大卒女性、「男性不足」のため「必死の思い」で卵子凍結=米調査

Pregnant woman

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米イェール大学の調査によると、専門職の大卒女性がこぞって卵子を凍結している。「高学歴の未婚男性が不足している」からだという。

イェール大学の研究は、大卒女性が「供給過多」のため、パートナー探しに苦労した結果、「必死の思い」で卵子凍結をしていると指摘する。英国のように多くの女性が大学に進学する国の方が、「男性不足」問題は深刻だという。

研究チームが卵子を凍結した女性150人にインタビューしたところ、9割の女性が、ふさわしいパートナーが見つからなかったと答えた。調査結果は、7月初めにスイス・ジュネーブで開かれたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)で発表された。

研究を主導したマーシャ・インホーン教授(人類学)は、女性が仕事を優先するために妊娠を先送りしているという認識に一石を投じる研究結果だと話す。

「専門職の女性が妊娠を先送りするのは、主に教育やキャリアを追求するからだと、マスコミはさかんに報道します。キャリアに『のめり込んでいる』からだと。しかしむしろ、結婚できるパートナーがいないまま独身なので、生殖期間を過ぎても、自分の出産能力を維持しようと必死に行動しているのです」

「時間稼ぎ」

ESHREで講演したインホーン教授は、専門職女性の相手となる「大卒の男性が不足している」と思うと述べた。

教授によると、2014年6月から2016年8月にかけて、米国とイスラエルの8つの妊娠治療クリニックで治療を受けていた女性の大半は、家庭を持つことを望む高学歴男性が見つからなかったと話していた。

「彼女たちは、自分たちの人生における『男性の不在」』を悲しみ、卵子を凍結して時間を稼ぐと共に、ネットで良いパートナーを探し続けています」

「辛いプロセス」

英生殖治療学会の会長、アダム・ベイレン教授は、英国でも多くの大卒女性が子供を作り始める時期を遅らせており、これは英国社会の「大きな変化」だと指摘する。

「私のクリニックでは確かに、年齢が高い女性が妊娠治療のためにやってくるのが増えています」

英国では大学生の男女比が不均衡だと指摘されている。高等教育統計局の2015/2016年度統計によると、大学生の56%が女性、44%が男性だった。

ベイレン教授は、卵子凍結について、つらくて多額の費用がかかる可能性があると警告する。

「将来的な妊娠のため、軽い気持ちで卵子凍結を決めるべきではない。卵子凍結の技術は大きく進歩したものの、やがて赤ちゃんが確実に生まれるというわけではない」

「妊娠を決意するまで卵子を『保存』することを選んだ女性は、苦痛を伴う治療をしなければならないし、投薬治療も必要です。薬を飲み続けるのは楽なことではないかもしれない。女性の身体への潜在的なリスクも視野に入れなければいけません」

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妊娠・出産まで結びつく成功率は依然として低いものの、英国では卵子を保存する女性が大幅に増えている。

政府の諮問機関、ヒトの受精及び胚研究認可局(HFEA)によると、最新調査では2014年に女性816人が後の体外受精(IVF)のために卵子を凍結させた。2013年と比べると25%増だ。

卵子は胚よりもろく、凍結融解のプロセスで生存する可能性は多くない。体外受精・胚移植での妊娠率は、2013年が21.9%、2014年が22.2%だ。

法律では卵子は10年まで凍結保存できるが、最長55年まで許可される場合もある。

卵子凍結には数千ポンド(数十万円)かかることもあるが、保存には追加費用が必要だ。またIVF治療サイクル1回あたり費用は5000ポンド(約73万円)以上かかる場合もある。