【米大統領選2016】トランプ氏を批判する共和党議員の苦悩

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トランプ氏の支持と撤回を繰り返し、再選が危ぶまれるケリー・エイヨット議員
米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏から距離を置く複数の共和党議員が、11月8日に大統領選と併せて行われる連邦議会選で苦戦している。そのため、トランプ氏を支持した方がいいのか、それとも批判した方がいいのか、苦悩する様子が見える。
11年前のビデオでトランプ氏が口にしたわいせつ発言を批判した共和党議員は、有権者の反発に遭っている。
一方で、トランプ氏を批判しなかった共和党議員も、有権者に批判されている。
東部ニューハンプシャー州選出のケリー・エイヨット上院議員は、こうした苦悩する共和党議員の典型だ。政治評論家たちが言うように、世論の風向きを当て推量しようとして、二転三転してしまっている。
エイヨット議員の態度の変遷をたどってみた――。
トランプ氏支持―2月29日
エイヨット氏は早い時点で、トランプ氏の大統領としての適性に問題はないと懸念の声を一蹴。共和党が指名する候補に投票すると表明した。
トランプ氏支持―5月4日
共和党予備選でトランプ氏がライバルたちを次々と圧倒していくなか、エイヨット氏の陣営は、トランプ氏支持をあらためて表明した。ただし、正式な推薦には至らず、米紙ワシントン・ポストは、エイヨット議員は「支持はするが推薦しない」と指摘。同紙が「支持・推薦ツーステップ」と呼んだこの中途半端な対応に、他の揺れる共和党議員もならうようになった。
トランプ氏支持―6月6日
メキシコ系の米連邦地裁判事は自分の裁判について公平な判断をしないかもしれないと示唆したトランプ氏の発言について、エイヨット議員はただちに「問題で間違っている」と批判したものの、共和党が指名する候補に投票すると再表明した。
民主党支持者が比較的多いニューハンプシャー州では、この対応に主要マスコミが不快感を示した。特にボストン・グローブ紙は8月9日の社説で、エイヨット氏の態度は「容認できない」と強く批判した。
トランプ氏に反対―7月20日
エイヨット議員は2012年の共和党全国党大会では、ミット・ロムニー氏を大統領に推薦し、目立つ存在だった。しかし議員は今年の党大会には欠席。自分自身の選挙戦に集中する必要があるからというのが、その理由だった。
トランプ氏に反対―7月31日
民主党の全国党大会では、勲功で表彰されながらも2004年にイラクで戦死したイスラム系米兵の両親が登壇し、トランプ氏を強く非難した。党大会の後、トランプ氏はこの両親をツイッターでさかんに攻撃した。
軍人と結婚しているエイヨット議員は、トランプ氏が戦死したカーン大尉の両親を侮辱するなどとんでもないことだと発言。「自分の犠牲を、金星家族(戦死兵の遺族)と比べるなど、どういう神経をしているのか」と驚いていた。
この批判に対してトランプ氏は数日後、エイヨット議員を「弱い」と批判し返していた。
トランプ氏が自分の犠牲を金星家族(戦死兵の遺族)と比べたことについて、どういう神経をしているのかとエイヨット議員は批判した
トランプ氏支持―10月3日
ニューハンプシャー州選出の上院議員の議席を争う対立候補とテレビ討論会に臨んだエイヨット議員は、トランプ氏が良いお手本だと思うか尋ねられた。
少しためらった後、議員は「しっかり大統領になれると思う」と答えた。
この回答を受けて、激怒する書き込みがソーシャルメディアに相次ぎ、民主党側はエイヨット議員を嘲笑する意見広告を大々的に展開した。
トランプ氏に反対―10月3日
「手本になれる」という発言の数時間後、エイヨット議員は発言を撤回。ツイッターで、「今晩の発言は間違っていました。どの子供にも大統領を目指してもらいたいけれども、ドナルド・トランプもヒラリー・クリントンも良いお手本ではないし、私の子供たちのお手本として評価できません」と書いた。
トランプ氏に反対―10月8日
トランプ氏が2005年に女性についてわいせつな発言をしていたビデオが報道されたのを機に、エイヨット議員はついにトランプ氏の支持を撤回した。
「自分の党の候補を支持したいと思っていましたが、私はまず先に母親であり、アメリカ人です。女性を侮蔑し暴行を自慢するような大統領候補を、支持できないし、するつもりはありません」と表明したエイヨット氏は、副大統領候補マイク・ペンス氏に投票するとツイートした。
二転三転した議員はほかにも
ネブラスカ州選出のデブ・フィッシャー上院議員は8日の時点では、トランプ氏のわいせつ発言は「おぞましく、まったく容認できない」と批判し、選挙から撤退するよう呼びかけた。
しかしその3日後には、撤退しないという判断を尊重し、トランプ氏に投票すると表明した。フィッシャー議員の議席は2018年まで改選されない。
サウスダコタ州選出のジョン・スーン上院議員も、わいせつ発言報道の直後はペンス氏を大統領候補にするよう党に呼びかけていたものの、11日にはトランプ氏に投票すると強調した。