SNSやりすぎ……という時の「やりすぎ」とはどれくらい?

ソフィア・スミス・ゲイラー記者

テクノロジー依存症は、タバコやアルコールを含む薬物中毒と似ているという Image copyright Getty Images
Image caption テクノロジー依存症は、タバコやアルコールを含む薬物中毒と似た構成要件を含むことが分かった

ソーシャルメディア(SNS)依存は、果たして精神疾患なのか? ソーシャルメディアはモラルの危機的状況を引き起こすものなのか、それとも心の糧なのか。研究が進んでいる。

「自分はSNS依存で」と自称しても、普通はあまり他の人から心配してもらえない。実際、ツイッターやインスタグラムではよく目にする自己紹介だ。試しにLinkedInのプロフィールにそう書いてみれば、情報通のデジタルネイティブを探しているメディアや出版会社から興味を持たれるかもしれない。しかし想像してほしい。いつの日か「SNS依存症」が誉め言葉でもなく、ジョークでもなく、精神科医が下す診断名になったら?

SNSに依存している?

SNS依存は自称にせよ他称にせよ、決してほめ言葉ではない。年が改まり、みんなが活動的になり、ネット上で過ごす時間が減っているからかもしれない。あるいはSNSは心の健康に健康によろしくないからかもしれない。

その一方で、SNSと心の健康に関する学術研究は増えつつある。たとえば、SNSの過剰使用や不適切使用は、病気になりえるのか。ひいては、それは精神疾患になり得るのかどうか。

精神疾患を分類する2大組織は、世界保健機関(WHO)と米国精神医学会だ。どのような中毒症状でも、それが病的行動とみなされるには、一定の基準に見合わなくてはならない。そしてそれを裏付けるための、膨大な研究が必要だ。たとえばゲーム依存はインターネットと同じくらい前から問題として認識されてきたが、WHOがついに国際疾病分類(ICD)に加える方針を決めたのは今年1月のことだ。

数十年にわたりゲーム依存を研究してきたノッティンガム・トレント大学のマーク・グリフィス教授は、ギャンブル依存症やインターネット依存症、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどSNSの過剰な(場合によっては危険な)使用についても調査を重ねてきた。

「SNSに没頭するあまりに、生活のそれ以外のことすべてを無視するようなるのか。少なくとも依存症にはなり得ると思う」

こう話すグリフィス教授は研究で、「SNS依存」などの強力なテクノロジー志向には、たばこやアルコールなどの化学物質への依存症に関連するすべての行動兆候が関係していることを発見した。気分の変化や引きこもり、葛藤や再発などだ。

最も重要な要素は、SNSの健全な利用と、自分の生活を損なう利用方法との違いを、当人が区別できるかどうかだ。

利用時間の制限は意味がない?

グリフィス教授は、「例えば、ビデオゲームを例に取ると、かなり過剰なゲーマーを多く見てきたが、生活にマイナスとなる悪影響要素はあまり知られていない。ゲーム三昧の生活を2年続ければ肥満や、もしくは座りっぱなしのせいで何らかの健康問題が起きる可能性はある。しかし、依存症となるとどうだろう。強烈な熱意は人生を豊かにする。一方で、依存症は人生を消耗させる」と話す。

つまり、いくらゲームに熱中しようが、その人の仕事や対人関係に影響しない限り、心配する必要はない。なのでグリフィス教授に言わせると、SNSの利用時間制限は「単なる目くらましに過ぎない」。

「2人の人が同じことをしていても、片方に仕事があって、パートナーがいて、子供が2人いれば、話はまったく変わってくる」

ということは、SNSを何時間使ったかどうかだけでは、その人のSNSとの関係が適正かを正確には測れないということだ。「BBCフューチャー」はツイッターでフォロワーに、ソーシャルメディアで時間の「使いすぎ」はどれくらいだと思うかアンケートをとってみた。その結果、多数票を集める答えはなかった。

もちろんこの結果は、自主的に回答した人たちの答えをまとめたに過ぎず、世間一般の意見を必ずしも反映しない。それでも、興味深い結果だった。

Image caption ツイッターで「BBCフューチャー」のフォロワーに、何時間以上だとSNSのやりすぎだと思うかアンケートをとった

アンケートに答えた554人のうちの約4割は、2~3時間以上は使い過ぎだと答えた。しかし、大半の人は少なくとも1日2時間以上を、SNSやチャットに使っていることが分かっている。

インターネット利用者の大多数は、決してSNSを病的に使っていない。それだけに、おそらく2~3時間は決して使い過ぎではないはずだ。

英国の15歳の若者の3人に1人以上は、1日6時間以上ネットを使い、そのほとんどの時間をSNSに費やしている。それだけ長時間使っていても、この若者たちが精神的な病気を抱えているわけではない。ネットに使う時間は一要素に過ぎない。明らかに、ほかにも検討すべき要因があるのだ。

では、利用時間が問題でないとしたら、ほかにSNS依存を定義づけるものはなにか。あるいはどういう人が依存しやすいか、何が理解の助けになるのだろうか。

グリフィス教授と同僚のダリア・カス博士は2011年、SNS依存症と教授が呼ぶものについて文献がまだ3本しかなかった当時、初の調査論文を発表した。2人はその際、社交的な人はSNSを「社会性の拡大」に使う一方で、内向的な人は「社会性の補い」に使うようだと発見した。SNSの利用時間が増えれば、実生活での人との関わりは減ることも判明した。

グリフィス教授たちはさらに2014年、SNSは利用者に継続的報奨を与えると別のレビュー論文で指摘した。つまり、利用者は不安定な気分を和らげるためSNS利用を増やし、それが心理的依存につながることもあるというのだ。

