アジアで銀行株下落、クレディ・スイスの資金調達めぐり動揺広がる

画像提供, Reuters
アジアの株式市場では16日、銀行株が大きく下落した。スイスの大手行クレディ・スイスの資金調達が、さらに大きな金融危機を招くとの懸念が広がっている。
日本や香港、オーストラリアの主要指標は軒並み1%以上下がった。
日本の日経平均株価指数は、16日午前の取引で前日比1.1%下落。午後はマイナス0.8%で終了した。今週初めに過去3年で最低水準に落ち込んでいた東証株価指数(TOPIX)も、4%以上下落した。
大手行の三菱UFJフィナンシャルグループと住友三井フィナンシャルグループの株価は、共に3%弱落ち込んだ。
香港とシドニーの株価指数は共に1.5%、上海総合指数は0.5%下がっている。
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クレディ・スイスの株価急落
1856年創業のクレディ・スイスは近年、マネーロンダリング(資金洗浄)で有罪判決を受けるなど、相次ぐ不祥事に直面している。
2021年と2022年には、2008年の金融危機以来で最悪の損失を計上し、2024年まで黒字になる見込みはないと警告している。
クレディ・スイスが財務報告に「弱点」が見つかったと発表すると、同行の株価は15日、24%急落して過去最低を記録した。
同行は翌16日、財政強化のためにスイス国立銀行(SNB、中央銀行)から最大500億スイスフラン(約7兆1000億円)を借り入れると発表している。
金融セクターにおける問題は先週、アメリカで16番目に大きな銀行だったシリコンヴァレー・バンク(SVB)の破綻から始まった。
テクノロジー企業への融資を専門としていたSVBは10日、規制当局に資産を差し押さえられ、閉鎖された。アメリカの銀行としては、2008年の金融危機以来で最大の経営破綻となった。SVBの英国部門は英最大の投資銀行HSBCに1ポンドで買収された。
12日には、ニューヨーク州に拠点を置く米シグネチャー・バンクも破綻。米規制当局が両行の全預金を保証することとなった。
慶応大学の経済学者の白井さゆり教授は、小規模の銀行の問題がクレディ・スイスの問題を「増幅」させていると指摘した。
「投資家や債権者らはリスクを懸念している。銀行は資金調達に苦慮し、それがさらに、世界の中小企業やベンチャー企業の資金調達コストに影響を与える可能性がある」
一方、SPIアセット・マネジメントのマネージングパートナー、スティーヴン・イネス氏は、「アメリカを中心とした出来事が過去のものになれば、市場は急速に正常な状態に戻る可能性がある。アジアでは銀行の資本力が非常に高いため、現段階では広い範囲に影響が波及する恐れは限定的だ」と述べた。