米国の新型ウイルス死者、80万人を超える

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新型ウイルスの死者を象徴する白旗の間を歩く男性
アメリカで新型コロナウイルスの死者が80万人を超えた。世界的パンデミックにおける一国の死者数としては、圧倒的な多さとなっている。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計で明らかになった。
死者の大半は、ワクチン未接種者や高齢者となっている。
80万人という死者数は、ボストンや首都ワシントンなどの都市の人口より多い。第2次世界大戦のアメリカの死者の2倍近い。
直近の11週間で10万人が死亡するなど、このところ昨冬以来の速いペースで再び死者が急増している。
今年の死者数はすでに昨年を上回っている。
ワクチン以降も30万人死亡
アメリカのパンデミック発生以来の感染者は13日、累計5000万人に達した。
ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院で伝染病学を研究するケリ・アルトフ博士は、「目下の感染の波は、集団免疫が感染を防ぐレベルに達するまで続くだろう。率直に言って、私たちはまだその段階に至っていない」と述べた。
アメリカで初の新型ウイルスの死者がワシントン州シアトルで報告されてから、650日以上が経過している(保健当局は後に、この死者より先に死者が出ていたとした)。
国内で初めて認可されたワクチン(ファイザー製)の接種は昨冬始まったが、それ以降も30万人近くが死亡している。
今年4月には、さらに2種類のワクチン(モデルナ製と、1回接種のジョンソン・エンド・ジョンソン製)が認可され、全成人を対象に接種が進められた。
人口比では世界20番目
アメリカに次いで死者が多いのはブラジルで、61万6000人を超えている。インドは47万5000人超で、世界で3番目に多い。
死者数を人口比でみると、アメリカは現在、世界で20番目の多さとなる。南アメリカやヨーロッパの国々の方が、人口比での死者は多い。
下のグラフの各国はイギリスを除き、ワクチン接種の進行で当初、アメリカに遅れを取っていた。しかしその後、接種完了率でアメリカ(61.6%)を追い抜いた。
主な国々の新型ウイルスの死者の報告概数。右側の数字は人口10万人あたり。12月14日現在(出典:米ジョンズ・ホプキンス大学、Gov.ukダッシュボード)
アメリカでは、新型ウイルス感染症COVID-19による死者は、3つの大きな感染の波で増えた。
最初の波は昨年4月にピークを迎えた。ニューヨークの被害が特に甚大だった。その後、夏から秋にかけて感染率は減少した。
しかし昨冬、第2の波が到来した。休暇で旅行や集会が増え、感染者も急激に増えた。ピークは今年1月で、1日の死者が3000人を超えた。
アメリカの1日当たりの死者数の推移(棒グラフ)。実線は7日間平均。今年4月19日に全成人へのワクチン接種が始まった(出典:米ジョンズ・ホプキンス大学、12月13日現在)
今年春にはワクチンが普及し、死者は大きく減った。だが感染力の強いデルタ変異株が広がり、7月ごろから夏にかけて第3波となり、再び急増した。
深刻な影響を受けるのは常に高齢者だ。ワクチン接種率は高いが、パンデミックが始まって以降、65歳以上の100人に1人が死亡している。
ここ数カ月は、死者の大多数をワクチン未接種者が占めている。
アメリカの人口10万人当たりの死者数。上はワクチン未接種者、下はワクチン接種者。全50州のうちの24州の保健当局の報告に基づいている(出典:米疾病対策センター)
ジョー・バイデン米大統領はCOVID-19を、「ワクチン未接種者のパンデミック」と呼ぶようになった。
前出のアルトフ博士は、アメリカには克服すべき「多くの障壁」があるとBBCに話した。
「科学への信頼が薄れ、政府への信頼が弱まり、ワクチンへのためらいが大きく膨らみ、誤情報があふれている」
「教育だけではだめだ。理解する努力が必要だ。それには対話と信頼構築が欠かせない」
アルトフ博士はまた、デルタ株がまだ深刻な問題のままだと述べた。
公衆衛生の専門家たちは、新たなオミクロン変異株がこの冬にもたらす影響について予測を進めている。当局は、過去のワクチン接種の効果が弱まっているとして、国民にブースター(追加)接種を強く呼び掛けている。