さらに2017年の大規模な全国的調査で、依存症的兆候を示す人は女性や若者、独身に多いことが分かった。その人たちは教育水準や収入、自尊心が低い傾向にあることも判明した。

グリフィス教授は、「SNSは社会的な交流の場だ。一般的な性差やジェンダーの差の話をすれば、典型的に女性の方が男性よりも、社交的な傾向がある」と説明する。

グリフィス教授は、SNS利用が依存症につながる要因は利用時間ではなく、過剰利用の内容と文脈にあるのではないかと考えている。しかし教授は、SNSと心の健康に関する英王立医学協会の会議では、SNS依存症の原因はいまだに不明だと結論付けた。

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Image caption 社交的な人はSNSを「社会性の拡大」に使う一方で、内向的な人は「社会性の補い」に使う傾向があるという

取り残される不安はどうか

SNS依存は、取り残される不安(FOMO=Fear of missing out)と関係があるかもしれない。スマートフォン依存症も関係するかもしれない。携帯電話を常に持っていないと不安になる心理状態も同様だ。

しかも、これまでのSNS研究データはフェイスブックに偏っており、インスタグラムやスナップチャットなどの写真をメインに使うプラットフォームに関するデータはほとんど獲られていない。

このため、SNS依存を精神疾患と認定するのは、まだかなり時期尚早だ。オックスフォード大学のソーシャルメディア心理学者、エイミー・オーベン氏は、ソーシャルメディアの過剰利用を依存症と定義することには、今のところ非常に躊躇(ちゅうちょ)していると話す。

「証拠がまだかなり少ないので、SNSの影響が良いか悪いかさえ、判断は難しい。通常の振る舞いを、過度に病気扱いしないようにしないといけない」

いつの日か疾患分類されるのかどうかはともかく、SNS使用にマイナス面があるのは明らかだ。研究によると、1日に2時間以上SNSを使用する若者は、心の不調を訴えがちだという。

たとえばインスタグラムには、「上昇志向が強い」というよりはむしろ、他の利用者に劣等感を抱かせてしまう、過度なフィルターがかかった疑似生活の例があふれている。

英国のアンケート調査で、インスタグラムが若者の心の健康に最も良くないSNSだと評されたのは無理もないことだ。その一方でユーザー数は増えており、現在は全世界で8億人以上が使っている。

SNSの使用と鬱(うつ)に直接的な関係があることは分かっているが、SNS使用が必ずしも後ろ向きなものではないという研究もある。

オックスフォード大学の社会科学者、アンドリュー・プリジビルスキ博士らによる2017年研究は、デジタル画面を見る時間と精神的な健康状態の相関関係をグラフにした場合(「精神的な健康状態」が縦軸に、「1日にデジタル画面と対面する時間」が横軸)、逆U字を描くことを発見した。

博士はこれをゴルディロックス仮説と呼ぶ(訳注・「ゴルディロックス(金髪ちゃん)」は童話「三匹のクマ」に登場する女の子)。この研究によると、スマートフォンやパソコンの使用時間増加は、良好な健康状態と正の相関にあるが、それには限界がある。限界点以降は、グラフが示すようにスマートフォンやパソコンの使用時間は良い健康状態と負の相関関係になる。

グラフの線は凡例の上から色別に、「平日にストリーミング視聴」、「週末にストリーミング視聴」、「平日にゲーム」、「週末にゲーム」、「平日にパソコン」、「週末にパソコン」、「平日にスマートフォン」と、行動の種類を示す。

Image copyright Andrew Przybylski
Image caption 画面を見る時間が長いと精神的な健康状態を向上させることをグラフは示しているが、それはある一点までのことだ(出典:アンドリュー・プリジビルスキ )

節度ある利用は有益

節度あるデジタルテクノロジーの利用は「本質的に害はなく、ネットでつながれた世界において有益であり得る」というのが、研究チームの結論だ。プリジビルスキ博士はBBCフューチャーの取材に対して、「自宅でSNSが使えない、あるいはSNS禁止の家庭だった場合、その家庭環境や幼少期は、SNSが使える家庭や幼少期とは根本的に異なるものとなる可能性がある」と話した。

「SNSが子供の生活の一部になったように思える時点があるが、使用時間が1日5~7時間に上らない限り、問題は起きない」と博士は付け加えた。

問題になり始める、あるいはオンラインに長くい過ぎるようになったら、ポップアップ警告のようなものが一つの解決策として有効だ。グリフィス教授によると、ポップアップ警告はオンラインの賭博サイトで使われており、しかも成功しているという。

「ポップアップ警告を法人用に設計する際、気をつけたのは、そのトーンだ。批判しないし、けんか腰にならないような表現を心がけた。他の人と比べてあなたの行動はどうか知らせるために、基準となる情報をメッセージに含める。例えば、あなたはこれだけの時間ギャンブルを続けている。それは通常の人の10倍だ――などと。良いか悪いかの価値判断はしない」

ユーザーの自己評価を促すこうした方法を使えば、同じような流れをSNSを取り入れることができる。社会的比較によって、自分の使用時間が他人と比べてどうなのか、個人個人が理解できるようにするのだ。10代の若者が昼間にオンラインで何時間も過ごすのは大丈夫かもしれないが、「いまオンラインの同世代は、同世代全体の3%です」というメッセ-ジが午前3時に表示されれば、これはまずいと自覚するかもしれない。

SNS依存が疾患としていつか認定されるとして、認定されてから自己点検を始めて、使いすぎは思った以上に悪影響をもたらしていると気づいても遅すぎる。なので今のうちから多少の節制をしていたほうがよさそうだ。

(英語記事 How much is 'too much time' on social media?

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