大型サイクロン「モカ」の死者、ミャンマーで多数 被害全容は不明

ケリー・アン、ジョエル・グイント、BBCビルマ語(BBCニュース)

Cyclone Mocha damage in Sittwe, Rakhine Myanmar

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ミャンマー西部ラカイン州ではサイクロン「モカ」によって木々が鉄塔が倒れるなどした

強力なサイクロン「モカ」が14日に上陸したミャンマーで、死者が少なくとも40人に上っていると、現地住民らがBBCに話した。死者数はさらに増える恐れがある。

モカは最大風速が時速約209キロメートルに達した。今世紀に東南アジアに上陸したサイクロンで最大規模とされる。

死者の大半はミャンマー中部ラカイン州で確認された。ザガイン、マグウェ両管区でも死者が出たもようだ。

軍は全国で死者21人が出たと発表した。

ただ、未確認情報によると死者はもっと多い。国内難民となっている少数民族ロヒンギャが暮らすキャンプで、特に多くの死者が出ているとされる。2021年のクーデターで政権を握った現在の軍事政権は、これら難民を死者として数えていないとみられる。

被災地では何百軒もの住宅とシェルターが倒壊した。通信状態が悪く、行方不明者も多いため、死者数についてはさまざまな推測が出ている。

ラカイン州の州都シットウェでは、根こそぎ倒れた木や倒壊した送電鉄塔で道路がふさがれている。同市では低地の沿岸部に住居が集中していた。

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倒壊した建物のそばを歩く女性

別の地域では、暴風雨の後に軍が住民らを襲ったとの話も出ている。

北西部のサガイン管区では、サイクロンに紛れて軍が村々に入り込んだため、住民数千人が自宅から逃げ出したとされる。

同管区カニ郡の住民はBBCに、「5月12日から雨が続き、小川があふれたので逃げた」、「兵士たちが殴りかかってきた。(住民たちは)嵐より兵士らの危険の方を恐れている」と話した。

BBCが取材した現地住民らは、この2日間でカニ郡とキン・オー郡からの住民約1万5000人が、軍の襲撃の影響を受けたと推定。インパという村では4歳男児が銃弾を受け、治療を受けていると話した。

被災したラカイン州で活動するNGO「パートナーズ・リリーフ&デベロップメント」は16日、「ミャンマーはいくつもの嵐に直面している。サイクロン『モカ』がラカイン州に到来するなか、ミャンマー軍は他の地域の村々を襲ったと報じられている。家族らに必要な支援は引き続き大きい」とツイートした。

ザガイン管区の各コミュニティーは、軍に対する敵対心が非常に強い。人民防衛軍(PDF)と呼ばれる反クーデター派の民兵も多数暮らしている。

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倒れた木を取り除く少数民族ロヒンギャの村の少女

一方、ミャンマーの隣国バングラデシュでは、これまでにモカによる死者は報告されていない。しかし、最強の「カテゴリー5」に分類されたサイクロンの暴風雨は、同国にある世界最大の難民キャンプ「コックスバザール」で数千のシェルターを吹き飛ばした。このキャンプには、ミャンマーから逃れてきたロヒンギャ難民約100万人が暮らしている。

モカの上陸前には約75万人が低地から避難した。ミャンマーでは15年前、サイクロン「ナルギス」がイラワジデルタに到来。14万人が死亡する、アジア最大規模のサイクロン被害を出した。

サイクロンは、大西洋の「ハリケーン」や太平洋の「台風」に当たる。科学者らは、気候変動の影響でこれらの嵐は大きさと回数を増しているとしている。