英女性参政権100年 当時のポスターが描く女性たちの怒り

A women is force fed by 2 doctors and a nurse. Image copyright Cambridge University Library
Image caption 「監獄で女性を拷問」「政府に反対票を」と訴えるポスター。1900年前後の英女性参政権運動では多くの女性が獄中でハンストを試みるも、強制給餌(きゅうじ)された

英下院は1918年2月6日、女性に投票権を初めて認める人民代表法を可決した。それから100年を迎えた英国で、女性参政権運動を訴えた20世紀初頭のポスターを集めた展覧会が開かれている。

英国でこのほど、女性参政権運動を描いた100年前のポスターが新たに複数見つかり、初めて展示公開されている。平等な権利を求めて闘った女性たちの強い気持ちが遺憾なく表現されている。

宛先はただ一言、「図書館員」とだけ。茶色い無地の紙に包まれたその束は1910年ごろ、ケンブリッジ大学図書館に届けられた。それから100年以上が過ぎた2016年になって、当時の包み紙のまま保管されていた中身が見つかった。

色あせた包み紙の中から出てきたのは、20世紀初めに作られた女性参政権運動のポスターだった。これほどのコレクションが今も残っている例は珍しい。

差出人は参政権運動のリーダーで、1929年にサンダーランド選出の労働党議員となったマリオン・フィリップスだった。

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上のポスターのプラカードにはこう書かれている。

「女性『そろそろここから出ていい時期なのに。鍵はどこでしょう』 」

「犯罪者、狂人、そして女性たちは! 国会選挙に投票できない」

フィリップスがなぜポスターを送ったのかは、はっきりしない。

ケンブリッジ大図書館の展示担当者、クリス・バージェス氏によると「ポスターは壁に張るために作られた。そのほとんどは、風雨でだめになったり、反対勢力にはがされたりした」という。「だからこのように無傷で保管されていた例は、大変珍しい」。

ケンブリッジの場合、名門大学のある町だけに、この町の参政権運動のポスターには大学のガウンをまとった女性たちがよく登場した。

ケンブリッジの教養ある女性たちも、当時の法の下では犯罪者や精神異常者と同じ仲間に入れられていると、ポスターを作った人たちは指摘している。

ケンブリッジ大学にはガートン、ニューナムという女子コレッジがあり、そこでは参政権を求める団体がとても活発に活動していた。しかしケンブリッジ大学自体は、とても進歩的とはいえなかった。

19世紀末の時点で、女性はケンブリッジ大で学ぶことはできても、正式な学位は与えられなかった。1897年にこれを変える改革が提案された時は、大反対の嵐になった。

「新しい女」の象徴として、自転車に乗る女性の像が吊り下げられた。像がたたき壊されると、群がった男子学生は大喜びで野次を飛ばした。

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Image caption 「労働者に選挙権を」

ポスターは織物工場で働いたり、お針子の内職をしたりする労働者階級の女性にもアピールしようとしていた。

こうした女性たちは、女性自身についての規則や権利を定める法律に投票することすらできない。そう指摘するポスターもあった。

それはつまり、女性にとって何が一番良いかを男性たちが判断し、投票しているということだった。

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Image caption 「工場法 女性の規則」という掲示を前に女性が、「なんて図々しい。こちらになんの相談もなく」と憤慨している

この時代の歴史を研究しているルーシー・デラップ氏によると、英国では当時、ほとんどの人が女性の参政権に反対していた。

だからこそ「参政権運動はなんとしても、多くの女性たちに訴えかける必要があった」と、同氏は指摘する。

「運動はただ平等を訴えるだけでなく、そのずっと先まで話を進めた。選挙権があれば家庭や職場や街角で、全ての女性にかかわる問題にどんな変化が起きるか、そういうことを訴えた」

印刷作業は参政権運動の要だった。

「大量のビラを印刷し、たすきをかけた各地のボランティアがその日のうちに配ったり、夜の集会を知らせるポスターを当日刷ったりしていた」と、デラップ氏は語る。

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上のポスターは、「今の法律はどうやって『夫を亡くした妻を守っている』のか」と題して、次のようなやりとりを説明に書いている。

