【解説】 英保守党の中で戦争勃発 メイ首相の命運は?

ローラ・クンスバーグ政治編集長

Theresa May Image copyright Reuters

テリーザ・メイ氏は欧州連合(EU)離脱協定について各国首脳と協議するため、ブリュッセルに向かう。まだイギリスの首相として、まだ正式な指導者として。

メイ首相は12日夜、保守党の党首信任投票で同党下院議員317人のうち過半数の200人から信任投票を得て、党首および首相に留任することになった。

ある英閣僚がこの日、メイ氏に対する一連の不信任の動きは「無益だった」と私に言った。何も変わらなかったと言いたかったのだろう。しかし実を言えば、変化はあったのだ。

メイ首相が過半数の信任を得たため、怒るブレグジット(英国のEU離脱)推進派たちは向こう1年は、彼女を同じ手法では追い出せない。メイ氏は一時的に、自ら率いる保守党そのものから辞任を要求される危険は、脱した。

首相の支持者たちは、昨晩の信任投票の結果は「良い結果」だったと主張している。その人たちにとっては、党内からは当面挑戦されないというそれだけでも、ホッと一息つける成果だ。しかしながら、首相は今のところ、英下院を通過させられる離脱協定を持ち合わせていない。その非情な現実からは、まったく逃れられていない。

12日にメイ首相を追い出そうとしていた人たちは、まったく諦めないはずだ。EUと英政府が妥協点に至り、修正された離脱協定が下院採決にかけられたとき、反首相勢力がどう抵抗するかは見物だ。

現時点では、不信任票を投じた与党議員たちがメイ首相を支持することはありえない。そのうちの何人かはもしかしたら、下院で野党が首相不信任決議案を出した際には、造反という最終手段に出るつもりかもしれない。

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勃発したのは平和ではなく戦争だった。アリスター・バート中東担当閣外相はツイッターに、「保守党離脱派は絶対に立ち止まらない。欧州調査グループ(ERG、離脱派の英下院保守党議員団)にとっては自分たちへの反対票も、書簡の遅れも関係ない。大災害の後に残るのはアリと、欧州と党首に文句を垂れる保守党議員だけだ」と投稿した。

メイ首相が生き残るためには、党首として次の総選挙に臨む可能性を捨てなくてはならなかった。

労働党のトニー・ブレア元首相が2006年、いわゆる「カレーハウスの陰謀」で首相の座を追われそうになった時も、保守党のデイヴィッド・キャメロン前首相がBBCの取材中、自宅のキッチンで3期目を目指さないと発表した時も、同じだった。首相がそういう発言をする時、それは首相としての力が衰え始める時だ。メイ氏の権威がすでに引き潮の状態にある中、彼女に忠実な同僚が「少し時間稼ぎになる」といくら言っても、それは今まで以上に難しくなった。

メイ首相は13日、これまで以上に意味のある譲歩を求めてEUと対面する。だが、首相の自国での運命を様変わりさせるほど、ブレグジットについてこれまでとまったく異なる譲歩をする様子は、一切ない。首相はいずれどこかの時点で、ブレグジットに対する方針を変えなくてはならないだろうというのが、現時点での大方の見通しだ。

しかしどうやって? いつ?

閣僚たちは12日にすでに、内々ながら2つの別々の方向性を指差していた。合意なしブレグジットの可能性が高まると話す人たちがいる一方で、労働党が興味を示すような軟着陸への歩み寄りができるのではないかと期待する人たちもいた。

もちろん、私たちはこの2年間メイ首相を見てきて、彼女を決して見くびってはいけないと学んだ。

もう無理だ、進退窮まったと何度も言われてきたが、首相はそれを乗り越えてきた。周囲の憶測や期待は間違い続きだ。しかし、メイ氏が今朝の時点で首相の座に留まっているからと言って、それは政府が安泰ということだと誤解してはならない。

なぜなら、メイ首相が自ら率いる党を一つにまとめたいと思っている正にその時、反対勢力はメイ氏を、そして自分たち保守党をも、引き裂こうとしているかもしれないからだ。

メイ政権になってから何度も繰り返されてきたことだが、首相官邸がひとつの山場を越えてもそれは偽物に過ぎず、もっと厳しい山場が後ろに控えているのだ。

(英語記事 Tories at war over Brexit

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