【寄稿】民泊サイトが近隣地域に及ぼす本当の影響

ダニエル・グッテンタグ 米レッジ・オブ・チャールストン助教授

Woman takes photo of New York City skyline Image copyright Getty Images

数百万人もの利用者が旅行で民泊サイト「Airbnb」(エアービーアンドビー)を使っている。しかし、その人気から、利用者と地元住民が相いれない状態になることもしばしばある。では、短期滞在型賃貸物件は、実際どのような影響を近隣地域に与えているのだろうか?

Airbnbがサービスを開始してから10年。このインターネット上の民泊賃貸プラットフォームは、世界中に数百万室の貸し部屋を保有している。

しかし同サービスは、東京からベルリン、サンフランシスコといった都市の当局との議論にも巻き込まれてきた。

類似した問題がたびたび起きている論点は以下の通り――。

  • その物件が1年に貸し出してよい宿泊日数
  • 家全体の賃貸
  • 認可
  • 課税
  • どんな規則を施行すべきか

世界の短期滞在型賃貸施設に関する規制

  • アムステルダム(オランダ):住宅全体の貸与は年60日まで。半分の30日に変更される予定
  • バルセロナ(スペイン):短期貸与には認可が必要だが、新規許可は実施されていない
  • ベルリン(ドイツ): 家主が主な住居の半分かそれ以上を短期貸与するには許可が必要
  • ロンドン(英国):住宅全体の短期貸与は年間90日まで
  • パルマ(イタリア):市長がアパートの短期貸与を禁止すると発表
  • ニューヨーク市(米国):家主が同居していない場合、アパートの連続30日かそれより短い期間の短期貸与は原則として条例違反。
  • パリ(フランス):短期貸与は年間120日まで
  • サンフランシスコ(米国):家主は事業者登録し、短期賃貸の認可を得なければならない。物件全体の貸与は年間90日まで
  • シンガポール:公共住宅の貸与は最短でも連続6カ月以上でなければならない
  • 東京(日本):住宅宿泊事業法案(民泊法)が2017年に成立、2018年6月に施行された。貸与を年間180日に制限

出典:Airbnb、アムステルダム市議会、バレアレス諸島自治政府、ロイター通信、ニューヨーク・タイムズ

Airbnbが地域に多くの観光客を呼び込むようになると、時には既存住民に嫌われる存在にもなっていった。

物件所有者が長期賃貸契約からより利益率を高くできる短期貸与に移行するのを恐れる人もいる。

例えば、ある研究は米ニューヨーク市マンハッタンのロウワー・イースト・サイド地区で長期賃貸の賃料とAirbnbを通じた短期貸し出し料の中央値を比較し、Airbnbのほうが平均で2倍から3倍高いとの結果を示した。

ニューヨーク市は最近、インターネット上の賃貸サービスに家主の情報を提供するよう求める条例案を可決した。商業目的の経営者を取り締まるのが狙いだ。

ニューヨーク市議会のカーリナ・リベラ議員は条例案の狙いが「安価な住宅でないと生活できない数百万人のニューヨーク市民のため、手ごろな住宅戸数を守る」ことにあると述べた。

また、Airbnbは前述の都市全てでは全住宅戸数のうちわずかな割合しか仲介をしていないが、そのある地区に特定すると、かなり大きな割合を占めていることもある。たとえばバルセロナ旧市街がそうだ。

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Image caption バルセロナのゴシック地区は、Airbnbの貸し部屋でも人気の場所だ

2015年の研究では、バルセロナ旧市街にある住宅全体のうちAirbnbに掲載されているのは9.6%と推計された。旧市街のうちゴシック地区に限定すると、この数値は16.8%にはね上がる。

研究では地元住民42人に聞き取り調査を実施した。調査対象者のうち40人が、変化による下記のような問題を強調した――。

  • 住人の退去
  • 迷惑行為
  • 日常生活の混乱

バルセロナは観光業向け住宅許可の新規発行を中止した。この許可なしでは、物件の短期貸与は違法となる。バルセロナ市議会は違法宿泊施設が「憶測や不正経済を生み、その活動は地元に何の好影響も残さず、近所迷惑や苦情を引き起こしている」と述べた。

バルセロナでの研究や、ボストンロサンゼルス、そして米国全体を対象にした他の様々な研究は、Airbnb掲載物件の特定地域への集中と賃料の上昇に関連があるとも示唆している。

ロサンゼルスを対象にした研究によると、2014年にはAirbnb掲載物件の半分が7地域に集中しており、その地域では市の全体平均の3倍の速さで賃料が上昇していたと推計した。より広く米国全土を対象にした研究では、Airbnb掲載物件数が10%増加したことで、家賃が0.42%、住宅価格が0.76%上昇したと示唆している。

