どうしてストレスで太るのか
マイケル・モズリー医師、BBC

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人はなぜ太るのか。それは誰でも知っている。摂取カロリーが燃やすエネルギーより多ければ、人は太る。とはいえ、これだけでは肝心の疑問に答えていない。そもそもどうして、私たちは食べ過ぎてしまうのか。
数分後に後悔すると分かっていても、なぜあのケーキ、あるいはあのチョコレートを食べずにはいられないのか。
単に食いしん坊だからか。それともほかの何かが働いているのか。
自制心は大事だが、ストレスも体重増加に大きく関係しているようだ。その証拠はたくさんある。
慢性的なストレスは、睡眠や血糖値を不安定にする。睡眠や血糖値が乱れると、空腹感が募り、ストレス解消のために食べるようになる。
それがさらに睡眠障害やストレス悪化につながり、血糖値もますます不安定になる。やがては、体脂肪の量が不健康だというだけでなく、2型糖尿病の発症にいたる可能性もある。
BBC番組「Trust Me, I'm a Doctor(私は医者だから信じて)」に出演する医師団の1人、ジャイルズ・ヨウ医師は、英リーズ大学の研究者たちの協力を得て、ストレスの特に多い1日を過ごしてみた。
リーズ大学の研究チームはまず、ヨウ医師にいわゆる「マーストリヒト・ストレス・テスト」を受けさせた。
コンピューターの前に座らせ、「2043-17」などの引き算を速いペースで繰り返させた。ヨウ氏は間違いを繰り返した。ヨウ氏のような人にとっては、間違いを繰り返すことが、特にストレスにつながる。
計算を繰り返した次に、氷水に手を入れてしばらくそのままにさせた。実験の前後には、ヨウ氏の血糖値を計測している。
人は食べると血糖値が上がる。ヨウ氏のように健康な人の場合、血糖値はすぐに正常に戻る。
しかし、意図的にストレスを与えられた後では、ヨウ氏の血糖値が正常に戻るのに3時間かかった。テスト前のストレスのない日の、実に6倍だ。
なぜこうなるかというと、ストレスを感じた私たちの体は「戦うか逃げるか」の状態になるからだ。
ストレスを受けた体は、攻撃されていると受け止め、筋肉にエネルギーを与えるため、血中にブドウ糖を放出する。
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ストレスで睡眠が乱れると、落ち着くために食べることがある
しかし、危険から逃げるためのエネルギーが必要なければ、再び血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが大量に出る。
このインスリンの増加と血糖値の低下が、空腹を引き起こす。ストレスを受けると、甘い炭水化物が無性に欲しくなるのはこのためだ。
睡眠不足の時も、同じようなことが起こる。
英キングス・コレッジ・ロンドンでの最近の研究で、人を睡眠不足にすると、平均で1日385キロカロリーを余計に摂取することが分かった。これは、大きなマフィン1個分のカロリーに相当する。
子供も同じように、睡眠が足りていないと余計に食べてしまう。
別の新しい研究では、3~4歳の子供数人(通常は午後に昼寝をする子供たち)を対象に、午後の昼寝をさせなかっただけでなく、通常の就寝時間を約2時間過ぎるまで寝かせなかった。
子供たちは翌日、ふだんより20%多くのカロリーをとり、とりわけ糖類と炭水化物を多くとった。子供たちはその後、好きなだけ寝させてもらえた。
それでも子供たちは次の日、いつもより14%多くのカロリーを摂取した。
それでは、どうすれば日々のストレスを減らせるのか。
まず第一に、ぐっすりたっぷり眠ることをお勧めしたい。言うだけなら簡単だが。しかし、英国民健康サービス(NHS)のサイトに役に立つアドバイスがいくつか載っている。
すでに確立されている「ストレス解消法」を、いくつか試してみるのもいいだろう。例えば体操や庭仕事、マインドフルネス、ヨガなどだ。
ウェストミンスター大学のアンジェラ・クロウ教授の力を借りて、自分でも色々試してみたところ、マインドフルネスの効果が一番だった。
しかし何より大事なのは、楽しんでやること。楽しいと思わないと効果は期待できない。この理解こそ、私たちの研究の最大の成果だった。
なので、いろいろと試して、自分にぴったりなものを探してみるのが一番だ。
呼吸でストレスを吹き飛ばそう
NHSの情報サイト「NHSチョイス」推奨の呼吸法は、私もおすすめだ。日課の一部にすれば、特に効果的だ。
立っても、座っても、横になってもいい。一番リラックスできる姿勢を選ぼう。
- できるだけ深く息を吸い込むことから始めよう。力まずに、鼻から吸い込み、5つ数える。
- 次に、口からやさしく息を吐き出しながら、5つ数える。
- 鼻から息を吸い、口から吐き出しながら、同じペースで呼吸を続ける。
- そのまま3~5分続ける。
(英語記事 Why stress makes you fat)