米朝首脳会談 発表時の奇妙な光景

記者会見に向かう韓国代表団 Image copyright AFP
Image caption 記者会見に向かう韓国代表団

韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が8日、ホワイトハウスの中庭に立ち、北朝鮮の北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ米大統領が5月までに会談するというニュースを発表したとき、1つの歴史が作られた。しかし、北朝鮮の専門家でアナリストのアンキット・パンダ氏による一連の出来事と声明の詳細な分析は、これらの事実が一見した印象と異なる意味を持つことを示す。

会見の光景は、かなり奇妙なものだった。3人の韓国人、鄭国家安保室長、徐薫(ソ・フン)国家情報院院長、趙潤済(チョ・ユンジェ)駐米大使は、肩が触れ合うほど近くに立ち、ホワイトハウス西棟前で彼らを取り囲んだ熱心な記者たちに向かって話した。

米高官が全く姿を見せないなか、米朝首脳会談という外交イニシアティブの全てが韓国に委ねられた。

この取り組みに米国はそれほど興味がないと理解し、立ち去った記者がいてもおかしくない。

これに先立つ、朝鮮半島情勢の興味深く歴史的な1週間は、韓国を仲介者としたシャトル外交(第三国が仲介者となって当事国である二国間を頻繁に行き来し、それぞれの地で交渉する外交)の大々的な復活を示した。

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トランプ氏、5月までに米朝首脳会談に応じる意向

ホワイトハウス中庭に立った2人の韓国高官、鄭氏と徐氏は、北朝鮮の指導者である金委員長本人と面会した後、すぐに渡米しトランプ大統領に会談内容を説明した。

トランプ氏との面会後、鄭氏はホワイトハウス西棟前の道路に立ち、熱心な記者の一団の前で声明を発表した。この声明で鄭氏は、トランプ氏に代わって、米大統領は北朝鮮指導者からの会談の招待を受諾するだろうと述べた。

たった3日間のうちに、韓国代表団は世界の両端で、金正恩氏とトランプ氏の両方を代弁する格好になったのだ。

では、声明実のところ何が分かったのか

以下が、鄭氏が記者団に読み上げた内容だ。

1.「私は本日、自分の最近の北朝鮮訪問について、トランプ大統領に説明するという光栄な機会を得ました。トランプ大統領と副大統領、親友のマクマスター将軍(国家安全保障問題担当大統領補佐官)を含め、素晴らしい国家安全保障対策チームに、感謝したい」

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Image caption 韓国代表団はトランプ氏に、平壌での金氏との会談内容について説明した

鄭氏は金曜日にマクマスター氏と面会し、おそらくは今後の対応について議論する。国家安全保障問題を担当する米大統領補佐官が相手方の同等の高官と会わず、韓国代表団だけと米朝首脳会談の調整を行う奇妙な光景は、注目に値する。

2.「トランプ大統領の指導力、そして国際的な一致団結と共に最大限の圧力をかけ続ける大統領の方針のおかげで、ここまでたどりついたと、トランプ大統領に説明しました。文在寅(ムン・ジェイン)大統領自ら、トランプ大統領の指導力に感謝していると伝えました」

韓国は、トランプ氏がお世辞によい反応を示すことを心得ている。韓国政府は、米国が支持する「最大限の圧力」方針が少なくともいくらかの結果を出していると、認めざるを得ない。金正恩氏は今年の「新年の辞」で、韓国・平昌での冬季五輪を引き合いに南北関係の改善に言及したのと同時に、制裁の影響があることを認めていた

3.「我々との会談で北朝鮮の指導者の金正恩氏は、非核化への強い決意を表明したと、トランプ大統領に伝えました。金氏は北朝鮮が今後は核・ミサイル実験を控えると約束しました」

これは、鄭氏が平壌からの帰国後にソウルで行った声明の反復だ。鄭氏はしかし、金氏が非核化の申し出に含めていた、金体制の維持が保証されなければならないとする条件には言及しなかった。北朝鮮はさらに、米国が「敵対政策」を終わらせるよう長らく求めてきており、それには韓国からの米軍派遣が含まれる可能性がある。

4.「(金氏は)大韓民国と米合衆国の恒例の合同軍事演習は継続しなくてはならないと理解しており、トランプ大統領にできるだけ早く会いたいと前向きな意欲を示していました」

この部分は米韓同盟の文脈では重要な言質だが、全く北朝鮮指導者らしからぬ発言だ。かつて北朝鮮を激怒させ、一時延期されていた米韓合同軍事演習が3月31日に始まった際の北朝鮮政府の反応が、軍事演習に対する同国の本音をより正確に表すだろう。昨年の軍事演習の時期には、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル発射を複数回実施した。

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Image caption 今週始め、金委員長をはじめとする北朝鮮高官と平壌で会食する韓国代表団。シャトル外交の1週間の始まりを示す写真だ

5. 「トランプ大統領は我々による情報の伝達に感謝し、恒久的な非核化を達成するため金正恩氏と5月までに会うと述べました」

ここが、メディアが注目した、ワシントンでの鄭氏の発表における実質的な新情報の主要部分だ。 会場も議題もあいまいなままだが、おそらく米国と北朝鮮が数週間のうちに詰めることになるだろう。

6.「大韓民国は米合衆国や日本、そして世界中の多くの協力相手と共に引き続き、全面的かつ断固たる強い意志で、朝鮮半島の完全な非核化に取り組んでいくつもりです」

「トランプ大統領と並んで我々は、平和的解決の可能性を試す、外交手続きの継続を楽観視しています」

「大韓民国と米合衆国、そしてパートナーたちはいずれも、過去の間違いを繰り返さないよう強く要求し、北朝鮮が発言に具体的な行動を一致させるまで圧力をかけ続けると、一致団結しています」

「どうもありがとうございました」

鄭氏の声明は、楽観的な定型文で締めくくられたが、しかし、米国との同盟に対するいかなる肯定も直接的に含まなかったのが目立つ。米国は「パートナーたち」と一括りにされた。興味深いことに、鄭氏は金正恩氏の「言葉」を引用している。今後実現するはずの外交的躍進に関する北朝鮮の言葉はすべて、韓国を通じてもたらされているにもかかわらずだ。

今回の発表が意義深いのは間違いなく、トランプ氏と金氏の首脳会談は歴史書を生むだろう。しかし、北朝鮮が確約したと、韓国が米国に保証したことを、実際に北朝鮮が確約したのか、そして、米政府が北朝鮮政府と生産的な外交プロセスに臨む準備ができているかは、全く明確でない。

アンキット・パンダ氏は北朝鮮の専門家で、アジア太平洋地域の専門メディア「ザ・ディプロマット」の上級編集者。ツイッターアカウントは@nktpnd

(英語記事 Trump and North Korea talks: Strange optics of the North Korea announcement

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