中国の女性プロゲーマー、男性ゲーマーを飛び越え

ダニー・ビンセント、BBC Future

女性ゲーマー Image copyright Danny Vincent
Image caption 中国プロゲーム産業の売り上げは約5億ドル(約552億円)

世界最新の超大国では、プロのゲーム産業が何十億規模の巨大市場へと成長している。女性プレーヤーと男性プレーヤーとの間には収入格差があるが、才能あふれる若い女性のチームは、その壁も乗り越えようとしている。

上海郊外の午前遅く。どこまでも拡大していく街並みから約30キロ離れた豪華なマンション群の一室で、共同生活を送る6人の若い女性たちが目を覚ました。ぐっすり眠る彼女たちは、建設が進むマンション群の工事の騒音がなければ、起きられなかったかもしれない。

この6人はただのルームメイトではない。LLGのチームメイトだ。LLGとは、中国で最も有名な女性eスポーツチームの一つで、非常に高い技術を持つプロビデオゲームプレーヤー集団のことだ

6人は深夜零時をとっくに過ぎるまで、オンラインマルチプレーヤーゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の練習をしていた。だからなかなか目覚めなかったのだ。

彼女たちはB級セレブで、比較的優雅な暮らしを送っている。オンラインでは何千人ものフォロワーがいて、大きな部屋に住み、高級な財布やバッグ、宝飾品などを持っている。すべて、コンピューターゲームの収入で得たものだ。

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中国で女子プロゲームプレイヤーになるには 涙と歓喜

LLGのメンバー、シャン・チェンさんとディン・ディンさんが自分たちの生活や、これまで闘ってきた壁について語った。

中国のネット人口は世界最大だ。政府関係者によると、今年1月時点のネットユーザーの人数は、7億3100万人以上。しかし最近まで、コンピューターゲームの種類は限られていた。2000年から2015年まで、家庭用ゲーム機は禁止されていた。政府は、ゲームを「デジタルヘロイン」と見なしていた。つまり中毒性があり危険だと。しかしこんにち、中国には推定1億7000万人のeスポーツプレーヤーとファンがいる。

中国のeスポーツ観客数は、全世界の半分以上を占める。世界各地で5億人以上が、他人のゲームプレを見ていることになる。ある試算によると、ビデオゲーム業界の市場規模は2021年までに350億ドル(約4兆円)に達する見込みだ。中国のゲーム観客は多くの欧州の国々の人口を上回る。多くのeアスリートはいきなり、富と名声を手にした。

少なくとも、多くの男性eアスリートは。

男性プレーヤーの中には、1年で総額最大200万ドル(約2.2億円)の賞金を稼ぐ者もいる。一方で、プロ女性ゲーマーの収入は、もっと控えめだ。

「私たちが以前、競技会に出場したとき、『本当に下手だ』と観客に言われました。私たちをからかって、代わりに自分たちがプレーするからお前たちはステージから降りろとまで」

染めた髪を短く刈り、四角いフレームの眼鏡を掛けたシャン・チェンさん(20)はこう言う。

シャン・チェンさんは中国中央部の武漢市出身だ。地元のネットカフェで腕を磨いた。女性プレーヤーの入店さえ阻止しようとする若い男たちを、次々と負かしてきた。

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Image caption LLGのようなeスポーツチームはひとつ屋根の下で共同生活を送り、トーナメントに向けて訓練する

中国の女性ゲーマーたちは現在、女性プロリーグの誕生を望んでいる。男性のeスポーツプレーヤーはリーグを設立し、それによって収入は保障されているが、女性のみの競技会は数が少なく、時期もバラバラだ。

ディン・ディンさんはチームで唯一の韓国人。スター契約したプレーヤーだ。彼女はプロになる夢をかなえるため、中国に移住した。

「今の韓国には女性チームがありませんが、中国にはあります。ここでは組織がしっかりしていて、自分もとても上達しました」と彼女は言う。「しかし男性チームに比べると、まだ足りません」と彼女は付け加える。

ディン・ディンさんとシャン・チェンさんは2人とも、学生時代にかなりのアスリートだった。チェンさんは強い卓球選手として育ち、ディン・ディンさんは膝をけがするまで、体操選手として訓練していた。2人は他のスポーツ同様、真剣にeスポーツに取り組んでいる。1日7時間訓練し、チームとして生活、仕事、食事を共にしている。

ディン・ディンさんは、「男性チームと同じレベルにたどり着くには、まだ道のりは長い」と語る。彼女は将来、男女が対等になるのを望んでいる。

eスポーツの熱狂的ファンから投資家になった人物が、LLGのメンバーに資金を提供している。メンバーは毎月1人1200ドル~2200ドル(約13万円~約24万円)の報酬を受け取っている。中国の平均的な大卒給料の2倍以上だ。

多くのゲーマーは、自分のゲーム配信やストリーミングへの課金を通じて、オンラインで収入を得ている。視聴者の大半は男性だ。それだけに、女性プレーヤーの能力より、外見ばかりが重視されかねないという懸念もある。また、多くの女性はオンラインで差別や嫌がらせを受けている。

チェンさんは、「男性と女性は平等であるべき。ゲームが上手な女子もいる。私たちを偏見の目で見るべきじゃない」とも話す。

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Image caption 男性ゲーマーと比べて、女性ゲーマーは賞金額が少ない

LLGの選手たちは、1990年代以降に生まれた世代だ。急激な経済成長の時代に育ったが、さまざまな形で反抗的に育った。不可能を可能にして、趣味を職業にし、サイバー空間でのキャリアを追い求めるために学校を退学した。一世代前なら、問題児だと思われたかもしれない。

しかし中国のプロゲーマーの選手生命は比較的短い。eスポーツは反復的な動きが多く、選手たちの体に負担がかかる。ゲームの腕前は、素早い手の動きとキーボードやマウスを使った反応速度にかかっている。ゲーマーは通常、4~5年間だけプロとして活躍する。その後はけがをしやすくなり、引退するしかなくなる。

だが今のところは、LLGはプロとしてゲームをするという夢を追い続けている。性別の壁をものともせずに。

(英語記事 The Chinese female game players putting male players in the shade

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