この食事法なら……人間も惑星も健康に?

ジェイムズ・ギャラガーBBCニュース医療科学担当編集委員

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人の命を救い、100億人の胃袋を満たしながら、地球に壊滅的被害を与えないという食事法が作られた。

地球の人口はこれから数十億人単位で増えていく。その食糧をどう確保するかは、科学界にとって長年の課題だ。英医学誌ランセットを中心としたEAT・ランセット委員会に世界各国から参加した研究者37人は、専門分野が農業や気候変動、栄養学などと様々で、2年間の研究成果をこのほど同誌に発表した。

「惑星を健康にする」と提案する食事法は、肉類や乳製品を完全に排除するものではない。しかし、実現するには毎日の食生活を大幅に変更する必要があり、今までほとんど口にしていないものも日常的に食べる必要がある。

EAT・ランセット委員会は研究成果を世界保健機関(WHO)や各国政府に報告し、食生活の変更促進を目指す。

食事のとり方をどう変える?

もしも今は肉を毎日食べているなら、ここが最初の大きな違いだ。赤身肉なら、ハンバーガーを週1回、大きなステーキはひと月に一度が限度になる。

鶏肉や魚は毎週ある程度食べても良いが、その他のたんぱく質は植物からとることになる。

研究チームは、たんぱく源としてたくさんのナッツや豆類を毎日とるよう推奨している。

さらに、皿の上の半分は野菜や果物にすべきだと、あらゆる野菜・果物の消費拡大を勧めているが、じゃがいもなどでんぷん質の多い野菜の摂取は減らすべきだという。

1日に何を食べるのか

この食事法で1日に食べても良いのは、次の通り――。

  1. ナッツ - 50g
  2. 豆類 - 75g
  3. 魚 - 28g
  4. 卵 - 13g (つまり1週間に1つと少し)
  5. 肉 - 赤身14gと鶏肉29g
  6. 炭水化物 - 全粒粉のパンや玄米は232g、でんぷん質の多い野菜は50g
  7. 乳製品 - 250g (牛乳コップ1杯に相当)
  8. 野菜 - 300g
  9. 果物 - 200g

このほか、糖31グラムと、オリーブオイルなど油50グラムもとって構わない。

味は最悪に?

研究に参加した米ハーヴァード大学のウォルター・ウィレット教授は、そんなことはないと言う。そして、農家出身で毎日3食分の赤身肉を食べて育った自分は、現在はこの惑星健康食事法に近い形で食事をしていると話す。

「実に色々な料理が作れる」とウィレット教授は言う。

「食べても良い食材をいろいろ組み合わせて、何千通りもの料理ができる。私たちが提案するのは、あれもこれも食べられないつらい食事ではなく、色々な可能性にあふれて楽しい健康的な食事法だ」

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Image caption 惑星健康食事法に沿って用意した色々な料理

これは現実か、それともただの幻想か

この食事法に従うと、ほとんど世界中で食事改革が必要になる。

欧州と北米は赤身肉の摂取量を大幅に減らさなくてはならない。東アジアは食べる魚の量を、アフリカはでんぷん質の野菜を減らす必要が出てくる。

ストックホルム・レジリエンス・センターのリネ・ゴルトン准教授は、「人類がこれほどの規模で、これほど急激に、食糧システムを変えようとしたことはない」と話す。

「この食事法が幻想だろうが現実だろうが、幻想は悪いものとは限らない(中略)。これからは良い世界の夢を見るべきだ」

食事方法の変化を促すには、赤身肉への課税などが選択肢としてあり得ると、研究チームは言う。

なぜ100億人の食事法が必要なのか

世界人口は2011年に70億人に達し、現在は約77億人だ。

2050年ごろには人口100億人となり、その後も増え続けると見られている。

この食事法は命を助けるのか

研究チームはこの食事法が実施されれば、年間1100万人の死亡が防げるという。

特に先進国の主な死因として上位を占める心筋梗塞や脳梗塞、一部のがんは、この食事法でかなり減らせると期待される。

この食事法は地球も救うのか

研究チームは、

  • 気候変動につながる温室効果ガスの排出を抑え
  • 種の絶滅を防ぎ
  • 農地を増やさず
  • 水を保全する

――という地球環境保護の目標を実現しながら、増える人口の食糧をいかに確保するかを検討した。

しかし、私たちが食べる内容を変えるだけでは不十分だ。

帳尻が合うようにするには、廃棄食糧を半分に減らし、今ある農地の食糧生産量を増させなくてはならない。

なぜ肉を禁止しないのか

「温室効果ガスを減らすだけが目標なら、全人類がヴィーガンになるべきだと言うところだ」とウィレット教授。

しかし、動物性のものを一切とらないヴィーガンの食事法が、もっとも健康的なものかはっきりしないと教授は言う。

<解説>食品生産の環境負荷――マット・マグラス環境担当編集委員

農業や植林のための土地利用は、大気に排出される温室効果ガスの約25%の排出源となっている。これは発電や暖房による排出量とほぼ同じで、世界中の電車や飛行機や自動車による総排出量よりはるかに多い。

食品生産の環境負荷をもう少し細かく点検すると、畜産や酪農の影響が大きいことに気づく。人為的な温室効果ガス排出量の14.5~18%が、家畜飼育によるものだ。

ほかにも、農業は他の業種に比べてメタンガスや亜酸化窒素の排出量が特に多い。

農業ではさらに、農場から出るアンモニアが微小粒子状物質(PM2.5)となり大気汚染の原因となる。WHOはPM2.5が世界全体の健康を脅かすものだと警告している。

同様に、地球上の真水の7割を消費する農業と食糧生産は、水の保全にとっても大きな脅威となっている。

(英語記事 The diet to save lives, the planet and feed us all?

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