トルコの大統領、北欧2カ国のNATO加盟に難色
ヤロスラヴ・ルコフ、マット・マーフィー、BBCニュース

画像提供, Reuters
軍事演習に臨むスウェーデン軍兵士ら(3月)。同国のアンデション首相は、「スウェーデンはNATOを強くする」と述べた
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は16日、フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟への反対を改めて表明した。両国が加盟を申請すると明らかにしてから、わずか数時間後のことだった。
NATO加盟国のトルコは、フィンランドとスウェーデンの加盟の可否をめぐって鍵を握っている。エルドアン氏は、スカンジナビア半島に位置する両国に対し、トルコを説得するために代表団を派遣する必要はないと述べた。
同氏は両国について、クルド人武装勢力を積極的に受け入れているとして、怒りを抱えている。
スウェーデンはエルドアン氏の発言に先立ち、ロシアによるウクライナ侵攻に言及しながら、ヨーロッパは危険な新しい現実を生きていると述べた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、30カ国で構成する軍事同盟NATOにフィンランドとスウェーデンが参加する動きは、ロシアを直接脅かすものではないと話した。ただ、軍事インフラの拡張は、ロシアの対応を呼ぶことになると強調した。
不信感をあらわに
エルドアン氏はこの日の記者会見で、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請に反対だと表明。スウェーデンをテロ組織の「温床」と呼んだ。
さらに、「どちらの国も、テロ組織に対する態度を明確にせず、公表もしていない。どうすれば信用できるというのか」と述べた。
トルコは北欧の両国に対し、トルコがテロ組織とみなすクルド労働者党(PKK)のメンバーや、イスラム指導者フェトフッラー・ギュレン師の信奉者をかくまっていると非難している。トルコは同氏を、2016年のクーデター未遂の画策者だとしている。
エルドアン氏はまた、トルコに制裁を科した国によるNATO加盟申請を阻止すると宣言している。
フィンランドとスウェーデンは2019年、トルコがシリアに侵攻したことを受け、トルコに武器禁輸措置を講じた。
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「スウェーデンはNATOを強化」
スウェーデンは16日、NATOへの加盟方針の決定を正式に発表した。同国の2世紀にわたる軍事的非同盟を終わらせる動きとなる。
マグダレナ・アンデション首相は、ストックホルムでの記者会見で、「NATOはスウェーデンを強くし、スウェーデンはNATOを強くする」と述べた。
また、ロシアによるウクライナ侵攻をふまえ、ヨーロッパは現在、危険な新しい現実を生きていると述べた。
スウェーデンの隣国フィンランドは先週、NATO加盟を目指すと表明した。ロシアは両国の発表を批判している。
恒久基地や核兵器には反対
16日のスウェーデン議会で、アンデション首相は、「私たちは一つの時代を後にし、新しい時代に入ろうとしている」と述べた。
また、正式な加盟申請は数日以内に、フィンランドと同時になされるだろうと述べた。NATOは両国の加盟に前向きな意向を示している。
一方でアンデション氏は、スウェーデンの領土内にNATOの恒久基地や核兵器を置くことは望まないと強調した。
NATO加盟国のノルウェー、デンマーク、アイスランドは、スウェーデンとフィンランドが攻撃を受ければあらゆる手段で支援する用意があると、即座に表明した。
同じく加盟国のイギリスはすでに、スウェーデンとフィンランドに対し、加盟までの移行期間も対象とした安全保障を与えている。
NATOは16日、バルト海地域で最大規模の演習をエストニアで開始した。「ヘッジホッグ」(ハリネズミ)と名付けられたこの訓練には、フィンランドとスウェーデンを含む10カ国、兵士約1万5000人が参加している。

<分析> ポール・アダムス外交担当編集委員
フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するには、現在の加盟国30カ国がすべて賛成する必要がある。しかし今のところ、1カ国が反対を表明している。
トルコのエルドアン大統領は、同国に制裁を科す国は承認しないとしている。
スウェーデンは3年前、トルコによるシリアへの軍事介入を受け、トルコへの武器売却を停止した。また、トルコの政府系通信社によると、フィンランドとスウェーデンは、トルコがテロリストと見なすクルド人武装勢力の身柄引き渡し要請を、何十回も拒否している。
両国はこの問題を解決するため、代表団をアンカラに派遣している。しかしエルドアン氏は、その必要はないと言っている。
同氏は、貴重な1票の価値をできるだけ引き出す決意だと思われる。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は15日、トルコが反対しているにもかかわらず、フィンランドとスウェーデン両国の加盟を確信していると述べた。
ブリンケン氏とトルコ外相が米ワシントンで18日に会談する際、この問題が議題の中心となるだろう。北欧2カ国に加盟を勧めたアメリカは、土壇場になってそれらの国をがっかりさせたくはないはずだ。

ロシアと長い国境を接するフィンランドと、その隣国スウェーデンが、NATOへの加盟申請を決定している