「殴るくらいなら撃ち殺してくれ」 カシミール住民がインド軍の拷問を訴え

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サミール・ハシュミ、BBCニュース(カシミール)

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Image caption ジャンムー・カシミール州スリナガルに配備された治安部隊

インドが実効支配するジャンムー・カシミール州の自治権剥奪をめぐり、同州の住民がインド軍から暴行や拷問を受けていると主張していることが分かった。

複数の住民がBBCに対し、けがの痕を見せ、棒で叩かれたり電気ショックを与えられたと証言した。BBCは、この訴えが事実かどうか、インド当局から確認を得ることはできなかった。

インド軍は、「事実無根で、根も葉もないもの」だと主張している。

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州の閉鎖、通信手段の停止

ジャンムー・カシミール州に70年にわたり、独自の立法・行政・司法制度といった一定の自治性を認めてきた憲法370条が廃止された5日以降、同州には前例のない制限が課されている。

3週間以上にわたり州が閉鎖され、通信手段が停止された影響で情報は少しずつしか伝わってこない。

同州には、何万もの軍隊が追加配備された。さらに、地元の政治指導者や実業家、活動家を含む約3000人が拘束されていると報じられている。その多くは、州外の刑務所にすでに移送されている。

当局は、こうした動きは、この地域での法と秩序を維持することを目的とした先制措置だとしている。

人口の大半をイスラム教徒が占めるジャンムー・カシミール州は、現在では、インド連邦政府管轄下の2つの小さな領地に分割されている。

分離主義者との争い

インド軍は、過去30年以上にわたり、インドからの独立またはパキスタンへの編入を求める分離主義者との争いを続けている。

インドは、パキスタンが過激派を支援し、同地域での暴力行為を扇動していると非難している。カシミール地方の一部を実効支配するパキスタン側は、この訴えを否定している。

インド国内の多くの人は、憲法370条の廃止を歓迎し、「大胆な」決断を下したとして、ナレンドラ・モディ首相を称賛している。自治権廃止措置は、主流メディアからも幅広い支持を得ている。

警告: 以下の記事 には、一部の読者 が動揺するかもしれない 内容が含まれています

インド軍による夜襲や拷問

過去数年で反インド闘争の中心地となった同州南部を私は訪れ、少なくとも6つの村に足を運んだ。そのすべての村の複数住民から、インド軍による夜襲や暴行、拷問行為といった、同様の証言を得た。

医師や保険当局は、症状に関わらず、患者についてジャーナリストに話すことを嫌う。しかし、複数の村民は、治安部隊から受けたというけがを私に見せてくれた。

住民の話によると、ひとつの村では、数十年にわたるインドとカシミールの取り決めを覆すこととなった、憲法370条廃止の決定からわずか数時間後に、インド軍が家から家へと回っていたという。

あるきょうだい2人は、眠っていたところを起こされ、屋外へ連れ出されたと話した。そこには、村の男性12人ほどが集められていたという。私たちが話を聞いた全員がそうだったように、きょうだいは報復を恐れ、身元を明かすことはなかった。

「あいつらは、私たちをめった打ちにした。『私たちが一体何をしたというんだ。私たちがうそをついたのか、何か悪いことをしたのか、村の人たちに聞けばいい』と訴えたが、あいつらは耳を貸さなかったし、何も言わずに私たちを殴り続けた」

「やつらは、私の体中を殴った。私たちを蹴り、棒で叩き、電気ショックを与え、ケーブルで打った。脚の後ろを叩いた。気絶すると、意識を取り戻させるために電気ショックを与えてきた。棒で叩かれて叫ぶと、泥で口をふさがれた。自分たちは無実だと訴えた。なんでこんなことをするのか尋ねたけど、話を聞いてくれなかった。殴るな、殴るくらいなら撃って殺せと訴えた。神に、命を奪ってくれと懇願していた。拷問に耐えられなかったので」

2時間近く拷問、意識失うと電気ショック

別の若い男性は、治安部隊から、「投石した人物の名前」を言うよう求められたと証言した。これは、過去10年間で住民による抗議の「顔」となった、主に若い男性や十代の少年のことを指している。

この男性が兵士に対し、誰も知らないと告げると、めがねや服、靴を脱ぐよう命じられたという。

「服を脱ぐと、鞭や棒で容赦なく叩かれた。2時間近くも。意識を失うと、電気ショックをかけられた。もしまた同じことをされたら、私は何でもする。銃を手にする。こんなこと毎日は耐えられない」

