ベラルーシ、反政府指導者に禁錮18年 大統領選候補の夫

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政権に批判的だったブロガーのチハノフスキ被告は2020年3月、大統領選への立候補を禁じられ、収監された
ベラルーシの裁判所は14日、反政府指導者のセルゲイ・チハノフスキ被告に対し、暴徒を扇動した罪などで禁錮18年を言い渡した。
政権に批判的だったブロガーのチハノフスキ被告は、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領に抗議するデモを組織した。2020年の大統領選で立候補を予定していたが、選挙前に拘束され収監された。
これを受けて、妻のスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏が代わりに大統領選で対立候補となり、勝利を宣言。しかし投票日の翌日には、安全のために子どもを連れて隣国リトアニアへと脱出せざるをえなかった。
チハノフスキ被告をはじめとする野党指導者への判決については、アメリカとドイツも怒りの声を上げている。裁判はでたらめだと批判されている。
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チハノフスカヤ氏はBBCの取材に対し、裁判所の正当性に疑問があると述べ、夫への判決はルカシェンコ大統領による「個人的な報復」に等しいと語った。
ツイッターには、「非公開の裁判で政治犯を隠しながら、ルカシェンコ大統領は静かに弾圧を進めようとしている。でも全世界が見ている。私たちは止まらない」と投稿した。
国営テレビのベルタによると、判決はベラルーシ南東部ゴメルの裁判所で言い渡された。
チハノフスキ被告は今回、集団騒乱を組織した罪、ヘイト(憎悪)を扇動した罪などに問われ、1カ月にわたる非公開の裁判を受けていた。
国営紙ソウェツカヤ・ベラルーシは、チハノフスキ被告と共に裁判を受けた5人の反政府指導者にも、14~16年の禁錮刑が言い渡されたと報じた。
- 退役軍人で野党政治家のミコラ・スタトケヴィチ被告:禁錮14年
- 反体制派のブロガー、イゴール・ロシク被告とウラディミール・チガノヴィチ被告:禁錮15年
- チハノフスキ氏の同僚のアルチョム・サコフ被告とディミトリ・ポポフ被告:禁錮16年
反体制派を弾圧
昨年8月の大統領選挙でルカシェンコ大統領が6期目の当選を宣言して以来、ベラルーシ当局は反体制派を暴力的に弾圧している。
ルカシェンコ大統領は1994年から実権を握っている。昨年の選挙をめぐっては不正があったと言われており、西側諸国はこの結果を認めていない。
ベラルーシ国内では市民による抗議運動が数カ月にわたり続いたものの、当局は野党政治家や活動家を拘束・収監して対応。暴力や拷問が行われている疑惑も出ている。
ルカシェンコ大統領に対して声を上げていた著名人はすべて、国外に脱出しているか、国内で収監されている。
7月には元銀行員の活動家ヴィクトル・ババリコ被告が詐欺罪で、9月には野党指導者のマリア・コレスニコワ被告が権力掌握を企てた罪などで有罪となり、それぞれ禁錮14年と11年の実刑判決を受けた。
ドイツのアナレラ・ベアボック外相は、今回のチハノフスキ被告の判決について、「容認しがたい判決」にショックを受けていると発言。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官や欧州連合(EU)も、ベラルーシ政府による個人の弾圧を非難した。
「政治犯罪ではない」
BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・モスクワ特派員は11月、ルカシェンコ大統領への独占取材で、収監されている政治犯の人数を尋ねた。
これに対しルカシェンコ大統領は、「ベラルーシには政治犯罪はない。この国ではそういった罪では裁かれない。彼らはベラルーシの法律を破った者たちだ」と述べた。
また、コレスニコワ被告は西側の「スパイ」だと証拠を示さずに示唆したうえで、「違法行為」のために収監されていると説明した。
ベラルーシ国内での弾圧を受け、EUは同国に厳しい制裁を科している。11月にベラルーシとEU加盟国のポーランド国境で起きた移民危機についても、ベラルーシ政府による制裁への報復措置だと非難している。
ベラルーシ大統領、移民のポーランド越境「助けたかもしれない」 BBC単独取材