寡婦「夫の遺言を変える方法はないのですか」

法律「ありませんね。男性は自分のお金をだれでも好きな相手に残せるが、あなたは子供を養育する義務がある。それがイングランドの法律です」

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上のポスターは「法律はどのように『娘たちを守っている』のか」と題して、次のやり取りを書いている。

英国の女の子たち(泣きながら)「乳母やが、弟に物を取られても、今のうちに慣れておきなさいって。大きくなったら私たちは何ももらえない、弟が全部もっていくんだからって」

フランスの女の子たち「なんて気の毒なこと。私たちの国なら兄弟と姉妹の分け前は平等なのに」

デラップ氏によると、参政権運動のポスターはきるだけ多くの人に訴え掛けるため、大衆紙からヒントを得て目につきやすい見出しを掲げたり、大判の漫画や写真を取り入れたりした。

活動家たちはメディアに詳しい政治運動の専門家として、その時々の政策にも対応した。

1909年、当時のハーバート・グラッドストン内相は、収監中にハンストをする活動家には強制的に食事を取らせるよう指示を出し、国民の反発を招いた。

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上のポスターに描かれているのは、英国、あるいは特にイングランドを擬人化した「ジョン・ブル」のキャラクターだ。次のように書かれている。

「関税改革 自由貿易 失業 救貧法改正 ウェールズの国教廃止 乳児死亡率 学童の身体検査」

「教育を受けさせて」

「どうして女性の力を借りないの」

ジョン・ブルは、女性の助けがないまま、20世紀初めのエドワード朝時代に英国が抱えていた数々の社会問題に追われている。

このポスターは、もし女性が選挙権を持てば乳児死亡率や教育制度の不備、失業問題のような問題は簡単に解決できるかもしれない、それがみんなのためになるとあらわしている。

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参政権運動のポスターとして特に有名なものが、上の「ハンディキャップ!」。ロンドンの知識人サークル、ブルームズベリー・グループの一員だった画家のダンカン・グラントが描いた。

若い裕福な男性が「選挙権」の帆で楽々と進んでいくのに、女性はもっと荒れた海で、質素な舟を必死にこいでいる。つまり、女性は男性よりも不利な状況に置かれていると図示している。

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パーティントン夫人のキャラクターも当時、英国の新聞雑誌によく登場した。新しい時代の流れをモップで食い止めようとする姿が、多く描かれた。

上のポスターでは、女性参政権への支持という潮流が押し寄せるのをモップで食い止めようとしている。

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上のポスターは子供たちのエプロンに、「婦人自由連盟」、「独立労働党」、「プリムローズ・リーグ」、「労働組合」などと、政治団体の名前が書かれている。

母親の「ジョン・ブル夫人」が「政治的支援」という大なべから食べ物をよそいながら、「さあ欲張りの男の子たち。この私がいただくまでは、もうあなたたちに食べさせません」と告げている。

つまり、女性が選挙に参加できるまで各団体への支持を取り下げようという呼び掛けだ。

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「順法」の集会だと、わざわざはっきり明記したポスターもあった。上のポスターは、「女性参政権 順法 無党派 市民集会」の開催告知で、「男女問わず歓迎。来て請願書に署名を」と呼びかけている。

デラップ氏によると、暴力闘争の是非をめぐり、女性参政権運動は大きく割れていたという。

「窓を割ったりゴルフ場を破壊したり、建物に放火したりと、法律違反をいとわない戦闘的なメンバーもいた」

「非暴力的な違法行為もあった。国勢調査に記入しなかったり、代表権なくして課税なしとばかりに納税を拒否したり、闘い方は多種多様だった」

「けれども、多くの女性は市場で箱の上に立って、声を上げて主張した。ただそれだけで、大勢に激しく反発され、腐った野菜を投げ付けられたり、警察暴力を受けたりした」

「どんなタイプの活動をしていようと、参政権運動の女性活動家だというだけで、それ自体が戦闘的な行為だったのです」

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「選挙権」という餌(えさ)をついばむガチョウを描いた上のポスターには、「雄ガチョウにとってソースなら雌ガチョウにとってもソースだ」と書いてある。これは、「雌ガチョウにとってソースなら雄ガチョウにとってもソース」という、「ある人に当てはまることは、ほかの人にも当てはまるはず」という意味のことわざを念頭においている。

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それまではどうだったのか 英女性参政権100年

(英語記事 The 100-year-old protest posters that show women's outrage

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