「ブレグジットのせいで眠れない」 公務員にはカウンセリングも

ヘイミッシュ・マケイ、BBCニュース

Paul Groom Image copyright Paul Groom
Image caption ポール・グルームさんは、自分が2017年に心筋梗塞を起こしたのは、ブレグジット関連のストレスも一因だったと話す

英与党・保守党のヒュー・メリマン下院議員は4月に入り、イギリスの欧州連合(EU)離脱にまつわるストレスのせいで、ウェストが約10センチ細くなったと公表した。さらにその後、国内各地の公務員に対し、合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)に備えるため、カウンセリングを受ける機会が提供されていることも明らかになった。

しかし、苦しんでいるのは政治プロセスに直接関わる人だけではない。BBCに連絡してきた多くの人が、最近の政治的な動き(あるいは動きがない状態)が、自分たちの精神状態に悪影響を与えていると話す。

ポール・グルームさん(61)は2年前に心筋梗塞の発作を経験した。自分も、担当の心臓医も、ブレグジット関連の不安が影響していると考えている。

「何はともあれ毎日ブレグジットのことを考えている」とグルームさんは言う。仕事を退職して、妻と2年前にフランスに移住した。

「それまでは(英南西部)デヴォンに済んでいた。イギリスの家を売って、資産を老後の資金計画に当てるつもりだった。なのにブレグジットがやってきた」

「あれ以来、生活のすべてが保留状態だ。うちも、ほかの大勢と同じように、自分たちが今後どうなるのかまったく分からない」

グルームさんは2016年の国民投票で「残留」に入れた。しかし、今ではイギリスに戻らなくてはならないかもしれないと、心配している。

「僕も妻も、不安でよく眠れない。今では真夜中に目が覚めると、まず携帯をチェックして、議会で今度は何があったんだと確認するのが習慣になってしまった」

<関連記事>

不安と寝不足のせいで、心も体も調子が悪いとグルームさんは言う。

「前は心臓に特に問題はなかった。心臓病の一番の原因は生活習慣だが、みてくれる心臓医が言うように、ストレスも決して心臓に良くない」

「本来ならやらないようなことを、ストレスのせいでしてしまう。食べなかったはずのものを食べたり、酒を余計に飲んだり。心配が増えて睡眠が減って、全部が合わさって僕のように健康問題につながる」

「ばかみたいだけど

イギリスの今の政治状況の影響で不安に苦しめられているのは、「残留」に入れた人だけではない。

国民投票で「離脱」に入れたレイチェル・ミューズさん(50)も、毎日ブレグジットのことを考えていると話す。

英南部ソールズベリーでシェフとして働くミューズさんは、「本当にいつも気になっている。ばかみたいだけど、すごいストレス」だと言う。

Image copyright Barbara Leatham
Image caption レイチェル・ミューズさんはブレグジットのストレスを避けるため、ニュースを見ないようにしている

「自分にはあまり趣味がなくて、仕事が生活の中心だけれど、主な趣味と言えばニュースを追いかけることだった。(英政界)ウェストミンスターと(EU本部の)ブリュッセルでどうなっているのか知るのが、趣味だった」

「いつも必ず、テレビのニュースをつけるようにしていた。午後のニュースと夕方6時のニュースは必ず。何がどうなっているのか知りたいので」

それにもかかわらず、ミューズさんは最近はニュースをつけるのをやめたという。

「なるべく聞きたくないので、つけないで済むようぐずぐずしてしまう」というミューズさんは、夜10時のニュースを見るのもやめた。寝る前にブレグジットのことを考えたくないからだという。

しかし、こうして世の中の動きが心身に影響するというのは良くあることなのだろうか。それとも今のこの時代が、異常なのだろうか。

「ひっきりなしに流れてくる」

「本当に大事な質問だと思う」と、英王立精神科医学会のルイーズ・テオドシオウ医師は言う。

「ここ10年ほどの間に、私たちは前より格段に世界情勢を意識するようになった。10年前に戻れば、私の同僚たちは朝起きてラジオやテレビをつけたとしても、前夜の議論の最新情報をただちに知ることができるという状態ではなかった」

「ニュースがあっという間に手元に届くように設定できる。けれどもそこには問題があって、情報はもちろん短く凝縮されているので、記事のタイトルを見ても私たちは内容を十分に理解するようにはならない」

「最新情報を知るようにするのは、正しい。情報があれば不安を減らすことができるので。けれども、情報がひっきりなしに流れてくる状態は、かなり厳しいものだ」

ブレグジットの不安が健康に影響

調査会社ブリテン・シンクスが2000人以上を対象にした調査では、次のような結果が出た――。

  • 回答者の64%が、ブレグジット関連の不安がイギリスの心の健康に悪影響を与えていると答えた
  • 女性の70%が、ブレグジットが心の健康に与える悪影響を心配している。男性は58%
  • 83%がブレグジットのニュースに「うんざりしてもうたくさんだ」といら立っている
  • 84%が、保守党と労働党の与野党双方のブレグジット対応に「感心しない」と答えた

では、不安感を和らげるには、どうすればいいのか。

「まず第一に、周りにいる人たちに自分の気持ちを伝える」ことが大事だと、テオドシオウ医師は助言する。「みんなして、それは普通のことだと全体の文脈の中に落としこんで、ユーモアを持ち込むのがいい」。

次に大事なのは、「絶え間なく流れてくる情報」から具体的な形で距離を置く時間を設けることだという。たとえば、食事中は電子端末やテレビを見ない、あるいは朝起きたばかりのときは見ないなど。

最後に、軽い運動もストレス軽減につながる。

「たとえば公共交通機関に乗る際に階段を歩いて上り下りするとか、できれば少し歩いてみるとか、それだけでも効果はある」と、テオドシオウ医師は話す。

(英語記事 Brexit anxiety: 'I can't sleep because of it'

この話題についてさらに読む