「テラスハウス」――かわいく静かな、日本のリアリティTV番組

イベット・タン BBCニュース

テラスハウスの登場人物は、あなたが想像するリアリティTV出演者の普通と全く違う Image copyright Netflix/Fuji TV/East Entertainment
Image caption テラスハウスの登場人物は、あなたが想像するリアリティTV出演者の普通と全く違う

たくさんの美しい独身者たち。1軒の大きな邸宅。広がる素晴らしい景色。そして、愛を見つけるための探検。

英国をとりこにした「ラブ・アイランド」ではない。「テラスハウス」、日本で話題のリアリティTV番組だ。

テラスハウスでは見知らぬ6人、違う人生の道のりを歩んできた3人の男性と3人の女性が、1つ屋根の下に住み、お互いを知り、デートをする。

両番組のコンセプトは似ているように聞こえるが、一つ大きな違いがある。テラスハウスでは、劇的な出来事がほとんど全く起こらないのだ。

出演者はお互いに行儀正しく、けんかをしたら謝り、かたつむりのような速さで恋に落ちる。

では、この一見退屈そうな番組の何が、人々に視聴を続けさせるのだろうか?

「結びつけ」なし

日本のテレビ局フジテレビとインターネット動画サービスのネットフリックスが制作するテラスハウスは現在、第4シーズン。

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Image caption スペインのマヨルカ島ではない。テラスハウスの最新シーズンは、観光地の軽井沢が舞台だ

番組の形式はリアリティTV番組を見てきた人間には分かりやすいが、他の番組とはいくつもの大きな違いがある。

たとえば、10代から30代までと年齢層の幅広い出演者は、好きなように日常生活を送ることを認められている。

仕事や大学への登校、もしくは単にスーパーマーケットに買い物に行くなどで、出演者はよく家を離れる場面がある。番組に出たくなくなった場合でも、家を出られる。

番組にはスタジオ出演者もいて、テラスハウスの住人が交わす会話を分析したり、身振り手振りを読み解いたりと、リアルタイムで住人の生活にコメントを加える。

そして、本質的には恋愛番組であるにもかかわらず、ラブ・アイランド形式の大掛かりな「結びつけ」は番組内で全く見られない。

出演者たちはお互いにデートへ出かけようと誘うが、会話はそれぞれの「紙に書かれたタイプ」を探し当てることより、個人的な思いや期待をめぐって交わされる。

「落ち着いた口調で話す人々」

テラスハウスでは、何事もこれ以上ないぐらい平凡だ。

パジャマ姿の若い女性がかわす会話、夕食に魚を調理する男性、たくさんの「今日の調子はどう?」を、あなたは見る。

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Image caption 出演者は男女別れてグループを作り、別々の寝室で暮らす

劇的な出来事がないことは、番組が驚くほどくつろいで観られるという意味でもある。ほとんど友人の日々の暮らしを見ているようなものだ。

ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で現代日本文化の上級講師を務めるグリセルディシュ・キルシュ博士は、「思うに、番組がこれほどに魅力的に感じられる理由の一つは、番組の登場人物をより身近に感じられるからかもしれない」と述べた。

「視聴者は、もし自分が登場人物だったら、と想像できる」

番組内の設定やレイアウトも、見るのに心地よい。しゃれた、ミニマリスト・スタイルの家具にいたるまで。

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Image caption 出演者グループが交わす日常会話のほとんどは、夕食時に生まれる

「目立たず、見ていて落ち着く。心地よい色使いで、人々は親切であり、とても落ち着いた口調で話す」

これは、蛍光ピンクやオレンジ、ショッキングリーンなどが視聴者の興味を奪おうと広がるラブ・アイランドのような番組とは対照的だ。ラブ・アイランドのような番組では、出演者までもが普段から派手な色を身にまとい、良く叫んでいる。

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Image caption 「ラブ・アイランド」の出演者はしばしば、他人からの興味を引き付けるような服を着せられる

「テレビでは通常、興味を引くように、目立つ必要がある」とキルシュ博士は語る。「テラスハウスのような番組は、それとは全く異なる。このような番組は上手くいかない危険性もあるが、テラスハウスはうまくいっている」。


テラスハウスの主要登場人物

新井雄大(テラスハウスOPENING NEW DOORS): まだ19歳の新井はここ最近、番組最大の悪役の1人として評価されている。その無力感、野心のなさ、未熟さは、出演者や視聴者が新井を好きになれない理由として挙げる事柄の一部でしかない。

新井は番組で何度も、自分の面倒を見てくれる女性がほしいと主張し、視聴者が番組で一番「うっとおしい」と思う人物になった。新井は結局、自立する必要があると言ってテラスハウスを去った。

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Image caption ファンはつば冴を、地に足が着いていて話しやすい人物だと語る

佐藤つば冴と岡本至恩:アイスホッケー選手のつば冴と男性モデルの至恩は、ゆっくりと、しかし確実に恋人同士になった、視聴者に大人気の2人だ。

キスをする仲になるのにすら15話もかかったが、それでもファンは2人の関係を「健康的で現実的」と称える。

半田悠人「Mr.パーフェクト」のあだ名を持つ27歳は、テラスハウスを歩き回っては分別ある言葉を残し、他の出演者を助けたことで知られた。

他者を敬うという半田の仕事哲学と建築家としての才能は、世界最大の掲示板サイト「Reddit」上に半田だけに捧げられたファンスレッド(ファンが集まる掲示板)を生み出すに至った


「現実の生活みたいに感じる番組」

言語の壁にも関わらず、テラスハウスは世界からも支持を集めている。

「番組は、日本への窓口のようなものだ」とキルシュ博士は語る。「他のリアリティ番組と違うので、どこでも通用する。『テイク・ビッグ・ブラザー』の英国版とドイツ版は、言語は異なるが形式は同じ。しかしテラスハウスは違う」。

「欧米の、特にリアリティTV番組では、『大胆な』行動が多く見られる。しかし日本の視聴者は、繊細な動きにより注目する」

「また、番組の繊細な本質こそが視聴を続ける理由だと多くのファンが語っている」

カナダのバンクーバーに住むテラスハウスファン、ジョナサン・ニューウェルさんはBBCに対し、「特別な重みを持つ瞬間、行動、言葉がほとんどなく、やかましく劇的な出来事が全くない」と魅力を語る。

「番組は、人の持つ動機や感情を、叫ぶ以外の方法でどう理解するかの駆け引きになっている」

他のソーシャルメディア利用者も同意する。

米国在住のあるReddit利用者はBBCに、「番組は『退屈な』日常生活の側面に緊張や恋愛、友情の瞬間でスパイスを加えたもので、それが番組を身近なものにしている」と話した。

「番組はより現実的なものに感じられる。出演者も普通の生活を生きているという考えは、とても好きだ」とドイツに住む別のReddit利用者は付け加えた。

「筋書きがあるリアリティ番組が何百とあるこの時代、テラスハウスは現実の生活のように感じられる。視聴者は出演者の何人かを知り、彼らの生活を気にすることができる。まるで友人かのように」

(英語記事 Terrace House: Japan's nice, calm Love Island alternative

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