列車、船、飛行機 金正恩氏はどのように旅しているのか

エアフォース・ウンと呼んではいけない。専用機の公式な名称は「チャムメ1号」だ Image copyright KCNA
Image caption エアフォース・ウンと呼んではいけない。専用機の公式な名称は「チャムメ1号」だ

中国の大連空港に止まった、謎めいた北朝鮮の飛行機は、7日から8日にかけて多くの推測の対象となった。

飛行機は最終的に、中国の習近平国家主席と大連で会談していたことがわかった北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のものだと確認された。

金氏の増加する国際社会への関与は、それぞれの外国訪問で違う交通手段がみられることで、より広い世界に金氏の移動手段への関心を呼び起こしている。

Image copyright KCNA
Image caption 中国の大連に到着した金正恩氏は、儀仗兵の出迎えを受けた

飛行機はありふれたイリューシン製

金氏による今週の訪中は、同氏が権力を掌握して以降、確認された初めての海外への空旅だ。しかしメディアは、北朝鮮国内の旅行に以前からプライベートジェットを利用していると報じている。

金氏が中国を訪れるのに登場した飛行機は、ソビエト連邦が製造した長距離飛行機、イリューシン62型(Il-62)だ。 北朝鮮の専門家はウェブサイト「NKニュース」で、この飛行機は北朝鮮に生息するタカの在来種の名前をとって「チャムメ1号」と呼ばれていると述べている。

Image copyright AFP
Image caption イリューシン62型飛行機は、今年初めに韓国の平昌で開催された冬季五輪の開会式に北朝鮮代表団を運ぶのに使われた

飛行機の白い外観には北朝鮮の正式国名が朝鮮語で両側に書かれており、国旗も両側に描かれている。尾翼には赤と青の円の中に赤い星があしらわれている。

飛行機は現代的な内装を持つ。金氏は時々、機内で仕事をしたり会議したりする様子を写真に撮られている。

Image copyright KCNA
Image caption 金正恩氏の専用機では喫煙が認められている

チャムメ1号は2月、金氏の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏を含む北朝鮮高官の五輪代表団を韓国に運んだ際に注目を集めた。

韓国の聯合ニュースはこの航空便に、韓国と北朝鮮が2000年6月15日に署名した南北共同宣言の象徴的引用と考えられる識別番号「PRK-615」が使われたと報じた。

Image copyright Rodong Sinmun
Image caption 韓国空軍の複葉機で操縦席を見る金正恩氏。金氏は操縦に興味を抱いていると考えられている

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビ(KCTV)で2014年に放送されたドキュメンタリー番組では、金氏は国営航空会社の高麗航空のロゴをあしらったウクライナ製のアントノフ148型(AN-148)飛行機も使っている。

金正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)氏と祖父の金日成(キム・イルソン)氏は空旅を避けた。報道によると、空を飛ぶことへの恐怖が理由という。 金正恩氏にそのような問題はないとみられ、KCTVは2015年、金氏が「自国製の」軽飛行機を操縦したり、AN-2型軍複葉機の操縦席に座ったりする動画も放送している。

Image copyright AFP
Image caption 緑の車体に黄色い線が入った列車は北京へ伸びる線路に現れ、激しい憶測の嵐を引き起こした

大きな列車

金正恩氏が今年3月に中国の北京を訪れた時には、同氏の父親である金正日氏が2011年12月に死去するまで海外旅行に使っていたのと同じものと考えられている「特別列車」を利用した。

金正恩氏が訪中に用いた「深緑の車体に黄色い横線が入った列車」の動画は、中国のSNS「新浪微博」で広く拡散し、金正日氏の電車との比較に拍車をかけた。

韓国の保守系日刊紙、朝鮮日報は2009年11月、金正日氏の武装列車は約90両の車両からなると報じた。列車には会議室や来客向けの接見室と寝室があり、会議用に設置された衛星電話やテレビもある。

国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、金正日氏は平壌の外へ地方視察にいく道中、専用列車の中で死亡したと伝えている。

