未来の街はロボットが運営? ドバイや中国では現実に
ジェイン・ウェイクフィールド テクノロジー担当記者

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ドバイの警察ロボット
黒い目で口がなく、犯罪者を特定したり証拠を集める能力を持った警察ロボット――。それはぞっとするような未来を想像させる一場面だ。
制帽さえかぶり、不気味の谷現象(人間らしいロボットや人形を見たときに覚える違和感)を起こしているこの警察ロボットは昨年6月、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国にある世界最高層ビル「ブルジ・ハリファ」の外でお披露目された。
それ以降、警察ロボットはどんなことをしたのか? ドバイとロボット工学の熱い関係は、技術の最先端にこだわる同国の宣伝に過ぎなかったのだろうか?
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ドバイはドローン(無人機)にも大きく投資している
警察ロボットを提供するPALロボティクスはその職務をいくらか明らかにしたが、それは警察官というよりは観光客ガイドに近いものに思われた。
同社はBBCに対し、「このロボットは革新的で人をひきつけるような形で市民を助けるためにドバイ警察に加わった。現在は観光地やショッピング・モールに設置されている」と説明した。
「ロボットはソフトウエアのおかげで、有用な情報を複数の言語で提供でき、リクエストされた興味に応じて人々をガイドできる。さらに、ロボットに内蔵されたマイクでドバイ警察のコールセンターと話すことができるほか、交通違反の罰金支払いといった警察の他のサービスも利用できる」
ドバイの警察ロボットは、地域警察の業務の「スマート化」の一環で導入された。このスマート化施策では、コンピューター制御された無人交番なども計画されている。ドバイ政府は2030年までに、警察におけるロボットの割合を25%まで引き上げたい考えだ。
警察ロボット導入時、ドバイ警察の職員はBBCに対し、「こうしたロボットは24時間年中無休で働ける。退職届や病休、産休も申請しない。午前0時を過ぎても働ける」と話した。
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ペッパーはフランスの鉄道駅でも制帽を被り、時刻表案内をしている
英シェフィールド大学のコンピューター・サイエンス教授ノエル・シャーキー氏は、ドバイ政府と共にロボットを街に溶け込ませることに取り込んできた。
シャーキー教授はBBCに、「これらのロボットは当初、ドバイが高齢者やツアーガイドを支援するために導入される計画だった」と話した。
現在の警察での役割については完全には納得していないという。
「警察に現在位置を知らせる緊急警報ボタンを付ける計画はあり、良い利用法だと思っている。しかし、ロボットを笑いものにしたり殴り倒したりする人々もいるかもしれない」
これには前例がある。2017年7月、米ワシントンでオフィスビルの警備に当たっていたロボットが噴水で「溺れている」のが発見された。
警察ロボットは今のところ初期段階にあるが、シャーキー教授は何年後かには監視ロボットや、爆発物やその他の危険物の検知といった「より厳しい」役割を与えられると推測している。
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深セン国際空港でも昨年、パトロールロボットがお目見えした
世界最大の監視カメラ網を有するという中国でも、ロボットは数多くの鉄道駅や空港に設置されている。
あまりかわいげのない名前が付けられたこの警察ロボット「Eパトロール」は高さ1.6メートルで、河南省の鄭州東駅で「働いて」いる。
このロボットにはさまざまなカメラが内蔵され、報道によると、小さな火元を検知するセンサーも取り付けられている。
またテクロのジー・ポータルサイト「マッシャブル」によると、この警察ロボットは顔認証機能を搭載し、「危険性のある犯罪者や怪しい人物を追跡する」という。
深セン国際空港でも昨年、パトロールロボット「アンボット」がお目見えした。このロボットにはセキュリティーチェックを行うための4つのカメラが搭載されている。
中国国営人民日報によると、いささか気がかりではあるが、このロボットは「帯電性の暴動鎮圧ツール」で武装している。
中国はドローン(無人)革命をけん引している。それだけに、多くの人が宅配便や自動運転のタクシーサービスなど、様々な形でロボットが都市生活で大きな役割を担うと考えている。
ドバイはすでに無人のタクシードローンを試験展開したほか、警察がより速く緊急出動できるよう、ハイブリッドのホバーバイクを導入する計画を打ち立てている。
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2017年9月に披露されたドローンタクシーは、5年以内に実用化する可能性がある
シャーキー教授は、空飛ぶロボット革命に疑問を抱いている。
「ドバイ上空は急速に、不快な混雑に見舞われるかもしれない。『ブレード・ランナー』のように、街の地上部分は陰謀とミステリー渦巻く薄暗い場所になるかもしれない」
しかし同教授は、街ではたらくロボットの拡大は不可避だと信じている。
「街にはロボット向けの役割が多くある。掃除やビルの検査、宅配などがそれだ。しかし今現在、ロボットは高額で壊れやすい」
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米マーブルは、サンフランシスコで食品配達ロボットが開発している。一方、歩道でのロボット使用を禁止しようとする動きもある
10年以内に、街の上空が空飛ぶロボットで一杯になり、小包輸送だけでなく、都市インフラの保守にも使われると確信している人もいる。
リーズ大学で道路上のくぼみを補修できるドローンを設計しているチームの一員、ビラル・カッドー調査フェローは、「我々は3機から成るドローン団を作った。1機が道路を検査し、もう1機が道路を掘って補修の準備をし、3Dプリンターを搭載した最後の1機が保守に当たる」と話した。
リーズ大学のこのチームは、年内にもこのシステムの試験運用を行いたい考えだ。
カッドー博士は、いつか自動運転ドローンが建設現場で広く使われ、現状の「データの山を送り返す」作業だけでなく、より正確に問題を報告できるようになればいいと考えている。
カッドー氏は、街がインフラを保守するドローンで溢れかえる様子を説明してみせた。
「高層ビルに舞い降りてロボットアームで修理したり、街灯の電球を換えたり、通信塔に新しい機器を設置したりするドローンを想像してほしい」
こうしたロボットによって作業員を危険にさらす必要性をなくすだけでなく、都市をより効果的に運営できるという。しかし、障害もあると語る。
「人々はドローンが昼夜を問わずに飛び回るのを嫌がるだろう。また、既存の空域にドローンを組み込むのは難しい」
「技術は目の前にあるが、規制や世間の見方が変わるかどうかという疑問がある」