リベリア――肌の色で市民権が決まる国

ジョナサン・ペイェ=レイラ BBCアフリカ、モンロビア

A Liberian boy plays with a ball as international Liberian football star, George Weah plays a match on a dusty pitch at the Alpha Old Timers Sports Association in Paynesville in Monrovia on April 30, 2016 Image copyright AFP

トニー・ヘイジさんは50年以上リベリアで暮らしている。

リベリアは、彼が大学に通った地だ。彼が妻となる人に出会った地だ。彼がビジネスで成功を収めた地だ。

たくさんの人々がこの国の不安定な日々から逃げ出しても、彼はとどまり続けた。彼は、自身が愛し、ふるさとと呼ぶ国の成功を見届けようと固く決意していた。

しかしヘイジさんは、リベリアでは二級市民だとされている。実際、彼は市民ですらないのだ。肌の色と、家族のルーツがレバノンにあるという理由で、リベリア社会の正式な一員となることを妨げられている。

「彼らは私たちを奴隷にするだろう」

アフリカ西岸にあるリベリアは、米国での想像もできないような苦境から脱出し、アフリカ大陸に戻ってきた解放奴隷の居住地として建国された。

だから、もしかすると、「解放された有色人種の避難所かつ安息の地」に憲法がつくられたとき、アフリカの血統を持つ人のみに市民権を制限する条項が加えられたのは驚くにはあたらないのかもしれない。

数百年後、リベリアの新しい大統領、元サッカー選手のジョージ・ウェア氏は、この規則を「不必要で、人種差別的で、不適切だ」と表現した。

その上ウェア大統領は、人種による差別は、「自由」を意味するラテン語「liber」に由来する「リベリアのそもそもの定義に矛盾する」とも述べた。

この表明は、リベリアの一部に衝撃を与えた。

「白人は黒人リベリア人を絶対に奴隷化するだろう」と、実業家のルーファス・ウラグボさんはBBCにはっきりと語った。

Image caption 憲法にある肌の色に関する条項をなくすことに反対するフッビ・ヘンリースさん

ウラグボさんは、黒人だけに認めている市民権をいかなる形で拡大することも、リベリア人が自ら自国を成長させる機会を損なうのではと恐れている。

特に、他国から来た人に私有財産を認めるのは危険だろう、とウラグボさんは言う。

このような恐怖を公に語るのは、ウラグボさんだけではない。新たな権利団体「非黒人の市民権と土地所有権に反対する市民活動」が、大統領の計画に抗うべく設立された。

「全ての国に、建国の土台となった基盤がある。その基盤を弱体化してしまったら、国は絶対に崩壊する」と団体のリーダー、フッビ・ヘンリースさんはBBCに語った。

ヘンリースさんは、ウェア大統領は「リベリア人のための正しい政策に心を注ぐべきだ」 とした。

「いま最優先で注力すべきことは、リベリアの商業や農業、教育を軌道に乗せることであって、非黒人に対する市民権や土地所有権についてではない」とヘンリースさんは語った。

ウェア大統領が憲法を変える以外にも困難な仕事を抱えているのは事実だ。

豊富な天然資源を抱えているにもかかわらず、リベリアの2017年の1人当たり平均年収はわずか900ドル(約9万4500円)で、228カ国中225位だった。

比較すると、1人当たり平均年収はアメリカが5万9500ドル、イギリスが4万3600ドルとなっている。

実際、リベリアの国内総生産(GDP)の3分の1は国外在住のリベリア人から納められたものだ。いくつもの家族が、米国からの送金に完全に依存している。

ウェア新大統領は、この状況に対する評価を率直に述べている。「リベリアは破産状態にあり、私はそれを修復する」。

長年続いた内戦や、2014年に起きたエボラ出血熱の大流行が引き起こした壊滅的な影響の後にもたらされたこの約束は、ほとんどのリベリア人の耳に心地よく響いている。

しかしヘンリースさんは、今法律を変えることは、2歳の少年(リベリア人)と45歳の大人(外国人)にボクシングをさせ、フェアな戦いが行われるかどうか見守るようなものだと言う。

「大人は小さな子供を不当に扱うだろう」とヘンリースさんは語った。「リベリア人のビジネスは外国人のそれと同じレベルにないのだ」。

調和

外国人に対する恐怖心は新しいものでは全くない。レバノン人コミュニティーは慣れている。

「もしかすると、脅威として受け取る人もいるかもしれない。外国人がやってきて、奪い取っていくと」とヘイジさんはモンロビアの自宅からBBCにか語る。「レバノン人コミュニティーはそうじゃない」

リベリアのレバノン人コミュニティーは1970年代、1万7000人もの規模を誇っていた。リベリアの長い内戦を経て今、その数は約3000人。人口400万人のリベリアでは大海の一滴にすぎない。

ある時には、レバノン人たちはリベリア全土でビジネスをしていた。今でも、レバノン人コミュニティーはリベリアを代表するいくつかの最上級ホテルやビジネスを所有している。

しかし、とヘイジさんは言う。これらのビジネスがリベリア生まれの同胞を脅かすことはない、と。

「レバノン人はこの国のあらゆるところにいるが、いかなる脅威でもない。私たちレバノン人は、リベリアの人々と共に生きることを楽しんでいる」とヘイジさんは語った。

「リベリア人はいい人たちだ。私たちは何年も共に生きてきたし、国籍を越えた結婚も多くあった。この国の記録が、レバノン人を擁護してくれる」

実際のところ、ヘイジさんはウェア大統領の提案はさらなる協働への道を開くだろうと考え、前進するべきだと信じている。

ただそれ以上にこの提案は、ヘイジさん個人にとって大きな意味を持つだろう。

「いつか条項が変更されることを、ずっと望んでいた」

「私は15歳の誕生日をリベリアで祝った。リベリアで暮らしてきたことを後悔したことはない」

「私は幸せだ。リベリア人でないからではない。私が幸せなのは、ウェア大統領がこの国の未来を見据えているからだ」

(英語記事 Liberia - the country where citizenship depends on your skin colour

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