ケンブリッジ・アナリティカ社めぐる疑惑 これまでの経緯
ゾーイ・クラインマン BBCニュース・テクノロジー担当記者

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不正疑惑、心理操作、データ悪用などを含む驚くべき物語が、国際的な激しい反応を引き起こしている。
テクノロジーの巨人フェイスブック社と、データ分析を専門とするケンブリッジ・アナリティカ社は、個人データの収集と使用、そしてそれらが2016年の米大統領選や英国の欧州連合(EU)脱退に関する国民投票の結果に影響したかどうかをめぐる激論の中心にいる。
両社はいかなる不正も否定している。
ケンブリッジ・アナリティカ社はいかにしてその不正な企業戦術を告発されたのか
英チャンネル4ニュースは、データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカ社重役に面会すべく、覆面記者を送り込んだ。
同社はドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利を助けたとされていた。
記者は、地元の選挙に影響を及ぼしたいと望むスリランカ人のビジネスマンに扮した。
ケンブリッジ・アナリティカ社のアレクサンダー・ニックスCEOは、政敵の信頼性を傷つける方策として、対立候補に娼婦を送り込んだり、賄賂を受け取らせて、その様子をカメラに収めるといった、同社のやり方を例示している様子を撮影されたもようだ。
ケンブリッジ・アナリティカ社は同社の不正に関する主張のすべてを否定し、映像は「編集され筋が用意され、会話の性質が大きくゆがめられている」と表明した。同社は、会話は記者によって仕向けられたものだと主張した。
ニックス氏は、「ケンブリッジ・アナリティカ社は人をわなにかけたり賄賂を送ったり、そしていわゆる『ハニートラップ』を認めても実施してもおらず、いかなる目的でも虚偽の資料を用いていないと、私は断固として言わなくてはならない」と語った。
フェイスブックが果たした役割は
2014年、フェイスブック上で、性格のタイプを診断する、あるクイズがユーザーに勧められた。
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このクイズはケンブリッジ大学の教員であるアレクサンダー・コーガン氏によって開発された(ケンブリッジ大学とケンブリッジ・アナリティカ社には何のつながりもない)。
当時のアプリやゲームによくあったように、クイズは実際にそれに答えたユーザーのデータだけでなく、回答したユーザーの友達に関するデータも収集するよう設計されていた。
フェイスブックはその後、開発者がこの方法で収集できるデータの量を変更している。
ケンブリッジ・アナリティカ社で働いていたクリストファー・ワイリー氏は、27万人がクイズに答えたことで、主に米国に住む約5000万人分のデータが、フェイスブック上の友人ネットワークを通じてユーザー側にはっきりと意識されないまま収集されたと主張した。
データはケンブリッジ・アナリティカ社に売却され、人々の心理学的な輪郭を描き出すとともに、彼らに親トランプ的な素材を送り届けるのに利用されたとワイリー氏は主張している。
ケンブリッジ・アナリティカ社は、大統領選のトランプ陣営に提供されたサービスのなかで、これらのデータは一切使われていないとしている。
このことはフェイスブックの規約に違反しているのか
当時、データはフェイスブックの仕組みを使って収集されていたし、他の多くの開発者も利用していた。ただ、データを第三者に共有することは開発者にも認められていなかった。
もう1つの主要な論点は、性格診断クイズを直接回答した人であっても、それが潜在的にドナルド・トランプ氏の選挙陣営に共有されることは分からなかっただろうことだ。
フェイスブックは、ルール違反があったことを認知したら、アプリを消去し、情報が削除されたことの保障を要求すると述べている。
ケンブリッジ・アナリティカ社は、データを使ったことはないし、収集したデータはフェイスブック社から消去しろと言われたときに消去したと主張している。
フェイスブック社と英国のデータ保護を管轄する情報コミッショナー事務局(ICO)はともに、データが適切に使用不能となっているかを確認したいとしている。ワイリー氏は、データは使用不能になっていないと主張している。
各国政府の反応は
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フェイスブックの創立者マーク・ザッカーバーグ氏を議会に召喚しようとする声もある
複数の米上院議員は、フェイスブック社がどのようにしてユーザーを保護しようとしているのか、同社のマーク・ザッカーバーグを議会で証言させることを要求している。
欧州議会の議長は、データが悪用されていたかどうか調査するかもしれないと語った。
テリーザ・メイ英首相の報道官は、メイ首相がこの新事実に「非常に関心を持っている」と語った。
自分のデータを保護するにはどうすればいいのか
あなたのデータにアクセスできる人を制限したいなら、以下のことがらに気をつけると良いだろう――。
- アプリ、特に、あなたのフェイスブックアカウントにログインしようとするものに気を払うこと。そういう種類のアプリは多くの場合、広い範囲の許可を求めてくるし、多くはあなたのデータを取得するために設計されている
- 広告ブロッカーを使い、表示される広告を制限すること
- フェイスブックのセキュリティ設定を確認し、何が可能になっているかを確かめること。アプリの個別設定もチェックし、あなたの友達やあなた自身について、必要以上の情報取得許可を与えていないかみること
- 包括的なものではないにせよ、フェイスブックが持っているあなたのデータは、あなた自身も複製してダウンロードすることができる。ダウンロードボタンは、トップページで「設定」をクリックすると表示される画面の下部にある。ただし、もしあなたの端末がハッキングを受けていた場合、フェイスブックのサーバー上にあるあなたのデータより、PC本体にあるもののほうが、弱いセキュリティ状態にあることには留意すること
もちろん、単にアカウントを消去し、フェイスブックを去ることもできる。ただし、啓蒙団体「プライバシー・インターナショナル」は、プライバシーに関する懸念はソーシャルネットワーク以外にも広がっていると警告する。
「いま関心を持たれているのはソーシャルネットワーク上でサードパーティ(自分ともソーシャルネットワーク提供企業とも異なる第三者企業)によって利用されることからいかに自身のデータを守るかですが、それに限らずあなたのデータは常に利用されているのです」と同団体の広報担当者は語る。
「あなたの電話に入っている多くのアプリが、位置情報や全電話帳などのデータにアクセスする許可を求めてくる。ソーシャルネットワーク上の懸念は、氷山の一角でしかない」