ロシア軍がカザフスタン入り、反政府行動の弾圧続く中

Security forces on the streets of Almaty

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アルマトイに出動した治安当局

反政府の抗議行動に対する治安当局の暴力的な弾圧が続くカザフスタンに6日、同国から出動要請を受けていたロシア主導の軍部隊が到着した。

カザフスタンでは、多くの国民が自動車燃料として使う液化石油ガス(LPG)が2倍に値上がりしたのを背景に、2日から国内各地で大規模な反政府デモが続いてきた

政府は6日、燃料価格の上限設定を半年間復活させると発表。しかし抗議行動は収まらず、他の政治的な不満へと抗議の幅は広がっている。

カシム=ジョマルト・トカエフ大統領は5日、国営テレビの演説で、ロシア主導の軍事同盟の集団安全保障条約機構(CSTO)に、抗議行動の鎮圧に向けた支援を要請していた。CSTOはロシア、カザフスタン、ベラルーシ、タジキスタン、アルメニアの各国で構成している。

ロシア国営RIA通信によると、カザフスタンに派遣された外国部隊は兵士2500人規模。CSTOは、カザフスタンの政府や軍の施設を守る平和維持部隊だと説明している。数日から数週間、同国にとどまるという。

米国務省は、ロシア部隊の動きを注視しているとしている。報道官は「アメリカや、率直に言えば世界が、いかなる人権侵害にも目を光らせている」と述べた。

「カザフスタンの国家機関の掌握につながるような、いかなる動きに対しても警戒している」

国連、アメリカ、イギリス、フランスはすべての当事者に対し、暴力をふるわないよう求めている。

最大都市で多数の死者か

カザフスタンの最大都市アルマトイでは6日、機関銃の発砲音が鳴り響いた。

当局は、アルマトイで治安部隊の18人が死亡したとしている。警察は、一晩で数十人の「暴徒」を殺したと説明した。

抗議行動に参加した建設労働者(58)は、治安部隊がデモ参加者たちに発砲しているのを見たと、AFP通信に話した。

「人々が死ぬのを見た。いきなり10人くらいが殺された」

カザフスタン内務省は、抗議参加者2298人が拘束されたとしている。保健省によると、混乱による負傷者は約1000人に上っているという。

大統領公邸も焼ける

カザフスタンは専制国家とみなされることが多い。ほとんどの選挙は与党が勝利し、投票率は100%近くに上る。影響力のある野党は存在しない。

トカエフ大統領は現在の混乱について、証拠を示さずに、外国で訓練を受けた「テロリスト」の仕業だと述べている。

アルマトイにある大統領公邸と市長庁舎では6日、炎が上がった。国内最大の空港は抗議参加者2が占領していたが、軍が掌握した。

前日5日には、トカエフ氏は内閣の総辞職を命じ、反政府デモを鎮静化しようとした。さらに、国家安全保障会議の議長として強大な権力を握っていたヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領を解任した。

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<解説>焼けたビルと長い列――アブドゥジャリル・アブドゥラスロフ、BBCニュース(アルマトイ)

アルマトイの活気あふれる広場が紛争地帯に変わった。建物や自動車が焼けてしまっている。多くの人が外に出ることを恐れている。衝突が続いているので、特に夜間はそうだ。発砲と爆発の音がするたび、外出がいかに危険な行為かを思い知らされる。

アルマトイ周辺の村々では、集落の入り口に自警団が立ち、略奪を防いでいる。アルマトイの入り口には、検問所と急ごしらえのフェンスが作られている。そのため人々は、細い道を通って同市に出入りしている。

ガソリンスタンドには長い列ができている。住民たちは食料を買うのに苦労している。ショッピングモールやスーパー、カフェ、レストランなどはすべて閉店し、小さな商店だけが営業を続けているからだ。インターネットは遮断されたままだ。そのため預金を引き出せず、電話機にチャージすることもできない。

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カザフスタンの基本情報

地理:北はロシア、東は中国と接している。面積は広大で、西ヨーロッパ全体に相当する。中央アジアの他の旧ソビエト連邦構成国よりはるかに大きい

重要性:豊富な鉱物資源を有する。原油は世界の埋蔵量の3%を持ち、石炭やガスでも重要な国となっている。イスラム教が主流の共和国で、ロシア少数民族が多い。中央アジアの他の国でみられるような内乱はほぼ起きていない

ニュース性:燃料をめぐる暴動が政府を揺るがしている。内閣が総辞職し、抗議行動を治安当局が暴力で抑え込む流血の事態となっている

Map of Kazakhstan and neighbours
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カザフスタン(KAZAKHSTAN)と最大都市アルマトイ(Almaty)