兵士は、男性に対し、軍への抗議行動に参加した者は、同じような目に遭うだろうと、村人全員に警告するよう言ってきたという。

我々が話を聞いた男性は全員、村人を脅して、恐怖で抗議できなくなるようにするため、治安部隊がこうした行為を働いたと考えている。

インド軍は拷問を否定

インド軍は、BBCに宛てた声明で、「訴えにあるような、民間人を乱暴に扱った事実はない」と反論した。

インド軍報道官のアマン・アナンド大佐は、「この手の詳しい訴えは、私たちに通達されていない。こうした訴えは、悪意のある者たちによるものだろう」と述べた。

アナンド氏は、民間人を保護するための措置を講じているとし、「軍の対抗策による死傷者は出ていない」と付け加えた。

Video caption 「自治権」廃止に、州の封鎖……ショックと不安を抱えるカシミール住民の声

「板ばさみ」のカシミール人

我々は、分離主義の過激派グループに共感するいくつかの村を車で回った。そこでは分離主義グループのことを、「自由を求めて闘う人」と呼んでいる。

カシミールのこの地区では今年2月、40人以上が死亡した、インド察隊を狙った自爆攻撃が発生し、インドとパキスタンを戦争寸前まで追い込んだ。2016年にインド軍と反乱軍の戦闘が起きた際に、カシミールの過激派指導者ブルハン・ワニ氏が殺害され、多くの若者やカシミール人がインドに対する反乱に加わったのも、この地域だ。

この地域には軍の駐屯地があり、分離主義者やシンパを追跡するために、兵士が定期的に捜索を行っている。村人は、よくこれに巻き込まれてしまうと話す。

Video caption 【3分解説】 印パのカシミール紛争とは 核保有国同士の争い

「動物のように殴られる」

ある村で、私は20台の男性に出会った。男性は、過激派に関する情報提供者にならないのであれば、濡れ衣を着せると、軍から脅しを受けたという。拒否すると、ひどく殴られ、2週間たっても仰向けになれなかったという。

「こういうことが続くなら、家を出る以外に選択肢はないだろう。軍は、私たちを動物のように殴ってくる。人間だと思われていない」

地面に押しつけられ

けがの痕を我々に見せてくれた別の男性は、地面に押しつけられ、「15、6人の兵士」から「ケーブルや銃、棒、鉄の棒とみられるもの」で激しく叩かれたと述べた。

「ほとんど意識不明だった。歯が抜けると思うほど、強くひげを引っ張られた」

男性はその後、暴行を目撃していた少年から、兵士の1人がひげに火をつけようとしたものの、別の兵士がこれを制止したのだと聞かされた。

手足を縛られ、逆さ吊りに

別の村では、私は若い男性と出会った。きょうだいが2年前、カシミールでのインドの支配をめぐり闘争を繰り広げる大規模な反政府組織の1つ、ヒズブル・ムジャヒディンに加わったという。

この男性は、最近、軍の駐屯地で取り調べを受けた際に、拷問を受けて脚を骨折したと証言した。

「両手両足を縛られ、逆さまに吊り下げられた。2時間以上、ひどく殴られた」

「人権を理解し、尊重」と

一方でインド軍は、いかなる悪事も働いていないと主張している。

BBCへの声明の中で、軍は、自分たちが「人権を理解し、尊重するプロフェッショナルな組織」であり、こうした訴えのすべては「迅速に調査している」としている。

さらに、過去5年間に、国家人権委員会(NHRC)から提起された37件の訴えのうち、20件が「事実無根」だと判明した。15件については調査を行い、「調査に値すると結論に至ったのは、わずか3件だった」と付け加えた。

人権侵害は数百件

しかし今年初め、2つの有名なカシミール人権団体が公表した 報告書 によると、カシミールで過去30年間に発生した人権侵害は、数百件にのぼるという。

国連人権委員会(UNCHR)もまた、カシミールでの治安部隊による人権侵害をめぐり、包括的で独立した国際的調査を行うため、独立国際調査委員会(COI)の立ち上げを求め、49ページにわたる報告書を公表している。

インドは、こうした訴えや報告書の内容を拒否している。

Image caption 停戦ライン(Line of Control)で分断されたカシミール。北部がパキスタンの実効支配地域(PAKISTAN-ADMINISTERED KASHMIR)、南部がインドの実効支配地域(INDIAN-ADMINISTERED KASHMIR)、中国が実効支配するアクサイチン(Aksai Chin)、斜線部分はパキスタンから中国へ割譲された地域

(英語記事  Kashmiris allege torture in army crackdown