【寄稿】ロイヤル・ウェディングはアフリカ系米国人にとって画期的だった

バレット・ホムズ・ピットナー 作家、ジャーナリスト

俳優のイドリス・アルバさん(右)が婚約者のサブリナ・ドゥーレさん(右から2番目)と共に英ウィンザー城へと到着。米人気司会者オプラ・ウィンフリーさん(左から2番目)の姿も見える Image copyright PA
Image caption 結婚式会場に到着した英俳優イドリス・アルバさん(右)が婚約者のサブリナ・ドゥーレさん。米人気司会者オプラ・ウィンフリーさん(左から2番目)も出席した

英王室のハリー王子とメガン・マークルさんの結婚式は、多様性が目にもあらわな形で示された式典だった。欧米化された世界の大半の人が切望してきた、進歩を象徴するものだった。(以下、文中敬称略)

私はアフリカ系米国人として、オプラ・ウィンフリーが式に参列したのを見てうれしかった。オプラはもうずっと前から、特に黒人社会の中では、アメリカの王族のような存在だ。

オプラが俳優イドリス・アルバと並んでウィンザー城の結婚式会場に到着する様子が、この日の式典の空気を決定づけた。そして、米国の黒人と英王室の間にそれまで存在しなかった結びつきを、確かなものにした。

ハリー王子は、他のどの英王族よりも、米国人には親しみやすい存在だ。王子はバラク・オバマ前米大統領の一家と仲良くなったし、マークルさんと婚約する前にはラスベガスのパーティーによく顔を出していた。王子は他の王族より近づきやすく、堅苦しくないので、複数人種の米国の著名人と結婚するのは納得がいく話だ。米国人として私は、招待客に対してだけではなく、ロイヤル・カップルにもつながりを感じた。

誓いの儀式のあと私たちは、10代のチェロ奏者シェク・カネー=メイソンの演奏や、キングダム合唱団が歌う「This Little Light of Mine」と「Stand by Me」に感動させられた。「#BlackRoyalWedding(黒いロイヤル・ウェディング)」や「#BlackExcellence(黒人の素晴らしさ)」といったハッシュタグがツイッターで流行し始めた。

様々な大事な瞬間が相次ぐなか、私が最も深く打たれたのは、マイケル・カリー首座主教による説教だった。主教は実に現代的かつ型破りな調子で愛について祈り、かつ即興的に米国の奴隷制度に言及した。どちらも、米国の黒人神学の核心に触れる内容だった。

黒人聖職者が初めて白人信者の前で語るようになったのは、南北戦争の後のことだ。人種差別的な信条を克服した白人信者にとって、黒人聖職者の説教は人生の転機ともなる出来事だった。

南北戦争直後のサウスカロライナ州で、バプテスト派の白人聖職者アイザック・ブリンカーホフは黒人牧師の説教を目にした。ブリンカーホフはその経験について、「無学で文字の読めない男が、キリストの愛、キリスト教の信仰と義務について語っていた。その語る様は、私が教わったことのないものだった」と話していた。

しかし、黒人牧師による説教の仕方は、多くの白人から非難もされた。そして南部の教会は南北戦争後、人種ごとに分離していった。その人種による分断は今でも、かなりの部分が残っている。


アフリカ系俳優のニック・キャノンは結婚式に先立ってBBCを訪れ、「ハリーとメガン、おめでとう、はじけよう!」と興奮をあらわにした。


私は米南部の出身で、家族は今でも、黒人信者が大半を占める教会に通っている。南北戦争後の南部再建からこちら、黒人教会は私たちの社会の屋台骨であり続けた。けれども、教会の中でのメッセージが、私たちのコミュニティーの外でも受け入れられることはめったになかった。

マーティン・ルーサー・キングは、黒人キリスト教哲学を黒人社会の外に伝えることに成功した、数少ない黒人聖職者の一人だ。

黒人牧師が、白人が大多数の集会を前にすることは今でも比較的珍しい。しかし英王室は19日、まさにその光景を世界中に向けて放送した。

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Image caption 愛の力について熱弁した米聖公会のマイケル・カリー首座主教

カリー主教の説教は、愛に焦点を当てた社会は世界をより良いものにできると、私たちに語りかけた。その思いのインスピレーションは、目の前にいる、人種が異なるカップルだと。米聖公会(英国国教会の一派)の教えが、主教の説教の基礎となっている。それに加えて、奴隷時代のアフリカ系米国人の苦難や、キング牧師の哲学、それほど一般的には知られていないフランスのイエズス会士、ピエール・ティヤール・ド・シャルダンの教えなどが盛り込まれていた。

カリー主教の登場は、英王室にとって相当に伝統からの飛躍を意味した。主教の説教に感動したかどうかは別にして、王室をより良いものに変身させる、その一助となるのは明らかだった。

新しくサセックス公爵夫人となった花嫁は、比較的短い間に、英王室を前より親しみやすく多様な存在に変えた。そして、長らく存在してきた制度や組織は、多様性と進歩を受け入れたほうが強くなるのだと示した。

英国が欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に取り組み、米国がドナルド・トランプの政権に対して自己調整している今の時代、いまだに多くの人が多様性を、自分たちの文化を脅かすものと見ているのが明らかになった。それに対してロイヤル・ウェディングは、人種や国籍を超えた愛が、伝統を刷新し、結びつきを強化し、より大勢が自分が参加していると感じるコミュニティー、より大勢が自分の意見が代弁され、大事にされていると感じるコミュニティーの形成に貢献するのだと、私たちに示してくれた。

米国では、多様性と包摂性の高い社会とはどういうものかをオバマ夫妻が示してみせた。英米両国にはあからさまな問題が複数あるが、それでもハリーとメガンの結婚は、人種的により公平な社会を作ろうと英米両国が取り組むなかで、リレーのバトンが手渡されたような感じがするものだった。とても好ましい継承だった。

(英語記事 Viewpoint: The Royal wedding was a landmark for African Americans

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