化学兵器の使用をどう調べるのか? シリア・ドゥーマ「攻撃」疑惑

ジョル・グンター BBCニュース

専門家はグータで2013年にあった攻撃に神経剤サリンが使われたことを確認した Image copyright Reuters
Image caption 専門家はグータで2013年にあった攻撃に神経剤サリンが使われたことを確認した

シリアに到着した化学兵器禁止機関(OPCW)の査察官は17日、首都ダマスカス郊外ドゥーマ市街にある化学攻撃疑惑の現場へ入った。

救助隊員や反政府活動家によると、政府軍の飛行機は7日、有毒な化学物質で満たされた、たる爆弾をドゥーマに投下した。40人以上が死亡、100人以上がけがをしたという。

現地の医師団は、口から泡を吹く、肌や唇が青くなる、角膜熱傷やけいれんなどの症状がある患者を診察していると報告した。医師団によるとこの症状は、塩素やおそらく神経剤に触れたことを示すという。

シリア政府とその友好国ロシアは、疑惑は捏造(ねつぞう)だとしたが、OPCWの事実調査団に疑惑の調査を求めた。

探すのは3種類の証拠

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シリアの化学兵器疑惑 子供たちにも被害

ドゥーマ入りした査察官たちは、攻撃に化学兵器が使われた証拠を集めなくてはならない。しかし、攻撃から約2週間たった現場で、しかも化学攻撃疑惑で非難されている軍隊自身が支配する環境の中で、それはどのような作業になるのか。

過去にシリア国内で化学兵器攻撃を調査した経験のある、英化学兵器専門家のハミッシュ・デ・ブレットン・ゴードン氏によると、査察官たちは3種類の証拠を探すことになる。環境的なもの、生物医学的なもの、記録の3つだ。

環境的証拠に含まれる可能性があるのは、軍需品の残骸や土壌サンプル、建物のコンクリート片だ。生物医学的証拠には被害者の血液や髪の毛、尿が含まれる。記録証拠は、目撃証言や動画、それにソーシャルメディアへの投稿が該当する。

「査察官たちは見つけたあらゆる兵器の残骸を分析試料として採取するだろう」とデ・ブレットン・ゴードン氏は話す。「可能な限り多くの人に話を聞き、目撃情報を確かめようとするだろう。負傷者や死者を発見することも試みるはずだ」。

負傷者や死者が鍵となると、同氏は言う。生物医学的試料が、もっとも信頼のおける化学薬品使用の証拠となる。

同氏はまた、「尿は塩素の存在を確認するのによい試料となることもある。そして血液の試料は、毛髪と同様に神経剤の存在を明らかにする」とも語った。

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Image caption CBSニュースはドゥーマ攻撃で標的になった疑惑のある建物の屋上で黄色いガス缶を発見した

神経剤サリンは2013年8月、シリアの首都ダマスカス郊外のグータ地域で使われ、数百人の死者を出した。この時は、OPCWの専門家は国連調査団の一員として化学兵器使用から2日後に使用地域への立ち入り許可を得た。専門家たちは非常に多くの生物医学的証拠を生存者から手に入れた。環境的試料も同様に多数収集した。

この調査団はアンゲラ・ケイン前国連上級代表(軍縮問題担当)が率いた。

「グータで私たちがみつけたのは、サリンのとても複雑な合成物だった」とケイン氏は語った。「高純度だと、サリンはとても早く蒸発してしまい、検出するのは難しい。しかし2013年の攻撃では、サリンは他の化学物質と混ぜられており、より長い時間地面に残留していた」。

ドゥーマ住民から疑惑を立証する証拠を見つけ出すのは、より難しいかもしれない。米政府は17日、OPCWの査察官のドゥーマ市街への立ち入りの遅延は、地面に残留する証拠を「より劣化させる」と警告した。

ロシア軍の隊員は先週、反政府勢力が撤退を余儀なくされた攻撃地域を訪れたと考えられている。OPCWに駐在する米大使は「OPCW事実調査団の取り組みを妨害する意図を持って、ロシア軍が同地域に細工をした」かもしれないと恐れていると語った。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は一切の干渉を否定している。

デ・ブレットン・ゴードン氏によると、理論上、化学攻撃を受けた地域を浄化して痕跡を消したいなら、まずは砲弾など武器の残骸を発見し撤去する必要がある。次に、薬品に汚染されたあらゆるものをこすって洗い、残留物を取り除く。直観に反して、これには塩素系の溶剤がよく使われる。

目撃者を沈黙させたり、被害地区から移動させる手も、考えられる。18日付の英紙ガーディアン記事からは、ドゥーマにいた医療チームが脅され、コミュニケーションアプリ「WhatsApp」のやりとりを調べられた様子がうかがえる。

証拠の別の供給源となるのが死体だ。化学兵器禁止条約の下で、OPCWの査察官は望むあらゆる種類の証拠を、死体も含めて、手に入れる権利を持つ。しかしまずは、死体が発見されなければならない。

「もし査察官が一体も死体を見つけられなかったら、そのこと自体が意味を持つ」とデ・ブレットン・ゴードン氏は述べた。「もし死体が消えたのなら、なにかがとても変だという、非常に強い兆候になる」。

ドゥーマでは、査察官はこれら全ての業務をシリア政府とロシア軍の支配下で行わなくてはならない。業務の遂行をすべて撮影すること、そしてあらゆる証拠をしっかりと守ることが重要だとケイン氏は述べた。

「試料は常に自分で保管し続けなければならない」と同氏は話した。「絶対に視界から離してはならない。どこにいても、飛行機の機上でも、研究室までの道のりのどこでもだ」。

(英語記事 Douma 'attack': How do you test for chemical weapons?

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