。
4日には米軍トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長がFOXニュースに対して、アフガニスタンで内戦がおそらく起きると述べ、「12カ月、24カ月、36カ月のうちに(アフガニスタンで)テロ組織の活動が再び活発化する可能性は高い」と話した。
これについて英軍のカーター参謀長は、テロ活動再燃の危険性はアフガニスタンで実効性のある政府が確立できるか次第だとBBCに話した。
イギリスの最大野党・労働党のリサ・ナンディー影の外相は、アフガニスタン情勢の影響でイギリスの治安が依然より脅かされる可能性が高いと述べた。「アフガニスタンがまたしてもテロ組織にとっての安全圏にならないようにすることが、(英政府にとっての)喫緊の課題だ」と強調し、タリバンに対して諸外国と共同歩調で臨むよう呼びかけた。
英秘密情報部MI6の前長官、サー・アレックス・ヤンガーはこれに先立ち、英紙タイムズのタイムズ・ラジオに対して、アフガニスタン国内にイギリス政府が実際に拠点をもたないのは諜報活動にとって「痛手」になると話した。さらに、アフガニスタンのような場所に「背を向けて」しまえば、「この国への脅威拡大に否応なしにつながる」と警告した。