新型ウイルスの経口治療薬、入院・死亡リスクが半減 米製薬会社が緊急使用申請へ

ジム・リード、保健担当記者

Molnupiravir pills

画像提供, Merck

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「モルヌピラビル」はCOVID-19の経口抗ウイルス薬として初めて臨床試験結果が報告された

米製薬会社が開発中の新型コロナウイルス感染症COVID-19の経口治療薬「モルヌピラビル」で、入院や死亡リスクを約半減できることが、臨床試験の中間結果で示された。

臨床試験は米製薬会社メルクが実施した。COVID-19の発症を最近診断された患者に対し、錠剤型のCOVID-19の経口治療薬「モルヌピラビル」を1日2回投与した。

メルクによると、結果が非常に良好だったことから、外部モニターから臨床試験の早期終了を求められたという。

同社は今後2週間のうちに、アメリカでモルヌピラビルの緊急使用許可を申請するとしている。

ジョー・バイデン米政権で首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士は、今回の結果は「非常に良い知らせ」だとしつつ、米食品医薬品局(FDA)がデータを評価するまでは慎重に対応するよう求めた。

初の経口治療薬

規制当局に承認されれば、モルヌピラビルはCOVID-19の初の経口抗ウイルス薬となる。

この薬はもともとインフルエンザ治療薬として開発されたもので、ウイルスの遺伝子に対して複製エラーを生じさせ、増殖を防ぐよう設計されている。

患者775人を対象にした臨床試験で、分かったことは次の通り――。

  • モルヌピラビルを投与された患者で、入院が必要になったのは7.3%
  • これに対して、プラセボ(偽薬)を投与された患者では、14.1%が入院した
  • モルヌピラビルを投与された患者の中に死者は出なかったが、プラセボを投与された患者のうち、8人が後にCOVID-19で死亡した

このデータはプレスリリースで発表された。査読はまだ受けていない。

この治療法は、ウイルスの外側にあるスパイクタンパク質を標的とする多くの新型ウイルスワクチンとは異なり、ウイルスが自分自身のコピーを作る際に使う酵素を標的とすることで効果を発揮する。

メルクによると、この治療法は今後発生する新たな変異株に対しても同様に有効なはずだという。

メルクの感染症ディスカバリー部門の責任者ダリア・ハズダ氏は、「ワクチン未接種者や、ワクチンによる免疫に対する反応性が低い人のための抗ウイルス治療は、このパンデミックを終わらせるために非常に重要なツールだ」と、BBCに語った。

臨床試験の結果では、モルヌピラビルが効果を発揮するには、発症から早い段階で服用する必要があることが示されている。すでに重度のCOVID-19で入院していた患者を対象とした初期研究では、不本意な結果となり、研究は中止された。

国際的な承認

COVID-19治療薬の臨床試験結果を発表した企業はメルクが初めてだが、他の企業も同様の治療法の開発に取り組んでいる。メルクのライバル企業の米製薬大手ファイザーは最近、2種類の抗ウイルス錠剤の後期臨床試験を開始した。スイスの製薬会社ロシュも同様の薬を開発中だ。

メルクは2021年末までに、モルヌピラビルを1000万回分製造する予定だとしている。米政府はFDAが緊急使用を承認した場合に12億ドル(約1330億円)相当のモルヌピラビルを購入することで合意している。

メルクはイギリスを含む複数の国とも協議中だという。また、中低所得国にモルヌピラビルを供給するために、多くのジェネリック・メーカーとライセンス契約を結ぶことでも合意しているとしている。

今回の治験には参加していない英キングス・コレッジ・ロンドンのペニー・ワード教授は、「抗ウイルス薬担当のタスクフォースが、ワクチン担当のタスクフォースと同様に、この薬(モルヌピラビル)を予約注文していることを大いに期待している」と述べた。

「そうすれば、イギリスはようやく、ワクチン接種後に感染するこの病気を治療することで、状況を適切に管理することができる。そして、来たるべき冬に英国民保健サービス(NHS)の負担を軽減できる」

英オックスフォード大学のピーター・ホービー教授(感染症専門)は、「安全で手ごろな価格、かつ効果的な経口抗ウイルス薬が得られれば、新型ウイルスとの闘いは大いに前進する」と述べた。

「モルヌピラビルは実験室では有望視されてきたが、患者で実際に効果が出るかが何より大事な課題だった。多くの薬がこの段階で失敗するだけに、モルヌピラビルについて今回の中間結果はとても心強い」