「バイオニック」なホウレンソウ、爆弾探知機に

ポール・リンコン、BBCニュースサイト、科学編集長

Anti-vehicle mine

画像提供, Getty Images

素朴なホウレンソウが、科学の力で爆弾探知機に様変わりした。

微小なチューブをホウレンソウの葉に埋め込むことで、「ニトロ芳香族」と呼ばれる物質を探知するようになる。「ニトロ芳香族」は地雷や、地中の弾薬に含まれる。

ホウレンソウが地雷などを探知した後は、操作する人間の手元の端末に情報がワイヤレスで送信される。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)によるこの研究は、英誌ネイチャー・マテリアルズに掲載された。

研究チームは、ナノ粒子とカーボン・ナノチューブを、ホウレンソウの葉に埋め込んだ。ホウレンソウが葉に地中の水分を吸い上げるまでに、約10分かかる。

ホウレンソウが吸い上げた水中の物質を読み取るため、葉にレーザー光線を照射すると、埋め込まれたナノチューブが近赤外線を発しはじめる。

この光線を、小型で安価なラズベリーパイ・コンピューターにつなげた小型の赤外線カメラが読み取る。ほとんどのスマートフォンについている赤外線フィルターを外せば、スマホでも読み取ることができる。

論文の共著者、マイケル・ストラノMIT教授は、「植物に工夫すれば、ほとんど何でも植物で探知できるという原理を、実証した」とBBCニュースサイトに説明した。

ストラノ教授の研究室はこれまでに、過酸化水素、TNT(トリニトロトルエン)、サリンを探知するカーボン・ナノチューブを開発してきた。

目的の分子がナノチューブの外側のポリマー素材と結合すると、光り方が変化するという。

「加工した植物は、防衛目的で使うほか、公共の場所でテロ関連活動が行われていないか監視することにも使える。水中だけでなく空中の物質も探知できるので」とストラノ教授は言う。

「こうした植物を使って、地中に埋められた弾薬やニトロ芳香族を含む廃棄物から、地下水に漏洩する物質を監視することができる」

論文の手法を使用し、研究チームは植物から1メートル離れた距離で物質を探知することができた。距離をより長くしようと、研究を続けているという。