英文化相、BBCの受信料制度廃止を示唆 

Nadine Dorries

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ナディーン・ドリス英文化相

英政府のデジタル・文化・メディア・スポーツ相は16日、BBCの視聴契約料(受信料に相当)について次回の発表が最後になるとツイートした。「素晴らしいイギリスのコンテンツ」を売るための新しい方法を話し合う時期だとして、受信料制度にもとづく公共放送のあり方を大きく変更する方針を示唆した。

ナディーン・ドリス文化相はツイッターで、「これが受信料に関する最後の発表になる。(受信料不払いを理由に)高齢者が刑務所行きだと脅されたり、執行人が扉をたたいたりする日々はもう終わりだ」として、「素晴らしいイギリスのコンテンツに予算をつけて支援して、販売するための、新しい方法を話し合い議論するべき時だ」と書いた。

文化相の発言に加えて一部の未確認報道によると、ボリス・ジョンソン政権は年間159ポンド(約2万5000円)の受信料を今後2年間、凍結する方針という。

BBC関係者は、受信料に関するこうした憶測は初めてではないとしている。

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受信料凍結の可能性

現在の受信料制度は、BBCが政府と取り決めるロイヤル・チャーター(王室認可)にもとづくもので、少なくとも2027年12月31日までその存続が保証されている。BBCのロイヤル・チャーターとは、公共放送BBCの憲政上の根拠で、 BBCの目的と使命および公共における役割を定めるもの。現在の認可は2017年1月1日から2027年12月31日まで継続する。

BBCの財源もロイヤル・チャーターによって定められており、これにもとづき政府は年間の受信料額を決定する。政府は2016年の時点で、2017年4月から5年間、物価上昇率に合わせて受信料の値上げを認めるとしていた。

BBCの番組やサービスは主に受信料収入をもとに製作されている。主に受信料で作られているものには、テレビ・ラジオ番組、ウェブサイト(日本語版など一部を除く)、ポッドキャスト、イギリス国内限定の番組オンデマンドサービス「iPlayer」、各種アプリなどが含まれる。

かねて続く受信料交渉

BBCの将来的な予算措置についてはこれまでも、政府とBBC幹部の間で長い交渉が続いており、受信料凍結については昨年10月に話し合われていた。

政府関係者も、受信料をめぐるBBCと政府の交渉が継続していることを、今回あらためて認めている。政府筋によると、文化相は、国民が経済的に圧迫されていると理解しているため、今回の発言をしたのだという。低所得世帯や年金生活者にとってBBC受信料の支払いは「重大な負担」で、放送行政を所管する文化相にとって受信料は直接影響を及ぼせるものなので、ドリス氏はそこにテコ入れをしようとしているのだという。

BBC関係者は受信料凍結について、「もう何年も予算削減を繰り返した揚げ句、受信料をインフレ率より低く抑えたりすれば、BBCの財政は受け入れがたく圧迫されることになる」と述べた。

BBC関係者はさらに、「BBCがイギリス国民と、イギリスや世界各地の創造産業のために何ができるかを思えば、そこに投資するのは非常に理にかなっている」と話した。

ネットフリックスとの競争求める

昨年9月に文化相に就任したドリス氏は、BBCは存続すべきだが、米ネットフリックスや米アマゾン・プライムなどの動画配信大手と競合できるようになる必要があると話していた。

昨年10月の保守党大会でドリス氏は、BBCが「集団思考」に陥っており、イギリス全体を代表するからには「本格的な変化」が必要だと述べていた。

ドリス氏はBBCが「世界を先導する光」だとしながらも、BBCで長年働き幹部職に上り詰める人のほとんどは同じような生まれ育ちで、特定の政治的偏向をもち、似たような話し方や考え方をするという持論を展開していた。

一方、最大野党・労働党のルーシー・パウエル影の文化相は、ジョンソン首相とドリス文化相が「(BBCの)報道内容が気に食わないからと、イギリスを代表するこの偉大な組織を、何が何でも攻撃しようとしている」と非難した。

「イギリスのテレビ放送やこの国の創造産業は世界的に有名で、世界展開するイギリスの中心に置かれるべきだ」と、パウエル氏は述べた。

野党・自由民主党の文化担当スポークスマン、ジェイミー・ストーン氏は、受信料凍結は「20億ポンドに近い額をひっそり削減」するのと同じで、BBCのさまざまな事業内容が危険にさらされると指摘。「政府はイデオロギーにもとづくこの無謀な戦いをやめて、私たちのBBCに手出しするのをやめる必要がある」と述べた。

75歳以上の受信料

イギリス国内の75歳以上の人は2020年までは、テレビ受信料を払う必要がなかったが、2020年からは、高齢低所得者に向けた最低保障給付制度の「年金クレジット」を受給している人に限り、受信料が免除されるようになった。その分の金額はBBCが負担している。

2020年までは高齢者の受信料は政府が肩代わりしていた。しかし2019年にジョンソン首相が、75歳以上の受信料はBBCが全額負担すべきだと主張。これに対してBBCは、そのようなことになれば「前例のない」大規模な事業停止を余儀なくされると反論した。

テレビ受信料そのものの不払いは、実刑が伴う違反行為ではない。ただし政府は、受信料を払わなかった結果、有罪となり、他の一切の手段でも徴収できなかった場合、「最終手段」として実刑もあり得るとしている。

政府はかつて受信料不払いに対する刑事罰の廃止を検討していたものの、昨年になって検討をいったん中止した。ただし、「検討は継続する」としていた。

<分析> アモル・ラジャン、メディア担当編集長

BBCは今年、創立100周年を迎える。そして時を同じくしてイギリス政府は公式に、BBCの財源を確保する最善の方法は受信料ではないという立場を明示した。

ドリス文化相はBBCの存在に反対しているわけではない。しかし、テレビ受信機を設置している全世帯の受信料支払い義務に、今や正式に反対している。この制度は特に高齢者など、社会的弱者に刑事罰を与えかねないものだというのが、ドリス氏の主張だ。

これに対して、受信料制度を擁護する人たちは、これが最も悪くない仕組みなのだと言う。さらに、ネットフリックス式の有料契約方式では、BBCは普遍的な内容を提供するのではなく、有料加入者のための内容を作らざるを得なくなると懸念する。

文化相の今回の発言に先立ち、イギリス政府とBBCはもう長年にわたり、将来的に財源をどのように確保すべきか、交渉を続けてきた。

BBCが2027年以降の予算をどう得るのか、実際の交渉はまだ数年先だ。

ドリス氏はツイッターで、英日曜紙メール・オン・サンデーの記事リンクをツイートした。記事は、国民の多くが生活費の確保に苦しむ中、受信料は現在の年159ポンドで今後2年間凍結されると示唆する内容だった。この凍結措置が実施されれば、数億ポンドに相当する予算削減になる。

BBCはさらに、アメリカのアマゾンやアップルといった動画配信大手から、資金面でも創造面でも、たえまない競争にさらされている。

若者がBBCのコンテンツに代金を払いたいと思うよう、BBCは若者を説得できるか。BBCの未来はそこにかかっている。