なぜポンド上昇 英政府のブレグジット協定、大差否決で
サイモン・ジャックBBCビジネス担当編集長

メイ政権のブレグジット協定が下院で否決されると、ポンドは対ドルで急上昇した
市場はテリーザ・メイ英首相の敗北をすでに予想していた。しかし、これほどの大差で敗れるとは、ほとんどの市場関係者の意表を突いた。
それ以上に驚きだったのは、ポンドが上昇したことだ。イギリス政治の動きに真っ先に反応する金融指標がポンドだ。政府が大敗すればポンドは急落するはずだと、大勢が確信していたのだが。
これをどう理解すれば良いのか。金融市場が最も懸念するのは合意なしブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)による混乱だが、最近の下院での激しい対立を見るからに、合意なし離脱はなさそうだと、市場はそう確信したのではないか。後知恵でそう説明する人もいる。
あるいは、メイ首相のブレグジット協定がこうして大敗したことで、「ブレグジットなし」(少なくとも3月29日には)の可能性が強まったという見方のためだという意見もある。
金融市場は秒単位で反応するので、今回はこう動いた。実体経済はまだ迷っている。
イギリスの欧州連合(EU)離脱期限まで、残り72日だ。今日またひとつ大きな一里塚がやって来ては過ぎ去ったが、将来は相変わらず不透明で、合意なし離脱への備えはますます急務となった。
この事態にへきえきとする経済団体のひとつが、こうコメントした。政治家たちはイギリス経済の未来をめぐり、「きわめて高リスクな政治ポーカー」に興じているのだ。