【解説】 ロシア疑惑のムラー報告書、近く全文公表 その先はどうなる?

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米司法省は18日朝(日本時間同日夜)、2016年米大統領選のロシア介入疑惑を捜査したロバート・ムラー特別検察官による報告書の全容を公表する予定だ。すでに要旨は発表されているが、全文にどのような新事実が含まれるのか注目されている。どのような展開が予想されるか、BBCのジョン・ソープル北米編集長が解説する(敬称略)。

ジョン・ソープル北米編集長

ついに。ようやく。この日がやってきた。ムラー報告書だ。発表される。

ワシントンやケーブルニュースに特有の盛り上がりや期待感はすごい。しかし、衝撃度を1から10の数字で表すなら(1はほとんど聞き取れないかすかな音、10はクラカタウ火山の噴火レベル)、報告書公表の衝撃度は低い数字のはずだ。

なぜそう言うのか? というのも、ウィリアム・バー司法長官はすでに4ページの要旨を公表済みだからだ。連続ドラマのシーズン最終回的な、次へ向けてハラハラさせられるクリフハンガーのようなドキドキはおかげでもうない。

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報告書によると、トランプ陣営がロシア当局と共謀した証拠はなかった。大統領が司法を妨害したかについては、報告書はそこまで断定しなかった。

この点は実に興味深い。やれやれ終わったと寝直すだけでは済まなさそうだ。

ドナルド・トランプ大統領の意見はもっとはっきりしている。「完全な無罪確定だ」と言い切っているので。

しかし、司法長官要旨に含まれた一文が、非常にこちらの気をそそる。

ムラー特別検察官はこう書いた。「この報告書は大統領が犯罪を行ったという結論は出していないものの、無罪を認定するわけではない」と。これが何を意味するのか。報告書全文の公表後はこの一文が何を意味するのかが、大きな議論になるだろう。

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ジョナサン・ターリーはジョージ・ワシントン大学の法学教授だ。ネット上の情報にすさまじく詳しい。

「トランプ批判派は、妨害に関する内容をことさらに探して、材料をたくさん見つけるだろう。起訴には相当しないかもしれないが、軽蔑に値する行為、あるいは弾劾相当の行為も見つけるかもしれない」と教授は言う。

「トランプ支持者は、結託関連の部分を見て、『これがすべての発端で何も見つけなかった、この話の流れは全てフェイクだったことが分かった』と言うだろう」

最終的に報告書を手にしたときに、実際どれだけ黒塗りされているのかが、イライラするところだ。

伏せられる箇所は、色で区別されているといいのだが。世間に公表するにはセンシティブすぎる機密情報、大陪審の検討が進行中の内容、起訴されていない第三者に批判的な内容――などで、色分けするとか。

その場合、報告書というよりは塗り絵の本のように見えるかもしれない。

民主党は大騒ぎするのだろうか。前述した私の1から10の衝撃度スケールでいくと、7か8ぐらいになるのではないかと思っている。

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野党・民主党が多数党として支配する連邦下院の様々な委員会は、すでにあらゆる情報を入手しようと召喚状を次々と出している。

「はいはい、ここにはなにもありませんよ、なにもありませんからさっさと進んでください」とどれだけ言われても、民主党は応じないはずだ。ドナルド・トランプに敵対する勢力は、答えが必要な問題はまだたくさんあると主張するだろう。

しかし、アメリカ各地の遊説先では、また別の雰囲気だ。アメリカでは常に、次の選挙が控えているのを忘れてはならない。

今では2020年大統領選に向けて大勢の民主党候補が、国のあちこちを飛び回り、効果的なメッセージをまとめつつある。候補たちが話題にするのは雇用や環境、税金、医療、移民問題などだ。ムラーについては? それほど話題にしていない。

優れた戦略家の民主党幹部、ナンシー・ペロシ下院議長は先日、欧州訪問中にこう話した。

「国民が心配するのは、生活に密着した問題だ。月々の生活費がちゃんと払えるのかどうかという。なので私は、弾劾とか報告書とかそういうことには、あまりかまけてこなかった。それは、証拠や事実が明らかになった時点で、なるようになるべきだと思っている」

この発言は、多少の解読作業が必要だ。

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Image caption 民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長

ペロシ議長は、大統領は潔白と認めているわけではない。そうではなく、ほぼ確実に無駄に終わる面倒な弾劾請求など民主党にとって役に立たないし、ムラーによって満身創痍(まんしんそうい)となった大統領の方がよほど好都合だと、そう言っているのだ。

もうひとつ、タイミングの問題もある。今日は、キリスト教の祝日イースター(復活祭)を目前に控えた、聖金曜日の前日だ。春休みだ。アメリカの子供たちは学校がお休みだ。ビーチに出かけた家族もいる。国立公園にも。イースターを楽しんでいるのだ。

連邦議会も休会中だ。いつもならマイクの至近距離に大勢の議員がいるが、今はいない。

司法省がムラー報告書をきょう公表することにしたのは、偶然でもなんでもない。

(英語記事 The full Mueller report is here at last - so what's next?

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