アサンジ被告のアメリカ引き渡し、英高等法院が認める

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2020年1月のジュリアン・アサンジ被告
英高等法院は10日、内部告発サイト「ウィキリークス」創設者ジュリアン・アサンジ被告(50)について、アメリカへの引き渡しを認めると判断を下した。
アサンジ被告については、アメリカ政府がイギリスに身柄引き渡しを求めている。ロンドンのウエストミンスター治安裁判所が今年1月、被告の精神衛生への懸念を理由に、アメリカの要求を退けていた。
上訴したアメリカ政府は、アサンジ被告の引き渡し後も自殺を防ぐための措置をとると約束。公判前も後も独房に入れたり、コロラド州にある最大級の厳重警備刑務所で拘束することもしないと保証した。さらに、有罪となった場合の服役は地元に近いオーストラリアでそれを認めるとした。アメリカはさらに、アサンジ被告の精神状態は、身柄引き渡しを不可能にするほど深刻なものではないと主張した。
高等法院はアメリカの主張を受け入れ、審理をいったんウエストミンスター治安裁判所に戻した。地裁判事がそこから判決を正式に、プリティ・パテル内相に伝えることになる。
BBCのドミニク・カシアーニ内政・法務担当編集委員は、高等法院は今回の判断について、「アメリカ政府がイギリスに対して、拘束者を公平で人道的に扱うと約束した場合、その言葉を疑うべきではない」という判例に沿ったものだと説明している。
アサンジ被告の婚約者ステラ・モリス氏は、アメリカ政府の保証は「本質的に信用できない」として、高等法院の判断を「危険で見当違いだ」と批判。上告する方針を示した。
アメリカ政府は、アサンジ被告が2010年から2011年にかけて米軍データベースに侵入し、アフガニスタン戦争やイラク戦争などに関する大量の機密文書を公表し、多くの人の命を危険にさらしたなどとして、18件の罪状で訴追している。
アサンジ被告の弁護団は、全てで有罪となれば最長175年の禁錮刑を受けるおそれがあるとしている。アメリカ政府は、長くて禁錮4~6年だろうとしている。
ウィキリークスのクリスティン・フラスンソン編集局長は声明で、「ジュリアンの命はまたしても深刻な脅威にさらされている。同様に、政府や企業にとって不都合な資料をジャーナリストが公表する権利も、深刻な脅威にさらされている」とコメント。
「これは、強引な超大国に脅されることなく、自由な報道機関が報道する権利についての問題だ」としている。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、高等法院の判断を「正義をゆがめた茶番」だと非難し、アメリカの保証には「深刻な欠点がある」とした。
アサンジ被告は2012年、性的暴行の容疑をめぐってスウェーデン当局に身柄が引き渡されるのを避けるため、在英エクアドル大使館に逃げ込んだ。スウェーデン当局はその後、捜査を打ち切った。
2019年4月にロンドン警視庁に逮捕され、以来ロンドンのベルマーシュ刑務所で拘束されている。