米英とロシア、「無敵の結束」は復活するのか 

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Image caption 左から、スターリン、ルースベルト、チャーチル

時は1943年、場所はテヘラン。英国と米国、ソビエト連邦の首脳が、ヒトラーにとどめを刺す最後の進攻を調整するため作戦会議を開いていた。

会談を伝えるニュース映像では勇ましい軍楽をバックに、ナレーターが高ぶった声でこう宣言した。「ルーズベルト大統領とチャーチル首相、そしてスターリン首相が最後のフィナーレに向けてスタートを切った。英国、米国、ロシアが力を合わせ、無敵の結束を固めたのだ!」。

そのテヘラン会談から70年以上が過ぎた今、ロシアでは「無敵の結束」という発想が装いも新たに再登場している。今度の戦争は、テロとの戦いだ。

「我々は国際テロが世界的な事象で、対抗するには各国が力を合わせなければならないと理解している」――ロシア正教会の渉外局長を務めるボラコロムスクのイラリオン府主教は、こう語る。

「第2次世界大戦では、政治体制が大きく異なる国同士も、ファシズムという災厄と戦うためにその違いをいったん脇へ置くことができた。今の我々に必要なのは当時と同じ。国際テロと力を合わせて戦うために、違いを脇へ置くことだ」

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Image caption 第2次世界大戦中の3大国にはヒトラーという共通の敵がいた

テヘラン会談

  • 1943年11月28日から12月1日まで開催
  • 英国のウィンストン・チャーチル首相、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領、ソ連のヨシフ・スターリン首相という連合三大国の首脳が初めて会談
  • 会談の目的は、その後の作戦についての協議。具体的には「オーバーロード(大君主)作戦」と命名されたフランスへの上陸作戦を協議
  • ノルマンディー上陸作戦はここで正式決定。まもなく米軍のアイゼンハワー大将と英軍のモントゴメリー大将が司令官に任命
  • スターリン首相はここでソ連の対日参戦を表明
  • 会談ではさらに、戦後のドイツ分割も協議

隠れた思惑?

ロシアと欧米諸国は、第2次世界大戦方式の連合を組んで過激派組織「イスラム国(IS)」と戦うべきだ――。ロシアで最近取材した政治家や当局者、宗教指導者の多くが、口をそろえてこう主張した。

プーチン大統領も同じ考えを提示している。今年9月の国連演説では「ヒトラーに対抗した連携と同じく、真に広範な対テロ連合」の結成を呼び掛けた。

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Image caption ミハイル・カシヤノフ元ロシア首相は、プーチン氏は欧米の尊敬を求めているのだと話す

しかしプーチン政権下でかつて首相を務めたミハイル・カシヤノフ氏は、大統領が「無敵の結束」を目指す陰には隠れた思惑があるとの見方を示す。

「プーチン氏が欧米との連携を切望する第一の目的は、制裁の解除だ」と、カシヤノフ氏は語る。「そして第二に、この世界ではロシアの力なくして何事も起こり得ないと思い知らせるためだ。外国から一目置かれていれば、国内でも信望を集めることができる。プーチン氏は政治宣伝やテレビを通して、これを国民に伝える必要があるのだ」。

ただしロシア政府は、どんな代償を払ってでも「無敵の結束」を確保しようなどというつもりはない。その代償が、アサド・シリア大統領への支持放棄を意味するならなおさらだ。

米英仏にとって、アサド大統領は和平を妨げる存在かもしれない。だがロシアにしてみれば、アサド氏がシリアの政権を握っている限り、シリアにおけるロシアの影響力は安泰なのだ。

「共通のビジョンがない」

こうした見解の違いが原因となって、反テロ大連合を目指す動きは難航している。

「我々には共通するビジョンがない。共通のビジョンがないから、共通の戦略を立てることもできない」――ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ氏は、そう指摘する。

「さらに言うと、この紛争のほとんどの当事者は互いを信用していない。それが、事態を複雑にしている大きな要因だ。一帯には大勢の兵力が集結していて、軍事力そのものがリスクを生み出している。私には終わらせ方が見えない。ワシントンにもモスクワにもロンドンにも、事態を終息させようとする道筋は見えてこない」

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Image caption 英米首脳はプーチン大統領と協力する方法を見いだせるのか

ロシアの爆撃機が最近、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコに撃墜された。ロシアは欧米への不信感をさらに募らせ、「無敵の結束」はますます遠のいた。大連合が望ましいと話すロシアの政治家もいるが、彼らは本当にそれが可能だと信じているのかどうかは疑わしい。

ロシア上院のコンスタンチン・コサチェフ外交委員長はこう語る。「米国など一部の国が、おそらく英国も含まれるが、この不安定な状況を自国利益追求に利用しようとしているのが問題だ」。

「米英などが推進する国益とは、世界の主要国であり続けること、人類を支配することだ。誰が正しくて誰が間違っているのか、誰が権力に留まるべきで誰が追放されるべきか、その決定権を握り続けることだ。これは完全に間違っていると思う」

それでもなお、期待せずにはいられない。ルーズベルト大統領とチャーチル首相がスターリン首相と協調できたのなら、オバマ大統領とキャメロン首相もまた、プーチン大統領と協調する方法を見出せるのではないか。

ただし、それには条件がある。自国の直面する脅威はあまりにも重大で切迫している、だからテロとの戦いに勝つには共闘という道しかないと、全員がこの結論に達した時に初めて、協調は実現するのだろう。

(英語記事 'Invincible unity' (or the lack of it)

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