ウクライナ東部で攻撃が激化 「現実受け入れよ」とロシア報道官

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東部ドンバス地方の都市セヴェロドネツクでは、何千人もの民間人が身動きが取れなくなっているとされる
ウクライナでは26日、侵攻中のロシア軍による東部ドンバス地方への攻撃が激化した。北東部の都市ハルキウも爆撃して多数の死傷者を出すなど、ロシア軍は各地で同時進行的に攻勢を強めている。ウクライナは、戦況は厳しいとの見方を示し、西側諸国に兵器供与を求めている。
ウクライナのハンナ・マリャル国防次官によると、ドンバス地方の都市セヴェロドネツクとリシチャンスクで、ロシア軍による猛烈な砲撃があった。ロシア軍の攻撃は「エスカレートしている」という。
ドミトロ・クレバ外相は、ツイッターに寄せられた質問に答える形で、東部の状況は人々が思っているよりひどいと説明。追加の兵器を強く必要としているとして、こう訴えた。
「もしウクライナを本当に心配するなら、兵器、兵器、兵器を改めてお願いする」
「大砲なしでは、多連装ロケット砲なしでは、ロシア軍を押し返せない。ウクライナのことを本当に思うなら、ウクライナに領土を取り戻させたいなら、一刻も早く多連装ロケット砲を送ってほしい」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナの首都キーウと第2の都市ハルキウの占領を中止し、ロシア語を話す住民が多い東部での軍事的勝利を目指している。東部ではウクライナによる集団虐殺があったと、プーチン氏は偽って非難している。
プーチン氏にとって、ドンバスでの目標達成は、軍事作戦を終了させ、成功をアピールするための最低条件となっている。
ウクライナによれば、ドンバスでの戦いは、第2次世界大戦以降のヨーロッパにおける地上戦としては最大のものだという。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が「領土の1センチも渡さずに戦う」と宣言している。
ハルキウでは25人死傷
一方、北東部の大都市ハルキウでは、爆撃によって生後5カ月の赤ちゃん1人を含む8人が死亡、子ども1人を含む17人がけがを負った。ウクライナのイーホル・クリメンコ国家警察長官が、フェイスブックで明らかにした。
南部ミコライウ州でも、ロシアの砲撃によって2人が死亡したと、現地の軍当局が明らかにした。商店や住宅などが攻撃を受けたという。
キーウで取材に応じたマリャル国防次官は、この先の戦況は「極めて厳しい」とし、ウクライナ側の犠牲者は「避けられない」と述べた。ただ、いかなる譲歩もしない考えを示した。
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「現実を受け入れよ」とロシア報道官
こうした中、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「現場の現実」を受け入れるようウクライナに求めた。ロシアが侵攻によって南部などを占領していることを指すとみられる。
一方、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ウクライナのザポリッジャ原子力発電所をロシア軍が押さえたと明らかにした。核燃料と核物質の保護が目的だとし、軍の行動の正当性を主張した。
欧州最大の同原発は、ウクライナで原子力発電の半分以上を担い、電力供給全体の2割を生み出している。
ロシア軍は3月3日に同原発を砲撃し、のちに占拠した。現在、原子炉6基のうち2基だけ稼働している。
他方、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナの港湾が封鎖され穀物などが輸出できず、食料危機が起きている状況について、緩和に向けて「大きな貢献」をする用意があると述べた。ただ、西側各国による対ロシア制裁の解除が条件だとした。
ウクライナでは、穀物2000万トンが輸出できなくなっているとされる。
ウクライナの倉庫に出荷できない小麦の山、農家の目に涙 食料危機の懸念
ロシア外相、西側の兵器提供に警告
ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は、西側諸国がウクライナに、ロシアを射程範囲とする兵器を提供することについて、「受け入れ難いエスカレーション」につながると警告した。
ロシアのタス通信が、RTアラビア語によるラヴロフ氏へのインタビューを引用して伝えた。
それによると、ラヴロフ氏は、「西側は戦場でロシアを倒すことを求めており、そのために必要なのは(中略)ロシア連邦に届く兵器などをウクライナの民族主義者、ウクライナの政権に提供することだ」と述べた。
そして、「私たちは西側諸国に対し、すでに実際にはロシア連邦を相手とする代理戦争を仕掛けていると真剣に警告した。(中略)これは受け入れ難いエスカレーションへの重大な一歩となるだろう」とした。
戦争犯罪で1万件以上捜査
ウクライナのイリナ・ウェネディクトワ検事総長は、ロシア軍による戦争犯罪の疑いで捜査している事案が約1万4000件に上っていると明らかにした。
また、ウクライナ国内の1000以上の医療および教育施設が、侵攻によって破壊されたと付け加えた。
一方、ウクライナにおける2例目の戦争犯罪裁判が26日開かれ、ロシア兵の捕虜2人が有罪を認めた。
WHOでロシア非難決議
世界保健機関(WHO)の総会が26日あり、ロシアによる「医療施設に対する攻撃を含む、ウクライナへの軍事侵略」を非難する決議案が採択された。
決議案は欧米各国が支持。賛成88カ国、反対12カ国、棄権53カ国で可決された。
ロシアも、ウクライナ危機に関して自国の役割にまったく言及しない決議案を出したが、否決された。
WHOによると、ロシアがウクライナに侵攻して以来、医療施設、輸送機関、人員、患者、物資、倉庫など、医療が被害を受けた攻撃は256件報告されている。