Image copyright KCNA
Image caption 金氏の列車には十分な空間がある。あなたがサンゴ色の座椅子を気に入っているならの話だが

情報筋は朝鮮日報に、KCTVが2011年に放送した列車の動画について、車内の大部分を占める白い内装は「最高級の素材を用いて外国の職人が作った特注」と思われると話した。

金正恩氏の列車も似た内装をしているが、ソファーや座椅子は現在、豪華なサンゴ色になっているとみられる。

国営メディアの報道は、金正日氏と金正恩氏の親子は共に、外国訪問中に列車を会議場所に使ったことを示している。

Image copyright KCNA
Image caption 金氏のメルセデス車は3月の北京訪問でタクシーの役割を果たした

メルセデス・ベンツを買ってくれないか?

金氏は北京訪問中、市内の移動に個人所有のメルセデス・ベンツSクラスを使ったと報じられた。

韓国の日刊紙、中央日報によると、車は特別に金氏の専用列車で運ばれたという。

同紙は、この車は2010年に製造されたもので、約20億韓国ウォン(約2億500万円)すると伝えた。

Image copyright KOREA SUMMIT PRESS POOL
Image caption 金氏のメルセデス車には、南北首脳会談で金氏を守ったボディガードの一団を乗せるスペースはなかった

金氏お気に入りのこのSクラスは、4月27日に板門店で開催された南北首脳会談で、金氏を乗せ、車を囲んで走るボディガードとともに軍事境界線を越えたことで注目された。

報道によると会談での金氏の車列には、移動中に使われる私用のトイレ車も含まれていたという。

この事実は、ソウル市内の企業が運営するウェブサイト、デイリーNKによる2015年の報道でも言及された。報道によると、特注のトイレは金氏を運ぶ武装車の車列にある車の1つに備え付けられている。

Image copyright KCNA
Image caption ロックバンド、デュラン・デュランの楽曲「リオ」のミュージックビデオのごとく、船上で金正恩氏だけがクッションの上に座っている

不思議なヨット

北朝鮮の国営メディアは、船、潜水艦、バスやスキーリフトまで、様々な乗り物に乗る金氏の様子をあらわにしてきた。

金氏はそれ以外の交通手段も使っていると噂されているが、外国訪問においてはまだ確認されていない。

KCNAが2013年5月、金氏が軍運営の漁場を視察した際の写真を公開した際、NKニュースは背景にあるヨットに気づいた

約700万ドル(7億7000万円)と見積もられるこのヨットが、金氏所有のものかどうか、そして高級品に関する国際的制裁にもかかわらずどのようにして輸入されたのかも、明確には確認されなかった。

Image copyright KCNA
Image caption 北朝鮮の誰が、これほどの大きさの高給ヨットを持てる可能性があるのか?

しかし、多くの海外メディアが値段から判断し、国の支配者である金氏を最も可能性の高い所有者と指摘した。

米ワシントンを拠点とする放送局ラジオ・フリー・アジアは2015年6月、調査員が北朝鮮の平康(ピョンガン)郡にある金氏の湖畔の別荘に新しいヘリパッドがあるのに気づいたと報じた。

米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院の米韓研究所で働くこの調査員は、このヘリパッドが金氏の家族か訪問者によって使われたかもしれないと示唆した。

Image copyright KCNA
Image caption 金正恩氏は煙草を1本持って、北朝鮮の馬息嶺(マシクリョン)スキー場のリフトに乗った
Image copyright KCNA
Image caption かつてソ連軍が使用していたこともある、北朝鮮海軍の古い潜水艦の1つに乗る金氏
Image copyright KCNA
Image caption 金正恩氏と妻の李雪主氏は今年初め、平壌近郊で深夜バスに乗った

取材:シュレヤス・レディ 追加取材:アリステア・コールマン

BBCモニタリングは世界中のテレビ、ラジオ、ウェブ、そして紙メディアからのニュースを報道・分析します。ツイッターアカウントはこちら、フェイスブックはこちら

(英語記事 Trains, boats and planes: Kim Jong-un's modes of transport

関連トピックス

この話題についてさらに読む