Image caption 2008年のサービス開始以来Airbnbが達成してきた成長を表した統計。現在は191カ国で約500万室を紹介している

もちろん、住宅市場には多くの要因が影響する。ロサンゼルスを対象にした研究の執筆者は、Airbnbの成長はより広い住宅の購入しやすさの問題の結果でもあり、原因でもありうると示唆した。

ただ、調査報告はAirbnbが「家賃の上昇、住宅供給の減少、分断の悪化を引き起こしている」違法賃貸物件からも利益を得ていると示している。

住宅の購入しやすさに関する懸念を別にしても、短期賃貸物件の急速な拡大が地域環境を様変わりさせるかもしれないと恐れる人はいる。

英エディンバラの歴史遺産監視機関は、短期賃貸物件により「特に旧市街の性質が変わっている」と心配している。ただ同機関は、このような物件が観光業を後押しし、地元経済を支えているとも認めた。

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Image caption ベニスには毎年、数千万人の観光客が訪れる

別の研究は、米ハワイのオアフ島で生活する住民の小グループに、短期賃貸物件への認識について聞き取り調査を行った。調査では好影響と悪影響の両方が認識されたが、悪影響のほうが多かった。

住民は、地域社会の親近感が損なわれるのを最も恐れていた。この問題は、資産価値や住宅の手に入れやすさに対する恐怖より2倍以上高い頻度で言及された。

ある住民は、「問題は、近隣地域一帯の感覚が変わっていくことだ。回転ドアのようなよそ者の入れ替わりで、感覚が変わってきている」と話した。

短期賃貸物件が「観光過多」の問題を加えると恐れる人もいる。例えばバルセロナやベニスは、両市とも年間3000万人以上の観光客を受け入ており、それがもたらす結果について活発な議論が起こっている。

また、騒がしいパーティーを開いたり、過密駐車を生んだりといった短期滞在者の振る舞いに苦情が出ることもある。

しかし、Airbnbや他の短期滞在者向け物件ウェブサイトは、滞在者と家主の両方に、良い経験を提供することもできる。

滞在者の多くは、ホテルと比較してお金を節約したい、あるいは観光地化の度合いが小さい地域で、より「正統な」休暇経験を手にしたいと望んでいる。筆者の研究では、Airbnbを利用した滞在客の90%が、滞在に「満足」もしくは「非常に満足」したとの結果だった。

家主は世界中から訪れる人に会う機会を得るし、臨時収入も稼げる。

より広い地域社会については、Airbnbはより多くの観光客に宿泊施設を提供する支援ができ、またもともとは住宅地だった地域の経済に新たな顧客を送り込める。

Image copyright Jeff J Mitchell
Image caption Airbnbは2018年の芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」の公式パートナーになっており、地元経済を何百万ポンドという単位で押し上げていると主張している

この点についてAirbnbは、訪問客が必要な地域を宣伝し、観光客に人気の地域の混雑を軽減して、観光業の多様化を支援していると主張する。また、同社のプラットフォームを通じて客を迎えて生まれたお金が、家族、地域社会、政府に対して経済的利益と社会的利益をもたらしているとしている。

Airbnbの広報担当者は、「旅行業と観光業は、他の経済領域のほとんどよりも速く成長している。住民や地域社会が、おそらく彼らの街に訪れる史上最高の訪問者数から利益を得ている点は極めて重要だ」と話した。

同社はさらに、「信頼と確実性を持ったプラットフォームの利用を家主と訪問者に保証するための」明確なルール策定に世界中の政府と協働していると付け加えた。

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ドローンや無人運転者と同様、短期賃貸会社の急速な拡大は、政府に既存の規則を再考させる比較的突発的な現象だ。

Airbnbは2028年までに、毎年10億人の顧客に宿泊施設を提供しようと狙っている。その野心の規模は、これからもしばらく規制合戦が続く可能性が高いことを意味する。多くの地域がその効果を具体化し、制御しようとしている。

日本やバルセロナ、パルマといった場所で起きているように、厳しい取り締まりがさらにく実行されるかもしれない。

司法当局がより融和的なアプローチを選ぶとしても、ある種の広告は制限され、賃貸にあたってはデータの共有が求められる可能性がある。

このことはAirbnbの成長目標に歯止めをかけるかもしれないが、世界中の地域に永久に欠かせないものとしてのAirbnbの存在を形式化、合法化する助けにもなる可能性がある。

この記事について

この分析記事は、BBCが外部組織の専門家に委託して執筆された

ダニエル・グッテンタグ助教授は米サウスカロライナ州のコレッジ・オブ・チャールストンで接客業と観光業経営について教えている。同大学の観光業分析局で代表も務める。

編集:エレノア・ロウリー

(英語記事 What Airbnb really does to a neighbourhood

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