【サッカーW杯】ロナウド、ポルトガル、スペインを振り回したVAR

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サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会で、今大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)。25日は、このVARがこれまでで最も激しい議論を引き起こした日となった。ポルトガルのフェルナンド・サントス監督は「少し奇妙なことになった」と述べた。

この日行われたサッカーW杯の2試合で、審判は4度、自らの決定が正しいかどうかを見極めるため試合場脇のカメラを見つめた。結果はまちまちだった。

この流れが最高潮に達したのは、試合開始から92分。2000キロ離れた会場で行われた息をのむ2試合で、2人の審判が同時に決定を下した。

最終的に、ポルトガルはイランと1-1で、スペインはモロッコと2-2で引き分けた。この結果、スペインがグループBの1位、ポルトガルは2位となり、それぞれ決勝トーナメント進出を果たした。

何が起きたのか

この日VARが使われた4度のうち3回は、ポルトガルがグループステージ突破をかけてイランと戦ったサランスクでの試合でだった――。

  • ポルトガルがペナルティキック(PK)獲得―― ポルトガルが1-0でリードして迎えた後半6分、クリスティアーノ・ロナウドがペナルティエリア内でサイード・エザトラヒに倒される。すぐに笛は吹かれずプレイは続けられたが、主審のエンリケ・カセレス氏は試合が次に中断された時にVARからの無線による申告を受けて映像を確認。ノーファウルの決定を覆し、ポルトガルにPKを与えた。ロナウドが蹴ったPKはゴールキーパーに止められた
  • ロナウドに警告―― 後半の終盤、ロナウドがボールを追い、モルテザ・プーラリガンジと競り合いになる。競り合うなかでロナウドは右腕を振り、それがプーラリガンジの口に当たった。ロナウドによるこの軽率な行為を、主審はVARで検証。ロナウドにはイエローカードが提示された
  • ポルトガルの主張を否定―― 後半アディショナルタイム、試合を諦めないイランは、ポルトガルのペナルティエリア内にボールを放り込む。サルダル・アズムンが飛び上がってヘディングしたボールは、セドリックの腕に当たった。イランはPKを主張し、リプレイ動画を確認したカセレス主審は、イランの主張を認めた

一方、カリーニングラードでは――。

  • スペインに反則なしの判定―― イランがPKを獲得したのと同じ頃、モロッコに2-1とリードを許していたスペインは、イアゴ・アスパスが触れたボールがゴールに入って同点に。しかし、オフサイドフラッグがすぐに上げられた。主審のラフシャン・イルマトフ氏はVARにより再生されたこの場面の動画を確認し、アスパスはオフサイドではなかったと判定。このゴールでスペインは試合を引き分けに持ち込み、グループ首位となった

主審がVARによる再検討を経て下した上の4つの決定以外にも、疑惑の場面はあった。

スペイン代表ディフェンダーのジェラール・ピケは、両足でのタックルにも関わらず、幸運にも反則にならなかった。もしリプレイ動画を検証されていたら、レッドカードを受けていた可能性もあるプレイだった。

それだけではない。アズムンがペナルティエリア内で倒されたプレイが認められていれば、イランはもっと早くPKを獲得できたかもしれなかった。

「ルールではメッシもロナウドも関係ない」――監督らの反応

VARによってポルトガルに与えられた反則は疑問の残るものだったが、サントス監督はそれでもこのシステムが「自分の仕事をした」と考えている。

「3つの決定に懸念は抱かなかった」とサントス監督は語った。「試合では普通に起こることだと思う。審判はしなければならないことをした。我々はそれを受け入れなければならない」。

しかしイランのカルロス・ケイロス監督は、チームが試合後半にPKを得たにもかかわらず、「VARはうまくいっていない」と述べた。

ケイロス監督の決定に対する批判は、ロナウドを否定するものではないという。ケイロス氏は「試合をVARにゆだねるのを止めなければ。あれはひじ打ちだった。ルールでは、ひじ打ちはレッドカードだ。ルールでは、(バルセロナに所属するアルゼンチン代表フォワード、リオネル・)メッシもロナウドも関係ない」と述べた。

「決定は全員にとって明らかでなければならない。全員が、VARはうまくいっていないと同意している。たくさんの苦情が申し立てられている」

「我々は国際サッカー連盟(FIFA)に説明を求めたが、FIFAは拒んだ。我々は誰がゲームを裁いているのか、誰が試合で決定を下すのかを知りたいだけだ。我々には知る権利がある」

「ばかげていて無秩序」――識者の意見

イランとポルトガルの1-1の引き分けについて、元イングランド代表フォワードのアラン・シアラー氏:「ばかげている、無秩序だ。審判は非常に幸運だった。もしイランが試合の最後に得点していたら、ひどい混乱状態になっていただろう。今日、審判は絶望的だった」。

「審判は一体どうやって、あれはPKだと考えられたのだろう?」

「あれはばかばかしい。ディフェンダーに何が出来ただろう? 審判は半ヤード(約45センチ)向こうにいて、目を閉じていた。故意のハンドだなどありえない」

「世界最大の大会で戦っていて、VARは試験中のようだ。それは正しい状況ではない」

かつて英プレミアリーグ・チェルシーのフォワードだったディディエ・ドログバ:「私はVARの大ファンだ。多くの状況を解決するからだ。だが同時に、多くの議論も呼んでいる。いいバランスを見つける必要があり、それはまだ探している最中だ」。

「VARを確認し、決定を下すには時間がかかる。我々は全員、あれはPKではないと思った。主審がPKを宣告する前に、何度も確認しなければならなかったからだ」

「議論があるのは、決定を下した審判に関してだ。だから、審判の下すどんな決定にも批判の目を向ける」

元マンチェスター・シティのディフェンダー、パブロ・サバレタ:「私はVARが好きだし、正しく使えば素晴らしいものだ。気に入らないのは選手の行動だ。選手たちは演技をしすぎる。ほんのわずかの接触で、選手たちは床に転がり、審判に抗議する」

(英語記事 World Cup 2018: Cristiano Ronaldo, Portugal & Spain get to grips with VAR

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