ロシア国防省、黒海艦隊の旗艦モスクワが沈没と発表

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シリア沖をパトロールするロシアのミサイル巡洋艦モスクワ(資料写真)
ロシア国防省は14日夜、黒海艦隊の旗艦モスクワが沈没したと発表した。港へ曳航(えいこう)中に、「荒れた海」が原因で沈んだという。
巡洋艦モスクワについて、ウクライナはミサイル攻撃したと発表していた。ロシア側はこれに対し、艦内で火災が発生し弾薬が爆発したたため、「艦体が重大な損傷を被った」と説明していた。ロシアによると、乗組員は全員、付近のロシア艦に退避したという。
タス通信は14日夜、国防省の発表として、「(巡洋艦モスクワは)目指す港へ曳航中、艦体の損傷が原因でバランスを失った。波が荒れていたため、艦は沈んだ」と伝えた。
全長186.4メートル、乗員最大510人、排水量1万2490トンの「モスクワ」は、ロシアの軍事力の象徴で、ウクライナ侵攻では海からの攻撃の中心を担っていた。
ウクライナの攻撃で撃沈したことが確認されれば、第2次世界大戦後に敵の攻撃で沈没した最大の軍艦ということになる。
ロシアがウクライナ侵攻開始後、海軍艦を失うのは2隻目。南東部ベルジャンスクで3月24日には、大型揚陸艦サラトフがウクライナの攻撃で撃沈した。
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ロシアは、巡洋艦モスクワ沈没の原因が、ウクライナのミサイル攻撃によるものとは認めていない。
しかし、アメリカのイラク駐留多国籍軍司令官、中央軍司令官、アフガニスタン駐留多国籍軍司令官などを歴任したデイヴィッド・ペトレイアス元中央情報局(CIA)長官はBBCに対して、ロシア政府が黒海艦隊旗艦の沈没を認めたことは、「珍しい真実の瞬間」だと話した。「(ロシアが)認めたことに驚いている」と、ペトレイアス氏は述べた。
侵攻開始直後からの因縁
ウクライナ軍は、ウクライナ製の対艦ミサイル「ネプチューン」で「モスクワ」を攻撃したと説明していた。「ネプチューン」はロシアによる2014年のクリミア半島併合後、黒海からの海の脅威が増したことを受け、ウクライナ国内で開発したミサイルという。
巡洋艦モスクワは、1980年代前半に当時のソヴィエト連邦によって、現ウクライナの南東部ミコライウで建造された。ミコライウは侵攻開始以来、ロシアによる激しい攻撃を受けている。
巡洋艦モスクワは以前は、シリア内戦に軍事介入したロシア軍を海から援護した。複数の対艦ミサイル、対潜水艦兵器、魚雷などを備えていたとされる。
黒海のスネーク島に駐留するウクライナ部隊は2月24日の軍事侵攻開始直後、巡洋艦モスクワによって、投降するよう指示された。しかしそれを無視し、「ロシア軍艦、くたばれ」と言い返していた。このことからも、巡洋艦モスクワはウクライナ国内でも注目され、発行された記念切手は人気を集めていた。

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巡洋艦モスクワに「くたばれ」と抵抗した国境警備隊員を描いたウクライナの記念切手

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「モスクワ」に抵抗する警備隊員を描いた記念切手を求めて行列する首都キーウの人たち
巡洋艦モスクワ沈没の知らせを受け、首都キーウ市内の郵便局本局では多くの市民が行列し、記念切手を買い求めた。
切手は、開戦当初に「モスクワ」の警告に中指を立てて、「くたばれ」と抵抗したロマン・グリボフ警備隊員を描いたもの。
ゼレンスキー大統領は戦争開始50日の演説

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戦争開始50日の演説を国民に向けて行うゼレンスキー大統領
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日深夜、国民へ向けた定例の演説で、ロシアの軍事侵攻開始から50日だとして、「最も勇敢な国の不屈の人たち、私たちはすでに50日も耐えてきた。侵略者は我々が長くても5日しかもたないだろうと高をくくっていたが、私たちは50日間もロシアの侵略に耐え抜いた」と述べた。
ロシア黒海艦隊の旗艦が沈没したことについて、演説でことさらに触れることはなかったものの、「ロシアの軍艦は海の底へ向かうしかできないと示した」ウクライナ軍をたたえた。