中国のエレベーターで1カ月閉じ込められた女性死亡 衝撃と懸念の声

西安のエレベーター事故について伝える3月7日付QQニュースのスクリーンショット
中国・西安で女性がエレベーターに乗っている間に電源が切られ、そのまま1カ月放置されたため女性が死亡したというニュースは、中国のソーシャルメディア・ユーザーに衝撃を与えている。
西安市高陵区によると、西安のマンションで1月30日、エレベーターの整備担当者がエレベーターの電源を切った。作業員たちが3月1日に戻った際、エレベーター内で女性が遺体となっているのが発見された。「呉さん」と姓のみ報道されている女性は、独り暮らしの43歳だったという。警察は業務上過失致死事件として捜査し、エレベーター管理担当者や高陵区のマンション管理担当者らをすでに逮捕している。作業員が現場に戻るのが遅れたのは、春節が間にあったからという。
中国でたびたび問題になる公共施設の安全性の問題がこの事故であらためて浮き彫りにされたほか、ソーシャルメディアでは独身女性や精神障害のある人の身の安全について議論になっている。
「人食いエレベーター」
中国の短文投稿サイト「微博」では、「Huixinya」さんが「30日。どれだけ苦しくてつらかっただろう。心が痛む」と書いた。
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荊州市のショッピングセンターでは昨年7月、エスカレーターの上り口の床に穴が開き、落ちた女性が死亡した
ほかにも大勢が、呉さんの事故死に衝撃と哀悼の念を書き込んでいる。
整備点検担当が、誰かいるかと声をかけただけで中に人がいるかきちんと確認せず、エレベーターの電源を切ったという報道に、多くの人が怒りをあらわにしている。
微博には、「エレベーターを開けて確認するのが、そんなに大変だったとでもいうのか」という意見や、「耳が聞こえない人や、ろうあ者が中にいたらどうだったのか」などの批判が並んでいる。
ほかにも作業員を「怠慢」「無責任」などと罵倒し、「これは職場での事故ではなく、基本的な道徳心さえ持ち合わせていない労働者の問題」と指摘する声もある。
この事件によって、中国内で安全性がないがしろにされているのではないか、手抜きが横行しているのではないかという懸念が再燃している。中国では昨年7月にも、荊州市のショッピングセンターでエスカレーターの上り口の床に穴が開き、落ちた女性が死亡した。
「エレベーターやエスカレーターの事故が相次いでいるのは、製造上の問題だけでなく、手抜き作業やいい加減な点検整備も関係している」とポータル・サイト「紅網」に書き込んだ人は、「『人食いエレベーター』の問題を解決するため」安全基準の改善を呼びかけている。
独身女性を守るアプリは
呉さんが独り暮らしで、家族とはあまり連絡をとっていなかったという報道を受けて、独身女性の安全についても懸念の声が上がっている。
1カ月も姿を消しても誰も探そうとしなかったらしいと驚く声や、都会で孤立しがちな人たちの増加を心配する声もある。
微博の利用者「Xiaowuerfu」さんは、「たとえばこんなアプリはどうだろう。毎日2回タップするのが決まりで、2日間タップがなければ警察に通報がいくという仕組みはどうか」と書いた。
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中国で「剰女(シェンヌ)」と呼ばれる独身女性の安全を心配する声が高まっている
「こういう事件は農村部だけのものと思っていた。けれども混雑した都会も鉄の森で、大勢に囲まれて友達がたくさんいても、本物の人間関係は実は少ない」と書く人もいた。
中国では独身女性は「剰女(シェンヌ)」、「余りもの女」という烙印を押され、結婚や出産を最重視する社会風潮の中で問題視されてきた。
「一人っ子政策」は昨年終了したが、長年続いた影響で中国では男女比のバランスが崩れて男性の方が多い。その影響もあり、中国政府は独身女性に結婚するよう呼びかけている。
「精神障害者も人間」
報道では、呉さんが精神疾患を患っていたかもしれないという近隣住民の話も広く伝えられている。未確認情報ではあるが、中国のソーシャルメディアでは精神障害のケアの問題を指摘する声もある。
「1カ月も行方不明のままにするなんて、家族は何をしていたんだろう? 周りの人たちは?」と書いた人もいる。
一方で、精神疾患の有無はこの事故に無関係だと報道を批判する声もある。
「亡くなった方が精神病だったかどうかは、何も関係ない! 正常な人ならエレベーターに1カ月閉じ込められても、無事だったとでもいうのか」と激怒する書き込みがあった。
別の人は、「こんな事故のあとに、被害者の精神病歴を持ち出すなんて。精神障害者も人間じゃないの?」と書いている。