英官邸の広報副部長、昨年12月のパーティーであいさつ=英報道

画像提供, Andrew Parsons/No 10 Downing Street
ジャック・ドイル広報部長
イギリスで厳しいパンデミック対策が敷かれていた昨年12月に、首相官邸で数十人のクリスマスパーティーが開かれていたとされる問題で、当時の官邸広報部長がパーティーであいさつをし、職員にさまざまな賞や表彰状を手渡していたことが明らかになった。英ITVニュースが9日、最初に伝えた。
屋内でのクリスマスパーティーが禁止されていた昨年12月18日に英首相官邸で開かれたというスタッフの集まりで、ジャック・ドイル広報副部長(当時)は、集まった20~30人を前にあいさつをした。ドイル氏は現在、官邸の広報部長。
消息筋はBBCに対して、この集まりでは食べ物や飲み物が用意され、プレゼント交換などのゲームも行われたと話している。
この集まりにドイル氏が出席していたと最初に伝えた英ITVニュースによると、ドイル氏はあいさつしたほか、職員に表彰状などを手渡していた。
BBCの取材では、ドイル氏はこの日、官邸で深夜まで続いた新型コロナウイルス関連の会議に出席していた。
また、ドイル氏が官邸スタッフの働きぶりをたたえる表彰状などを渡すのは、毎週金曜の恒例行事だったという。昨年12月18日は金曜だった。
BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、問題になっている昨年の集まりにドイル氏が出席していたことは大事な点だと指摘する。昨年の集まりについて英タブロイド紙デイリー・ミラーが今月1日に報道して以来、「クリスマスパーティーはなかった」と繰り返してきた官邸の報道戦略は、現在の官邸広報部長のドイル氏が中心になって策定しているものだからだという。
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首相官邸は、「現在調査中の案件のため、調査の進行中はこれ以上この件についてコメントしない」としている。
英政府の公務員トップ、サイモン・ケイス内閣官房長は現在、昨年11月27日と昨年12月18日に首相官邸で開かれたスタッフの集まり、さらに昨年12月10日に教育省で開かれたスタッフの集まりについて、事実関係を調査している。
官房長官によるこの調査は、昨年12月22日に官邸記者会見室で当時の報道官たちが「官邸で開かれたとされるクリスマスパーティーについて」想定問答を練習し、笑いながら回答を準備している様子の動画が報道されたのを受け、ボリス・ジョンソン首相が8日に指示した。
この動画流出を受けて、当時の首相報道官で最近は気候変動対策会議担当の首相顧問だったアレグラ・ストラットン氏が8日、辞任した。
昨年のクリスマスパーティーにつき想定問答で笑う英官邸スタッフ 英ITVが動画入手
昨年12月18日の2日前、ロンドンはコロナ対策の最大警戒区域(ティア3)となり、住民は同居人や支援「バブル」の相手を除き、屋内で他人と集ってはならないと指示されていた。
官邸やジョンソン首相は繰り返し、すべての感染対策ルールを順守していたと説明している。ストラットン氏らの動画が報道された後に下院で首相質問に臨んだジョンソン氏は、昨年12月18日に官邸でクリスマスパーティーはなく、感染対策ルール違反はなかったとあらためて「繰り返し念押しされた」と野党質問に答えた。
一方でジョンソン氏は、ITVが報道した官邸会見室の動画について、国中で大勢が怒っているのも理解するし、自分自身も激怒していると述べ、事実関係の調査を開始するよう指示したと明らかにした。
ただし、現在の官邸広報部長のドイル氏も官邸での集まりに出席していたという報道を受け、最大野党・労働党のアンジェラ・レイナー副党首は、「政府の内部調査など、見せかけだけのごまかしだとあらわになった」と批判。「政府調査は、何を対象にするか明らかにしただけだ。複数のパーティーについてすでに、内閣官房が発表するより、マスコミ報道の方がずっと詳しい」と述べた。
英政界揺るがす官邸クリスマスパーティー問題 笑うスタッフの動画で首相謝罪
公邸修繕費についても調査
ジョンソン首相はこのほか、首相公邸の改修費について、支持者からの献金だったと適正に報告していなかったとの批判も浴びている。
イギリスでは、ダウニング街の首相官邸に隣接する公邸について、年間3万ポンド(約450万円)が修繕・維持費として首相に公費から支給される。これに対して、ジョンソン首相とキャリー夫人は、有名デザイナーに依頼したリフォームに最大20万ポンド(約3000万円)を使ったとされている。
この費用は当初、内閣官房が負担したものの、後に保守党の上院議員、ブラウンロウ卿が党に5万2000ポンド(約780万円)を寄付した。ジョンソン氏は今では修繕費の全額を自己負担したと説明している。
これについて今年5月、首相の倫理顧問ガイト卿は、首相はブラウンロウ卿の寄付について知らされていなかった様子で、利益相反はなかったと結論した。
一方で英選挙管理委員会は9日、首相公邸の修繕に使われた寄付金について「正確に申告しなかった」と、保守党に罰金1万7800ポンドを支払うよう命じている。
野党・労働党は、選管が明らかにした新事実から、首相が倫理顧問のガイト卿にうそをついたことがうかがえると批判している。
ジョンソン氏はさらに、新型コロナウイルスのオミクロン変異株対策として9日に、イングランドで行動制限強化を発表したものの、これに対する与党・保守党内からの造反の動きに直面している。
「プランB」と呼ばれるこの対策強化には、ナイトクラブや大規模集会の出席者はウイルス接種証明や回復証明などを提示しなくてはならないという内容が含まれ、これに数十人の保守党議員が強く反対している。
プランBはさらに、すべての公共の場所でマスクを使うよう要請するほか、可能な人は自宅で働くよう推奨している。