中国で受付職に1万人が応募 公務員人気続く

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中国では毎年100万人以上が公務員の採用試験を受ける
お茶を出したり、客に応対する仕事が夢だと言う人ばかりではないだろうが、「中国民主同盟」の受付職には、1万人近くが応募するくらいの価値はあったようだ。
中国で毎年恒例の公務員試験は競争率の高さで知られるが、この受付職には、9837人が応募し、記録的な競争率になった。
中国民主同盟は国内で活動する、非常に力の限られる少数派政党のひとつで、他人がうらやむ職とは言い難い。
ではなぜ、これほどまで多くの人が受付になりたかったのか。
簡単な仕事
毎年多くの応募者が集まる中国政府の各部門は、汚職撲滅運動が続くなか、採用を厳格にしており、新卒の応募者たちに、より高い能力と具体的な技能を求めるようになった。
政府の人力資源社会保障部で報道官を務める李忠氏は、中国共産党の機関紙の人民日報に対し、「一部の職は、条件に入る学歴や職務経験の幅がほかよりも広いため多くの応募者を集めた」と語った。
地元報道によると、中国民主同盟での受付担当には、4年制大学を卒業し、2年間「草の根活動に関わった経験」があればだれでも応募できるという。

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内モンゴル自治区は観光にはもってこいだが、職場となるとそうでもないかもしれない。多くの人はここで仕事を得るのは避けたいようだ(写真はゴビ砂漠を進むラクダ。今年7月撮影)
一方、223の公務員職には応募者がほとんどいなかった。内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区といった僻地(へきち)で、金融監督や気象台の業務を担当する仕事だった。
李氏は、空きが埋まらないのはこれらの職が「より困難な土地」にあるためだからだと認めた。
仕事が欲しい人もたくさんいる
今年の公務員試験では約140万人が受験した。平均倍率は49.5だった。
しかし、競争率は毎年あまり変わらない。昨年は46倍だった。
2013年には、「重慶市と南川区における国家統計局の調査チーム」に9400人以上が応募した。
中国の公式統計では失業率は4%。人口約14億人の中国ではかなりの数になる。また、民間企業では長く務めないことが当たり前ななかで、公務員を目指す人は多い。
例えば、人口や失業率が中国と似ているインドでは、北部ウッタル・プラデーシュ州が募集した300の職に200万人が応募した。
「鉄飯碗」
アジアの多くの国では依然として公務員は魅力のある仕事だ。尊敬もされるし安定している。
中国では公務員職は「鉄飯碗」と呼ばれる。家族を食べさせるご飯の碗が鉄のように壊れないという意味だ。

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中国では依然として公務員は人気の職種だ
中国のポータルサイト新浪では、中国民主同盟の受付職のあまりの人気に、「鉄飯碗」ならぬ「金飯碗」だと面白おかしく表現した人もいた。
一方で、公務員職の輝きにはかげりも見える。汚職撲滅運動の影響だ。政府は今週、汚職で処分を受けた官僚が過去3年間で100万人に上ったと発表した。
中国版ツイッターの新浪微博(シナウェイボー)では、先週の公務員試験のニュースに皮肉を言うユーザーもいた。
「何が良いんだ? もし合格しなかったら、親戚には見下される。もし合格すれば、コネを使いたい親戚に毎日悩まされることになる」
しかし、応募者に共感するユーザーもいる。「多くの応募者は仕事が見つからなかったり、今の仕事が良くない。汚職とは関係がない」。
テッサ・ウォン記者